硬水と軟水
2-4 硬水と軟水
カルシウムイオン(Ca2+)とマグネシウムイオン(Mg2+)を多く含む水のことを硬水といい、それらが少ない水のことを軟水といいます。日本の河川水はほとんどの場合軟水ですが、地下水は硬水であることも少なくありません。
硬水の程度は硬度で表わしますが、その決め方は国によってさまざまです。日本では、100ccの水に含まれるCa2+が酸化カルシウムとして計算され、1mgあるとき硬度1度、Mg2+の場合は酸化マグネシウムとして計算され、1mgあるとき硬度1.4とされています。硬度20度以上の水を硬水、10度以下の水を軟水と呼んでいるわけです。
さて、この硬度を導電率測定によって知ることはできるでしょうか? 残念ながら、答えはNOです。導電率計では、Ca2+やMg2+だけを選択的に測定することはできないためです。一般的には比色法で測定する場合が多く、イオンクロマトグラフィーやイオン電極などで測定することもあります。
2-5 宮水
おいしいお酒はおいしい水がなければできない。
昔から日本酒を作る条件としては、水、米、気候といわれています。
清酒醸造の水としてとくに有名なものに兵庫県灘の宮水があり、灘発展の技術的要因は、高度精白米と宮水の使用によるといわれています。宮水の水質表から導電率を計算しますと600μS/cmとなり、宮水がおいしい水であることがうかがわれるわけですが、この宮水は江戸時代、天保11年(1840)、桜正宗の祖、山邑太郎左衛門が発見したと伝えられています。太郎左衛門は醸造する場所による味の違いに着目し、杜氏を交替したり、麹を変えたり、醸造方法を比較したりと、試行錯誤し、ついに味の違いが水であることを発見しました。現在では、宮水等の分析により、どの成分が醸造に対しどのように影響するかが明らかになり、醸造に適した水を使用するところも多くなりましたが、今日なお灘五郷では宮水を利用し、酒質の醇美さを天下に誇っています。当然ウイスキー、ワイン、ビール等を作る場合も国により、使用する水により、いろいろな味、色があります。有名なものではミュンヘン型の黒ビールは、硬水を使用しており、ピンゼン型の淡色ビールは軟水を使用しています。
醸造用水の無機成分の比較(数字はppm)
| 宮水 (11種平均) |
醸造用水 (56種平均) |
|
|---|---|---|
| カリウム | 20 | 12 |
| リン酸 | 5.2 | 0.4 |
| マグネシウム | 5.6 | 7.0 |
| カルシウム | 37 | 27 |
| 塩素 | 32 | 46 |
| ナトリウム | 32 | 32 |
2-6 氷
家庭の冷蔵庫で作った氷を溶かしたとき、その導電率は元の水道水と同じでしょうか。
水は凍るとき純粋な部分から、また表面から凍ります。このため氷の外側の部分は不純物が少ないため導電率は小さくなります。逆に中央の部分は水道水中のイオンや汚染物質が集まりますから、導電率も大きくなります。ですから、家庭の氷でジュースやウイスキーを飲むときは氷が完全にとける前に飲むようにすれば、元の味を損なうことなく(多少薄くなるが)おいしく飲めるんです。
2-7 川の水
普通の人は川の水の色を見て透明な川ほどきれいな水と考えるでしょう。しかし、ここまで本書を読んでこられた方は、導電率を測ってから判断しようと考えられるんじゃないでしょうか。
そこで川の導電率と汚れについて考えてみましょう。川の水の導電率を測ることで水の中にどのくらいのイオンが入っているのかの目安とすることはできます。しかし、川の水の中に含まれるイオンは元来、その水が接する土壌の中の成分が支配的であり、その違いにより、川ごとの導電率値というのがあります。ですから、単に川の導電率の大小では、汚れを判断できません。
また、川は「三尺下れば水清し」といわれるように川自身が汚れを浄化する能力をもっていて、汚濁物質を希釈したり、沈澱させるほか、吸着や浸透、微生物による浄化があります。これらの作用も川によって違いますので、一般に上流から下流にいくほど導電率は大きくなりますが、浄化されて下流の方が導電率が小さい場合もあるわけです。
しかし、最近ではこの浄化する能力をはるかにこえた生活排水や工場排水が川に流れこんだり、浄化する能力を小さくするような河川工事が行われる場合もあり、全般に川は汚れ、下流ほど導電率が大きくなっている場合が多いようです。
川の水を考えるのにもう一つ考慮することに雨があります。
雨の水は川の水に比べ導電率が小さいため、季節により、川の水が希釈されたり、濃縮されたりするのです。日本では、6〜7月の梅雨の時期が導電率が小さい所が多いようです。以上のことから考えますと川の汚れを導電率で判断するには、その川の特徴を十分理解する必要があります。上流から下流にしたがってどうなっているか、また1回の測定ではなく長期的にみてどう変化するかなどから総合的に判断する必要があります。


