比較電極の電位とは何でしょうか。比較電極としてはよく知られたカロメル電極、銀・塩化銀電極の他に、硫酸水銀電極、酸化水銀電極などがあります。これらの比較電極を用いて測定した起電力(たとえば、白金電極と組み合わせて測定したORP(ORPの詳細についてはORPの話参照))を、それぞれ他の比較電極を用いた場合の値に換算するにはどうすればよいのでしょうか?

そのためには、これらの比較電極の間の相対的な値を一定の基準に基いて確定しておく必要があります。これらを比較電極の「電位」と言い、その基準には標準水素電極(S.H.E.またはN.H.E.と略す)が用いられます。このS.H.E.の電位は、国際純正応用化学連合(IUPAC)などで、25℃においてゼロ(0)mVと定義されています。S.H.E.は1気圧の水素ガスをバブリング飽和した平均活量1の塩酸(約1.2規定HCl)中に白金黒電極を挿入して構成されます。
比較電極として有名なカロメル電極(Hg/Hg2Cl2)および銀・塩化銀電極(Ag/AgCl)の電位は、S.H.E.に対して次の表に示された値が知られています。

温度

Ag/AgCl/KCl 

Hg/Hg2Cl2/KCl 

3.5M-KCl(25℃)

飽和KCl

3.5M-KCl(25℃)

飽和KCl

10

0.215

0.214

0.256

0.254

15

0.212

0.209

0.254

0.251

20

0.208

0.204

0.252

0.248

25

0.205

0.199

0.250

0.244

30

0.201

0.194

0.248

0.241

35

0.197

0.189

0.246

0.238

40

0.193

0.184

0.244

0.234

(各値は、S.H.E.に対する電圧値(V)として測定されたもの)

D.T.Sawyer, A.Sobkowiak, J.L.Roberts,Jr., “Electrochemistry for Chemists 2nd ed.”   p.192 (1995), John Wiley.
 (社)日本分析化学会編“分析化学便覧”p.723 (2001) ,丸善. にて転載

最近は、水銀および水銀化合物の使用が忌避された結果、Hg/Hg2Cl2はほとんど用いられず、主にAg/AgClが用いられています。表に示した値から明らかなように、これらの電極の電位は、温度およびKCl内部液の濃度により変化します。堀場製作所では、0℃で飽和濃度となる3.33mol/L KClを内部液とするAg/AgClをすべての比較電極に用いています。3.33mol/L KCl内部液は、0℃以上のすべての使用温度範囲においてKCl飽和とならず、温度による体積変化以外は濃度の変化がないことが利点です。すなわち温度変化によるKCl濃度変化に起因する電位変化をできるだけ少なくできます。

ただし、3.33mol/L KClを内部液とするAg/AgClの標準水素電極(S.H.E.)に対する電位は便覧などでは明示されていません。そこで当社では数多くの3.33mol/L KCl-Ag/AgCl について独自にその電位の測定を行い、次式で示される電位式を求めました。



なおこれらの測定値については、電位式の算出に用いた参考文献とともに、論文として発表済みであることを付記しておきます。

【参考文献】

  • 『自由拡散甘コウ電極』
    岡田辰三、西 朋太、高橋(松下)寛、工業化学雑誌、61巻、第8号、922~925 (1958).
  • “Silver-Silver Chloride Electrode prepared with the Use of Molten Silver Chloride”
     H.Matsushita,H.Maruyama,T.Aomi and N.Ishikawa,Memoirs of Chubu Institute of
     Technology,Vol.10-A,117~122 (1974).

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