炎症診断に対応する小型の血液分析装置を開発

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(株)堀場製作所は、白血球や赤血球など血液検査の必須項目(血算)8項目と併せて、炎症の検査に有効なCRP(C反応性蛋白)を同時測定する血液分析装置を、世界で初めて開発しました。今回開発した製品は、①感染などの炎症診断に有効なCRPと白血球数(WBC)を同時測定できる炎症マーカー項目検査装置②測定時間が短い(4分20秒)③デスクトップサイズ(300×410×400mm,18Kg)が特長です。従来、血液検査センターへ外注し測定結果を診断に反映するのに時間を要していた開業医、特に小児科といった検査結果を基に迅速に処方しなければならない時に有用です。国内は、フクダ電子株式会社(本社・東京,社長・福田 孝太郎氏)を通じて、海外には、ABX社を主軸とする当社グループルートで販売します。


炎症とは、
感染ややけどなど、私たちが最も繁盛に、それも知らないうちに遭遇する病気の症状のことで、カゼも炎症のひとつです。体に炎症がおきると、発熱,食欲不振,衰弱といった、生体の細胞や組織の障害に対して防御反応がおきます。
このような防御反応の程度を血液中の成分から調べることを、炎症マーカー検査といいます。検査指標となる項目に、赤血球沈降速度(血沈),白血球数(WBC),急性期蛋白成分(CRPなど),血清蛋白分画などがありますが、炎症、特に感染症の場合、感染してから1〜2日でCRPが増加した後、遅れてWBCが増加します。つまり、炎症にかかったという信号としてCRPが増加し一方でWBCが増大、炎症が沈静に向かえばCRPが先に減少し、完全に直ればWBCが正常にもどるというメカニズムです。感染症の早期診断には、免疫力の二面性からWBCとCRPを組み合わせて測定されるようになっています。

現在のWBCとCRPの測定は、
WBCは、赤血球,白血球,ヘモグロビンなど、血液学的検査の必須8項目(血算)を測定する血球カウンタなどの血液分析装置で測定されています。一方のCRPは、まず約10分遠心分離機で血清と血球成分に分離した後、汎用の生化学自動分析装置に血清をセットし、さらに10分かけて測定されています。この2項目が別々の装置で測定されているのは、CRPを血清状態でないと測定できない装置しかないことと、もともと検査の目的が違うので同じ血液測定でも、分類が異なっていたためです。

今回開発した装置は、
従来から当社が販売していた血球カウンタ(=血算8項目を測定)に、血清分離をすることなく全血(=採血したままの状態)でCRPの測定を合わせ持つ、世界で初めての血算とCRP同時測定装置です。測定時間は4分20秒(血算のみでは75秒)と従来の1/5と短時間で測定できます。大きさは、300×410×400mmと場所をとらないコンパクトサイズです。しかも、従来は全血用,血清分離用と2本分の検体が必要だったところが、全項目を全血で測定できそのうえ小型なので、検体量は1/10の18μlと微量ですみます。例えば、耳たぶのわずかな血液で測定できるので、小さな子供が患者の小児科には特に有効です。
つまり、①炎症マーカー検査に必要なWBCとCRPを同時に測定②微量で短時間測定③小型で診察室で場所をとらない、といった特長から、開業医から大病院の緊急検査室まで幅広く、炎症の早期診断に役立ちます。
特に、開業医など小規模病院・医院では通常、血液検査はその検体数と設備導入といった面から、血液検査センターのような検査専門機関へ外注される場合がほとんどで、一般的に当日では検査結果が入手できません。一方、炎症マーカー検査では炎症発生からまもなく増加するCRPを測定することが、早期診断・処置につながります。炎症マーカー検査の結果のない状態では、余分な投薬という経済面、抗生物質投与の種類と量の選択情報不足などの問題が発生する可能性があります。特に、幼時の場合は問診が困難なうえ進行が早いため、診察即治療が求められます。
この装置を導入すれば、感染症の有無と程度の早期診断→早期措置・患者サービスの向上→医院・診療所の他施設との差別化につながります。

 

  • 測定項目
      血球計数  (測定項目)1.WBC(白血球数)
     (=血算8項目)      2.RBC(赤血球数)
                  3.Hgb(ヘモグロビン濃度)
                  4.Hct(ヘマトクリット値)
                  5.PLT(血小板数)
            (演算項目)6.MCV(平均赤血容積)
                  7.MCH(平均赤血球ヘモグロビン量)
                  8.MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)
      CRP測定        CRP(C反応性蛋白)
  • 測定時間  血算8項目(CBC)+CRP→4分20秒/検体
          (血算8項目のみの場合は、75秒/検体)
  • 検 体 量  血算8項目(CBC)+CRP→18μl
         (血算8項目のみの場合は、10μl)
  • 販売先例 
    • 内科,小児科,整形外科,外科,産婦人科
    • 中小病院,緊急検査室,周産期施設
    • ICU,手術室