半導体市場における液体材料気化器

2018年7月30日

西川 一朗(執筆) / カテゴリ:テクノロジー


【概要】

近年の半導体製造プロセスは、微細化、デバイス構造の3次元化に伴い、原子層成膜 (ALD)プロセスにおいては、生産性向上のために大流量気化が求められ、3次元化に対応するためエッチング工程にも新材料が使われ始めている。気化器への市場要求としては,大流量気化,低温度気化,使用するキャリアガス流量の低減などがある。液体材料の気化供給方法は,直接気化方式,バブリング方式,ベーキング方式の3方式に大別できる(Figure 1)。本稿では,市場ニーズに応えるべく従来製品に比べて気化性能を大幅に向上した高効率気液混合式気化器「MV-2000」に関して紹介する。


【MVシリーズ構造】

High-k材料として,代表的なTEMAZr(テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム)は,キャパシタの高誘電率の絶縁膜(ZrO2)として用いられるが,低蒸気圧であるため,気化するためには高温が必要となる。しかし長時間高温にさらされると,熱分解しやすい材料であり,気化器にとって難しい材料である。MVシリーズは,このような材料に対応するために,2つの部分に分かれた構造を有する(Figure 2)。Figure 2のA部分が気液混合バルブ(Mixing valve)。B部分が気化部(Vaporizer)である。この方式のメリットは,各部分で独立した温度制御が可能となることである。液体滞留部であるMixing valve部を低温に設定可能で,液体材料の熱分解リスクを低減できる。(液体材料が熱分解すると分解生成物により,バルブ部或いはノズル部で閉塞が生じる。)逆に気化部に関しては,高温設定(Max200℃)が可能で,低蒸気圧材料に対しても対応が可能となった。気化の流れとしては,Liquid Flow Meter(LFM)で,液体流量をセンシングし,ピエゾアクチュエータバルブと,フィードバック制御で,液体流量を精密制御する。MFCによって流量制御されたキャリアガスと,Mixing valve部で気液混合し,気化部の噴霧ノズルで,微細化し,加熱気化することによって,効率良く安定した蒸気を得る。

 


【大流量化】

従来製品(MV-1000)では,気化部内が中空構造であり,液体が大流量になると,気化部内で充分に熱交換されず2次側にミストが飛散するため,大流量対応が困難であった(Figure 3a)。新製品(MV-2000)では,改善策として気化部内の熱交換効率を向上させるため,低圧力損失で,流体を撹拌させられるような構造の熱交換素子を内蔵した(Figure 3b)。同一条件において,従来製品と新製品で,温度分布をCAE解析した結果を示す(Figure 4)。赤色が高温,青色が低温部分を示す。上側の従来製品では中心部まで熱が伝わっていない(Figure 4a)。対して,下側の新製品では,気化部に導入直後に渦を巻いているような状態が確認され熱交換が促進し温度が均一になっている(Figure 4b)。CAEにおいて,熱交換効率の改善を確認した。


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