半導体製造装置での温度管理

2018年9月 3日

大須賀 直博(執筆)/ カテゴリ:テクノロジー


【概要】

弊社では、半導体製造装置のエッチング工程における温度測定に特化した放射温度計をリリースしている。放射温度計のコアとなる赤外線センサーは,弊社のMEMS技術を駆使して製作したものであり,従来機のセンサーに比べて感度・応答時間が向上している。この赤外線センサーの採用により,温度測定の再現性(繰り返し性)の値が実力的に0.1℃(対象物温度23℃のとき)と従来機と比較して3分の1に大幅に性能が向上し,環境温度の過渡温度変化に対する指示値も安定した。半導体の製造に放射温度計が使われるようになった理由には,大きく3項目が挙げられる。①測定対象物が動体(回転や移動する物体)であること,②ドライエッチング工程において温度管理は品質を左右するための最重要項目の一つであること,③工程の多段化でウエハが高付加価値になり,歩留り向上のためにチャンバー内ウェハステージの温度管理が必要となったことが挙げられる。最近では,後者2つが特に重要視され,放射温度計にはより高い再現性性能が求められるようになった。あわせて,半導体製造装置も多種多様に変化をし,他の制御機器との接続性を要求されるようになった。これらに応えるために新型の赤外線センサーを搭載して高精度,高い再現性を持つ温度測定を実現した放射温度計となっている。

 

【原理】

放射温度計は,測定対象物が放射している赤外線を検出し,温度に換算している。ここであらためて原理を説明する。熱の伝わり方には,伝導・対流・放射という3種類の形態がある。伝導とは,互いに接触した温度の高い物体から低い物体へと熱エネルギーが移動することである。対流とは,水や空気などの流体が暖められると軽くなって上昇し,冷やされると重くなって下降することによって循環することである。この循環によって熱が伝えられる。放射とは,その物質が持つ熱エネルギーを電磁波(可視光線や赤外線など)という形態で周囲に放出する現象のことである。身の回りでは,たとえばストーブに手を近づけるだけで,直接手を触れなくても暖かく感じるが,これは手がストーブからの放射エネルギーを感じるからである。この場合は,手が赤外線センサーの役割をしていることになる。これと同じ原理で,物体から放射される赤外線エネルギー量を赤外線センサーが検出し,その赤外線の量から物体の温度を測定するのが放射温度計である。



【IT-470F-Hの特徴】

当社では半導体製造装置のエッチング工程における温度測定に特化した放射温度計「IT-470F-H」を開発した。赤外線センサーは,当社のMEMS技術を駆使しSi基板上にセンサー構造と電気回路を形成することにより,従来センサーに比べて,感度は約1.7倍,応答時間は2.7倍に向上し,Si基板上に回路も組み込んだため熱安定性能も改善した。このことにより従来機に比べ,IT-470F-Hの再現性や周囲温度の過渡特性が向上した。また,本体の筐体が全て金属(アルミ合金)で形成されており,温度分布が発生しにくい構造となっている。逆に,外部からの熱影響を受けやすくなり,それが誤差の要因となりえるが,新型の赤外線センサーを搭載した結果,本機では従来機に比べて過渡特性を向上させることができた。

一般的に半導体製造装置であるドライエッチング装置の多くは,プラズマを用いる工程で高周波の電磁波が発生する。放射温度計の指示値がこれにより変動するのを防止するために筐体のアース構造の改良と,シールド材を入れる対策と電気回路を見直した。以上の対策を行った結果,下記に示す製品仕様の装置を開発することができた。尚,出力は従来機では光デジタル出力のみであったが,電流出力機能を追加したことにより汎用性が高まり,どちらかをユーザが選択して使うことを可能とした。

 

【まとめ】

IT-470F-Hでは,高精度・高再現性を実現させた。これにより,半導体製造工程における温度管理には不可欠な計測器となった。半導体は,今後,さらに高度で微細化、メモリーの積層化、多品種少量生産が進み,それに伴い放射温度計に対する要求も高まると考える。その温度管理において弊社の温度計が必ずお役に立てるものと考えております。


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