堀場エステックの流量標準技術確立の取組み

2018年10月 2日

磯部 泰弘(執筆)/ カテゴリ:テクノロジー


【概要】

半導体デバイスの微細化,高集積化に伴い,ガス流量・液体材料の供給量に対する高精度化や信頼性向上への要求が高まりつつあり,流量計測・制御機器であるマスフローコントローラの高精度化,信頼性向上が必要である。京都福知山テクノロジーセンターでは流量標準器の自社開発,ISO/IEC 17025認定取得およびプロセスガス流量測定の標準化といった流量標準技術の確立を目指している。ここでは流量計測・制御機器であるマスフローコントローラの高精度化,信頼性の向上に必要な流量標準・標準化技術の確立についての取組みを紹介する。

 

【ISO/IEC 17025認定取得に向けての取組み】

ISO/IEC 17025は試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項に関する規格である。ISO/IEC 17025ではISO9001に代表されるマネジメントシステムの要求に加えて,分析・測定などを行う試験所及び校正業務を行う事業所に対する技術的要求事項が加えられており,分析・測定や校正結果を出せる能力があるかどうかを認定機関が認定するための規格である。この認定を受けた試験所・校正機関は試験成績書や校正証明書に認定マークを付加することができ,国際的に通用する試験結果や校正結果の信頼性を高めることができる。
堀場エステックでは,国家計量標準機関であるアメリカ国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology)(以下 NIST)および産業技術総合研究所計量標準総合センターの標準とトレーサブルな流量標準器の自社開発を行うと共に認定取得に必要なマネジメントシステムの整備を行ってきた。NISTの認定プログラムNational Voluntary Laboratory Accreditation Program(NVLAP)により,国際相互承認協定による認定を2017年に取得した。トレーサビリティ体系の概略を Figure 1 に示す。国家計量標準機関にトレーサビリティの取れた秤量式社内流量計(Gravimetric system)を参照標準器とし,圧力式マスフローモジュールD500の技術を用いた流量計を実用標準器として,今後の新製品に適用できるように社内のトレーサビリティ体系の構築を行っている。認定マークが付加された校正証明書は,参照標準器を用いた校正および実用標準器を用いた校正時に発行可能となるように進めている。

 

【流量標準器の自社開発】

前述の参照標準器および実用標準器の自社開発を進めており、堀場エステックの流量トレーサビリティ体系を再構築するとともに信頼性向上を目指している。

参照標準器(Gravimetric system)
www.horiba.com/jp/horiba-stec/core-technology/gravimetric-system/

開発したGravimetric systemの概略構成を Figure 2 に示す。測定容器にガスを封入した後,流量計を介してガスを測定容器から流出させて,その時の時間当たりの測定容器の質量減少を,電子天秤とGPS Timerで計測することにより質量流量を測定する。主な仕様を Table 1 に示す。校正流量範囲は1 sccmから50 slmで拡張不確かさ0.1%以下を目標にしている。Gravimetric systemにより流量計を校正する場合には,Gravimetric systemで流量計測を行うと同時に被校正流量計の流量出力(Flow Output)と比較する。Gravimetric systemの基本技術はHoriba Instruments incorporated-Reno オフィスで開発され,社内評価試験の結果,目標仕様を満たしていることを確認している。この技術を京都福知山テクノロジーセンターに導入し,参照標準器として完成させるために各種データを取得している。
校正機関の校正結果の信頼性を証明するためには,後述の実用標準器を仲介としてGravimetric systemでの校正結果とNISTの流量標準による校正結果を比較する技能試験が実施される。社内での各種データ取得後に技能試験を実施する予定である。

KEY TECHNOLOGY;
堀場エステックだからできること
www.horiba.com/jp/horiba-stec/core-technology/






【プロセスガス流量標準化への取組み】

半導体デバイスの大容量化,高性能化のために,デバイスの微細化・新材料の導入が進められている。それにつれて高度な半導体プロセス技術が要求されている。材料供給についても流量計測制御機器に対してプロセスガス流量の高精度化,高速化,高信頼性が求められている。N2やAirといった不活性ガスについては,流量トレーサビリティ体系は構築されている。一方,腐食性,毒性,反応性といった特性をもつプロセスガス流量に対しては,それらの特性により実用的にはトレーサビリティ体系は整備されていない。マスフローコントローラメーカはそれぞれプロセスガス流量標準器を持ち,製品であるマスフローコントローラのプロセスガス流量に関するデータを取得している。しかし,プロセスガス流量のトレーサビリティ体系が実用的に整備されていないことによりメーカ間でプロセスガス流量が異なる場合がある。ユーザーがマスフローコントローラメーカを変更するときには,再度プロセス条件を確定するために多くの労力を費やす場合がある。また,メーカが取得するプロセスガス流量データの信頼性が不明といったことが起こる。このためマスフローコントローラメーカに対してプロセスガス流量の標準化の要求が強くなり,現在SEMIスタンダード技術委員会で流量計測方法等の標準化の取組みが産業総合技術研究所の協力を得て進められている。産業総合技術研究所で校正した流量計を用いて国家標準器と各マスフローメーカーの標準器の差を調査する計画で,先ずは不活性ガスから準備をすすめている。堀場エステックはプロセスガス流量測定用のRate Of Rise(ROR)Systemを用いて参加する予定である。


本内容に関するお問合せは 株式会社 堀場エステック 営業推進部 info.hstec@jp.horiba.comまで