『2018堀場雅夫賞』受賞者決定 / 授賞式は10月17日

2018年7月30日


-社外の「分析計測技術」研究者の奨励賞-
産業の発展に不可欠な半導体デバイスの製造プロセスの分析・計測に寄与する研究
 
当社グループは、このほど、国内外の大学または公的研究機関の研究開発者を対象とした「分析計測技術」に関する研究奨励賞『堀場雅夫賞』の2018年度の受賞者を決定しました。
2003年の本賞創設から15回目となる今回の選考テーマは、“半導体製造プロセスにおける先端分析・計測技術”です。本年3月から5月にかけて公募し、海外含め36件の応募がありました。これらの応募に対し、募集分野において権威ある研究者を中心に8名で構成する審査委員会が、将来性や独創性、ユニークな計測機器への発展性に重点を置いて評価し、以下の3名を堀場雅夫賞受賞者、1名を特別賞受賞者に決定しました。受賞記念セミナーならびに授賞式は、学究界および行政関係から出席者をお招きし、10月17日(水)京都大学 芝蘭会館にて執り行います。 
 

<2018堀場雅夫賞・募集分野について>

蒸気機関の発明による第1次産業革命、電気と石油による大量生産の第2次産業革命、コンピュータによる自動化の第3次産業革命に続き、IoT(Internet of Things)とAI(人工知能)による第4次産業革命が始まっています。このような産業構造の大きな変革を支える礎として半導体の重要性はますます高くなっており、次世代の半導体デバイスにおいては、デバイスの微小化、性能や信頼性の向上を効率良く行えるプロセス技術が求められております。
本年の堀場雅夫賞は、産業の発展に不可欠な半導体デバイスの製造プロセスの中でも特に重要な、薄膜形成プロセスやエッチングプロセスの高度化に寄与する分析・計測技術を募集対象とし、新たな価値の創造につながる研究開発にスポットを当てました。

<受賞者ご紹介>

[堀場雅夫賞] 

占部 継一郎 氏 
京都大学大学院 工学研究科 航空宇宙工学専攻  助教

「レーザー干渉計によるプラズマ電子密度計測の高速・高精度化」

半導体製造プロセスに用いられる熱的に平衡していない状態のプラズマ(*1)は、電子の衝突による電離(*2)・励起(*3)がプラズマ状態の持続や化学反応に影響を与えるため、プラズマ中の電子密度を測定することは重要である。しかし、電子密度を測定する手法の一つであるレーザー干渉計(*4)には、近年に開発されているプラズマ源に対して、時間・空間分解能や検出感度などが十分ではないという課題がある。
占部氏はレーザー干渉計とミリ波吸収法(*5)を組み合わせ、近赤外レーザーと顕微鏡を用いた干渉計などを開発し、電子密度計測の高速化、高空間分解能化、高電子密度分解能化を実現した。
将来的には、開発されたレーザー干渉計が半導体プラズマ装置に組み込まれ、プロセスの最適化やプラズマ異常の検知を実現し、半導体製造プロセスの高精度な制御や歩留まり向上に貢献することが期待される。
 
(*1)プラズマ: 気体を構成する分子が電離しイオンと電子に分かれて運動している状態
(*2)電離: 原子や分子が電子を放出または取り入れてイオンになること
(*3)励起: 原子や分子などが外部からエネルギーを得て、高いエネルギーをもつ状態に移ること
(*4)レーザー干渉計: 一つの光源から出るレーザーを二つまたはそれ以上に分け、再び集めた時にできる干渉縞(位相差)を観測して、状態を調べる装置
(*5)ミリ波吸収法: ミリ波をプラズマに照射し、それに対する反応を計測する手法 
 

堤 隆嘉 氏
名古屋大学大学院 工学研究科 プラズマナノ工学研究センター 助教

「高精度半導体プラズマプロセスのための基板温度計測システムの開発」

半導体デバイス製造プロセスで求められる原子レベルの加工の再現性を実現するためには、半導体ウエハ(基板)の温度を正確にモニタリングし制御することが重要である。
しかし、様々な外乱が存在するプロセス中のウエハの温度を高精度にモニタリングすることは困難であり、特に光干渉計(*)を用いる場合は、周囲の装置からの振動の影響をいかに抑えるかが課題であった。 堤氏は、計測対象となる半導体ウエハが高い平行度をもち、鏡面研磨が施されていることに着目し、ウエハの表面と裏面で反射する光の干渉から温度を算出する手法を発案した。この手法は従来の手法とは異なり、同経路を伝搬する光の干渉を使用する。そのため、周囲からの振動の影響を受けにくく、高精度に温度を測定することができる。
本技術は、製造工程中のウエハ温度を高精度で高速にモニタリングするものであり、製造工程の歩留まり向上に大きく貢献すると期待される。
 
(*)光干渉計: 一つの光源から出る光を二つまたはそれ以上に分け、再び集めると干渉という現象が生じる。この干渉光には、分岐された光が通った経路の屈折率や長さの情報が含まれる


布村 正太 氏
産業技術総合研究所 太陽光発電研究センター 主任研究員

「半導体プラズマプロセス中の薄膜材料の欠陥検出」

半導体製造プロセスではプラズマ技術を用いてシリコンウエハ上への材料膜の堆積や不要な部分の除去が繰り返し行われる。材料膜の特性は半導体デバイスの性能に大きく影響を与え、高性能化にはプロセス条件を緻密に制御することが求められるが、プロセス中のプラズマの状態と材料膜の特性との関係は十分に解明されていない。布村氏は波長の異なる2種類の光を材料膜に照射して得られる光電流(*)の増減をリアルタイムに測定することにより、半導体デバイスの性能を低下させる材料膜の欠陥をリアルタイムに検出する技術を開発し、プラズマの状態が材料膜の特性に及ぼす影響をプロセス中に計測する研究を進展させた。
本研究は太陽電池で使われるアモルファスシリコンの膜を形成するプロセスを対象としているが、他のプラズマ技術を用いるプロセスにも適用される事が期待される。

(*)光電流: 物質に光を当てたとき,その光を吸収して光電子と呼ばれる自由電子を生じるこの光電子の運動による電流を光電流という
 

[特別賞]

ツァンコ ヴァスコフ ツァンコフ 氏 
ルール大学ボーフム(ドイツ)  プラズマ・原子物理学科 上席研究員

「イオンの速度分布関数による非侵襲的プラズマ特性解析」

半導体製造プロセスにおいてプラズマの状態を把握し、制御する事は半導体製造プロセス上で重要となる。 しかし、実際の現場ではプラズマの発生環境を乱すことなく、イオンの種類や密度などのプラズマの特性を得ることは困難である。
質量分析計はプラズマの発生環境を乱すことなくプラズマ中のイオン種、エネルギー分布、密度等の情報を得る方法の一つであるが、分析計付近の情報しか得られない。
ツァンコフ氏は、質量分析計を用いて測定するイオン速度の分布等がボルツマン方程式(*)の理論に基づいているという解析事例を調査し、プラズマの特性をより正しく推定する方法を提案している。
簡便にプラズマを測定する手法は半導体製造プロセス上、極めて重要であり、今後、プラズマの定量的な特性を解明する手法として利用されることが期待される。
 
(*)ボルツマン方程式: 気体分子の速度分布を示す方程式

関連情報 堀場雅夫賞ウェブサイト