ぶんせきコラム

おいしい空気とキレイな空をまもる


よく「水と空気はタダ」と言いますが、本当にそうでしょうか?ふだん私たちは何気なく水を飲み、空気を吸っていますが、じつはこれらの生活環境を維持するために、さまざまな人々の努力や行政によるシステムが存在しているのです。


化石燃料を燃焼するとき、いくらかの「大気汚染物質」が放出されます。

代表的なものとしては、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、二酸化硫黄(SO2)、炭化水素類(HC)、オゾン(O3)、浮遊粒子物質 (SPM) などがあります。その発生源としては、自動車や船舶など排出する地点が特定できない「移動発生源」と、工場や発電所など排出する地点が特定できる「固定発生源」があります。

これら大気汚染物質の量が増えたとき、人の健康や生活環境を損なう原因となります。たとえば、交通量がとても多い地域や、工場などが密集している地域では、そのままでは深刻な環境公害に直面することになりかねません。そこで行政により、個々の公害事象への対応や、環境汚染の未然防止のための決めごと、すなわち「規制」が設けられます。


大気汚染を未然に防ぐひとつの方法として、「環境モニタリング」があります。
環境モニタリングでは、どの地域のどの地点で常時監視する必要があるかを決定するために、まず「環境アセスメント」が実施されます。その後、特定地域を絞り込み、大気汚染物質についてあらかじめ設定された規制値を超えない程度の交通量であるか、 工場からの排出量に問題はないかなどのデータが管理され、汚染物質量が算出されます。このことは「環境汚染発生源データ管理」と呼ばれます。

その他にも「データ解析環境予測」といって、気象に関するデータを採取し、統計解析や汚染物質拡散シュミレーションによる将来濃度予測が行われます。これらの計算上のモデルにより、汚染物質削減量を算出するなど、新たなる規制強化などのための計画が策定されます。


とくに東京や大阪などでの大都市部では、大気汚染の状況をつねに把握するため、市街地の主要な地点で大気汚染物質が自動測定されています。
学校の屋上などで広域的に大気汚染を測定する「一般環境測定局」と、道路の近くでおもに自動車の排出ガス中の汚染物質を測定する「自動車排出ガス測定局」とがあります。

もちろん、固定発生源である工場などでも大気汚染を防止するための努力が行われています。敷地内には自動測定装置が設置され、燃料使用量や煙突中の二酸化硫黄や窒素酸化物などが測定されています。測定されたデータは「テレメータ装置」によって環境情報センターへ送られ、汚染物質排出量が規制値以下になっているかどうかなど、常時チェックされています。ここで異常が確認されると、光化学スモッグ警報が発令されたり、交通量が規制されたりするとい うわけです。

また自動車などの移動発生源では、大気汚染物質の排出量をつねに 監視することは難しいので、排出量が規制値を下回るように設計されるとともに、製造段階でも検査されます。また出荷後にも、点検や車検によって定期的にその排出量がチェックされます。 このようにさまざまな方法と人々の努力によって、私たちの生活環境はまもられています。経済活動をおこないつつ、同時に環境問題 に立ち向かうことは、これからも両立させていかなければならない、共通の課題です。



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エンジン排ガス測定装置