ぶんせきコラム

微生物と力をあわせて環境をまもれ


私たちが毎日の生活でつくりだしている生活雑排水は、地下にはりめぐらせられた下水道を通って下水処理場へ運ばれることはよく知られています。ではこのあと、どのようにして河川へ放流できるまでに浄化されるかをご存知ですか?


生活雑排水を処理するおもな方法として、現在の多くの下水処理場では「活性汚泥処理法」という手法がとられています。
これは近年、都市近郊からの河川が流入する閉鎖海域で、富栄養化がすすみ赤潮などの被害がなかなか改善されないことへの対策として、自然界の浄化作用にヒントを得て開発された下水高度処理技術です。聞きなれない言葉ですが、「20世紀最大の環境技術」と呼ぶ人がいるほど重要な技術で、私たちが健康な生活をいとなむための縁の下の力持ちともいえます。


では、この「活性汚泥処理法」とはいったいどのような方法なのでしょうか。
まず「活性汚泥」は、下水浄化に活躍する細菌類、原生 動物、後生動物などを総称するもので、排水中の有機汚濁物質を直接摂取して繁殖する微生物のことです。この活性汚泥を下水と混合し空気を送り込むと、微生物が有機汚濁物質を酸化し、おもに水と二酸化炭素に分解します。このようにして下水を浄化するのが「活性汚泥処理法」です。

ところで、活性汚泥による処理をうまく行うためには、いくつもの指標を計測し管理しなければなりません。これは活性汚泥中の微生物の活動が、水温、溶存酸素、pH、有機汚濁物質の種類や量などの条件と複雑とからみあっているからです。

たとえば、活性汚泥の中には酸素の存在で有機物を分解する「好気性」の微生物と、酸素不足下で繁殖する「嫌気性」の微生物とが存在しています。つまり、空気を送り込む量 も微生物の活動にあわせて増減し、水の中の溶存酸素量をコントロールさせなければなりません。また、微生物が有機汚濁物質を酸化・分解することにより周囲のpHが変化します。有機汚濁物質の量 が活性汚泥の処理能力を超えてしまうと、局部的に酸欠やpHの低下が起こり、微生物の生活環境が保てなくなるというわけです。


とくに都市部の下水処理場では、家庭や都市活動から排出される汚れの程度、つまり「汚濁負荷量」が1日のあいだでも大きく変化します。
そのため活性汚泥処理工程でpHや酸化還元電位(ORP)を計測し、汚濁負荷量に応じて制御や管理を行うことが重要です。こんなところにも分析技術が利用されていたんですね。