ぶんせきコラム

自動車排ガス、いつ、どこで、なぜ測る?


自動車に乗っていると、定期的にやってくる「車検」。私たちは自動車を整備工場などへもっていき、性能を維持して故障や事故を未然に防ぐため、いろいろな検査や整備をしてもらいます。じつはこのとき、自動車の大切な性能のひとつ「排ガス」も検査されているのを知っていましたか。今回はその排ガスを検査する理由と、そこで活躍する測定器について。


 自動車排ガス規制
「車検」のとき自動車の排ガスを検査するのは、「自動車排ガス規制」と一般的に呼ばれている、法律で決められたルールにもとづいています。

もともと自動車排ガス規制は、1950年代に光化学スモッグの発生メカニズムが解明され、その要因のひとつとして自動車の排ガスがとりあげられたことに始まります。1960年には米国カリフォルニア州において「自動車汚染防止法」が制定され、その後、世界各国で法規制化が展開されてきました。

日本国内では、1966年にガソリン車の排ガスに含まれる一酸化炭素(CO)の濃度を3%以下に抑える規制が世界に先駆けて実施され、規制方法・規制基準の見直しを繰り返しながら今日にいたります。

現在の規制方法として、日本では大きく2つの方法があります。ひとつは「新車適用規制」と呼ばれるもので、ふつうは製造・輸入から販売までに至る過程で、自動車が所定の性能を満たしているか検査が行われます。

そしてもうひとつの規制は「使用過程車規制」と呼ばれ、自動車を使用する人がその性能維持と安全確保のために定期的に行なう自動車検査、つまり「車検」のときに実施されるというわけです。

車検工場で活躍する排ガス測定器
ガソリン車の使用過程における規制対象成分である一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)を測定するには、「非分散赤外線吸収法(NDIR)」という原理を用います。これは、多くのガスがそれぞれ特有の波長の赤外線を吸収するという性質を利用した測定法です。自動車の排ガスを「測定セル」に導き赤外線を照射すると、それぞれのガスに特有の波長の赤外線が、濃度に応じて吸収されます。こうやって吸収された波長では赤外線の強度が弱くなるので、それを検出器でひろってガス濃度に変換するしくみです。

このような排ガス測定器は国内外の自動車メーカの製造・品質検査 をはじめ、自動車部品メーカや研究機関、大学などで幅広く使われています。そして日ごろ自動車の整備や修理、車検を行う車検工場や整備工場、ガソリンスタンドなどは、それら以上に多くの拠点で 排ガス測定が行われています。

こういった場所では、排ガス測定器は小型で扱いやすいということが、とくに求められます。そこで最新のポータブル自動車排ガス測定器では、表示部の視認性をこれまで以上によくしたり、ボタン一つで測定ができるようにするなど、現場で使いやすく作業効率をあ げるための工夫が凝らされています。また、コンピュータと双方向接続ができるデジタル入出力端子を装備するなど、測定現場のIT化のニーズにも応えられるようになりました。

こんなふうに、私たちが安心して暮らせる環境と自動車の安全を守るため、陰ながらも意外と身近なところで働く、排ガス測定器なのでした。



HORIBA:ニュースリリース
「ポータブルの自動車排ガス測定器を開発」