ぶんせきコラム

温暖化防止を阻む
経済発展というジレンマ


最近、「ブッシュ大統領は京都議定書を支持しない」という報道がなされ、「京都議定書」から米国が脱退することを米国政府が認めたとして話題になったのを覚えているでしょうか?この「京都議定書」で定められた地球温暖化防止策と、それが経済におよぼす影響について、簡単にレビューしてみましょう。


「京都議定書」とは
1997年12月に「国連気候変動枠組条約第3回締約国会議」(略称「COP3」)が京都で開催されました。この国際会議は地球温暖化の防止策を国際的に協議する目的ではじまり、その第3回にあたるの京都会議で、温室効果ガスの排出削減義務などをとりきめたのが「京都議定書」です。その概要は次のようになっています。


1.
二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄(SF6)の6種類のガスの排出量を、地球温暖化の進行防止のために削減する。
2.
6種類のガスの排出量削減は、1990年当時の排出量から約5%削減することを先進国全体の目標とし、その内訳として日本6%、米国7%、EU8%の削減を目指す。
3.
6種類のガスの排出量削減目標を2008〜2012年に達成する。

このように京都議定書で温室効果ガス排出量の削減目標が設定されたのち、さらに細かなルールを決めるためCOP4(1998年11月)、COP5(1999年10月)、COP6(2000年11月)と会議が続けられてきました。ところが各国の合意を得るまでにはいたらず、結論は2001年7月にドイツで開催されるCOP6パート2へ持ち越されることになったのです。

地球温暖化の進行を防ぐことは、地球環境のこれからを考えれば、すぐにでも始めなければならないはずです。にもかかわらず、各国が温室効果ガス排出削減に慎重になるのはどうしてでしょうか。


なぜ温室効果ガス排出削減はうまくいかないのか
各国が温室効果ガスの排出削減に慎重になる理由は、その発生過程を考えれば理解しやすいでしょう。おもな温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)は、石油や石炭などの化石燃料を燃やすことで発生します。このため二酸化炭素の排出量を削減するには、石油や石炭を使わなければよいということになります。しかし、石油や石炭の使用量を減らせばどうなるでしょうか?石油や石炭のエネルギーを使う火力発電所の発電量が下がり、電気料金が上がったり、工場がうまく稼動しなくなったりするかもしれません。

またハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄(SF6)などは、半導体や電気機器の生産過程で使用されるガスで、これらの排出を削減するためには高価な排ガス処理装置を設置するか、あるいは代替ガスを開発するなど、クリアしなければならない課題があります。

このほかにも温室効果ガスの削減によって、産業や生活にさまざまな負担が生じることが予想されます。このため、自国の経済への影響を懸念して、各国は温室効果ガス排出削減に慎重になっているのです。


地球温暖化防止はどうなる?
地球温暖化の進行を防止するには、各国が足並みを揃えて、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出を削減するしか方法はありません。しかし各国の経済的な利害がからむこともあり、簡単にはいかないのも事実です。これからの動向をしっかりと見守っていく必要があるようです。



UNITED NATIONS FRAMEWORK CONVENTION ON CLIMATE CHANGE (国連気候変動枠組条約)
環境省 地球環境局
HORIBA:GAIAPRESS