ぶんせきコラム

目に見えないモノを
はかる──環境放射線


私たちの身のまわりには、目に見えず触れても感じることのできないモノがたくさんあります。「放射線」もそのひとつで、宇宙からやってくるものや、大地から放出されるもの、そして食べ物や人間の体の中からも放射線は出ています。いつも触れていながら五感では感じることができない放射線は、どのようにはかるのでしょうか。

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放射線の種類と単位
放射線をはかる方法を知るまえに、まず放射線とは何かを確かめておきましょう。放射線には「α(アルファ)線」、「β(ベータ)線」、「γ(ガンマ)線」をはじめ、レントゲン写真でおなじみの「X(エクス)線」や「中性子線」などの種類があります。そしてこれらは、モノをとおり抜ける能力など性質にそれぞれ違いがあります。

これらはどれも目に見えず、においや感触もないため、測定器をつかってはかることになります。たとえばHORIBAの『環境放射線モニタ』では、身のまわりのγ線を手軽にはかることができます。γ線はエネルギーの強い電磁波で、ものを通り抜ける力が強く、人体を突き抜けるときにその一部が吸収され影響を受けます。

放射線の量は「線量当量 Sv(シーベルト)」という単位で表します。Svは放射線のエネルギー量(吸収量)に、生物学的に考慮したその放射線の体への影響度をかけあわせた量です。ちなみに国際放射線防護委員会(ICRP)は、一般公衆が1年間で受ける、自然放射線を除いた人工放射線の限度量を1.0mSv(ミリシーベルト、ミリは1000分の1)と定めています。

放射線をはかる
放射線をキャッチすると光を発する「シンチレータ」とよばれるものがあります。HORIBAの『環境放射線モニタ』は、このヨウ化セシウムという固体シンチレータを放射線検出器としてつかっています。

ヨウ化セシウムの結晶に放射線がとびこむと、そのエネルギーを受けて結晶は「蛍光」を発します。この蛍光の強さは放射線の強さと関係していますので、これをフォトダイオードで電気信号に変換し、1時間あたりの放射線量(μSv/h)を表示します。

放射線と学習
人間の感覚で感じることのできない放射線は、一般になじみの薄いものです。とくにこどもたちにとっては、生活や学習の場でイメージすることが難しく、興味を持つきっかけがあまりありません。しかし、放射線は必ず生活環境に存在するもので、身のまわりにどれくらいあるかを知ることは、空気や水のような環境を知ることと同じように大切なことです。

HORIBAの『環境放射線モニタ』では、こどもたちが自分たちの手で測定器をつかい、「はかる」という体験をとおして放射線について学べるようになっています。こどもたちが目には見えないものの大切さを知り、さらに科学への興味や夢を育むきっかけにつながればと願います。


関連情報
国際放射線防護委員会(ICRP)(英文サイト)
HORIBA:ニュースリリース
「当社初、子供向け体験学習用測定器環境放射線モニタ ラディ発売」