ぶんせきコラム

生活のなかのオゾン活用法


「オゾン」という物質は「光化学スモッグ」や「オゾン層の破壊」といった環境問題に関連して語られることが多かったのですが、最近では消臭・殺菌・漂白作用という側面からも注目をあびています。今回は「オゾンとは何か?」から、積極的な応用方法までをご紹介します。

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オゾンとは
オゾンは3つの酸素原子からできていて、独特のにおいがある気体分子です。その存在は古くギリシャ時代から知られていて、ギリシャ語で「におう」という意味の「OZO」が語源とされています。

自然界にもオゾンは気体として存在しています。たとえば大気圏にある「オゾン層」は、太陽からの紫外線によって大気中の酸素が変化し、オゾン濃度の高い層ができたものです。オゾン層では皮膚がんの原因となる紫外線を吸収するなど、地球上の生態系のバランスを保つ重要な役割をはたしています。

大気中のオゾンを分析する
一方で、濃度の高いオゾンは人体に有害でもあります。高濃度のオゾン吸入によって鼻炎、咽喉刺激、胸部圧迫、頭痛、めまい、吐き気などの急性中毒症状をひきおこすことがあります。そのため、産業衛生学会では、労働環境条件におけるオゾンの許容濃度を0.1ppmとしています。

ふつう私たちをとりまいている空気中のオゾン濃度は0.005ppm程度ですが、大気汚染物質による光化学スモッグや、オゾン層破壊により十分に吸収されなかった紫外線が地上付近で酸素と反応することなどが原因となり、空気中のオゾン濃度が上昇することがあります。

大気汚染によるオゾン濃度の上昇を検知し、防止する目的で『大気汚染監視用オゾン測定装置』が実用化されています。この装置では、オゾン層のときと同じように、オゾンが紫外線を吸収する性質を利用してオゾン濃度を測定します。またこの分析装置には、標準物質とするためのオゾンを人工的に発生させる「オゾン発生器」がしばしばつかわれます。

オゾンの生活への応用
この気体を生活のなかで応用する方法も普及しつつあります。オゾンには「消臭」、「殺菌」、「漂白」といった作用があり、その濃度を適切に保つことで安全性の高い利用が可能です。とくに、塩素より強い殺菌効果がありながらも、反応後は酸素に分解するため2次的な汚染が少ないという特徴が注目されています。

最近では、食品加工会社や給食センター、スーパーマーケットなどの食品をあつかう現場や、ごみ焼却場や下水処理場など周囲環境への影響を最小限にとどめる目的、そして農業では農薬にかわる殺菌方法として、オゾン発生器の利用がひろがりはじめています。

また家庭でも、手軽で効果の高い消臭器として期待が高まっています。オゾンによる消臭は酸化分解作用によるもので、悪臭のもとになっている分子が、オゾンによって化学的に分解されます。活性炭に吸着させたり、芳香剤によって違うにおいでカバーするのではなく、においをもとから断ち切ることができるのです。

このようにオゾンは地球の生態系に深くかかわる物質であるとともに、人工的に活用すれば私たちの生活をより快適・安全にしてくれるとても効果的な気体だといえます。