HORIBAのひとり言

水質モニタリングで
世界の水質改善へ貢献



水質モニタリンクシステムU-20

1960年代以降の活発な経済活動にともない、大きな環境問題のひとつとして、湖沼や河川の富栄養化現象が取りざたされるようになりました。

これは、排水中に含まれる多量の窒素・リン等が流入し、これを栄養源とする植物プランクトンが異常繁殖するというもので、この問題を把握し解決するためには水質汚染の状況を、多次元的にとらえる必要があります。

この目的で新開発された『マルチ水質モニタリングシステムU-20』は水質13項目の測定に加えて、水深100mまでの高精度な測定、GPSによる緯度経度の把握、更に連続1ヶ月モニタリングが可能といった特長をそなえています。

水深100mとのたたかい

この装置の開発にあたって最も苦労したのは、「DO(溶存酸素)センサ」の開発です。従来のDOセンサは、つねに攪拌(かくはん)をしないと安定した値を得ることはできませんでした。ところが『U-20』は、水深100mでも測定できることが求められ、その水圧に耐える攪拌装置はみつかりません。

そこで『U-20』では、微小電極を採用して酸素の分解量を極力押さえるという方法で、攪拌しなくても安定した測定ができるセンサの開発に成功しました。同時にこのセンサのおかげで、小型な装置に収めることができたのです。

※なぜ「応答部だけ」?
洗浄液が液絡部(内部液の流出する部分)に触れると、内部液と混ざって正確な測定を妨げます。このときは内部液ごと交換してください。また、液絡部が詰まっても応答が遅くなることがあります。このときは、サンプルの種類に応じて上で説明したのと同じ洗浄液に液絡部を浸します。ただし、塩酸を使うときは10分ぐらいまでにしてください。もちろん、洗浄後は内部液の交換をお忘れなく。

世界への環境貢献

今年の5月、デンマークの首都コペンハーゲンで、「第8回国際湖沼会議 Lake'99」が開催されました。限りある淡水資源の利用と保全をテーマに行われたこの会議では、『U-20』の出展と現地見学会での水質調査にも協力しました。

協賛団体である国際湖沼環境委員会(ILEC)の科学委員のメンバーや各参加者からは、小型で持ち運びが容易なこの装置で、13項目もが高精度に測定できることに、驚きの声とともに高い評価をいただきました。とくにデンマークでは、酪農による水質汚染が原因で湖沼の富栄養化が進んでおり、その指標の一つである硝酸イオン測定に注目が集まりました。

また今年の10月からは、国連環境計画・国際環境技術センター(UNEP-IETC)の「淡水管理用ソフトウェアーの開発と普及」プロジェクトに参画しています。世界各地では、人口増加と経済活動の発展にともない、我々の生活に欠かすことのできない、限りある資源である「水」が富栄養化し、水質汚染が大きな危機としてとり上げられています。このプロジェクトでは、世界各地の水質データベースを作成する予定にもなっています。

私たちは、この『マルチ水質モニタリングシステムU-20』で測定したデータで、温帯及び熱帯地域における湖沼の富栄養化調査や、その解析に協力していきます。これからも『マルチ水質モニタリングシステムU-20』が、世界各地の水質汚染改善にますます役立てられること励みに、私たちは開発をつづけていきます。