HORIBAのひとり言

中国の酸性雨事情


いまや環境問題に国境はなくなり、各国が世界規模での保全に意識を高めています。そのなかで、環境分析で中国と日本の橋渡しを担う、堀場製作所・環境分析システム海外営業部の李虎氏が、中国における酸性雨・大気汚染の実情をレポートします。

中国の酸性雨・大気汚染の原因とは
酸性雨とは一般にpHが5.6より低い酸性の降水をそう呼んでいますが、広義には酸性化した雨水とガスとエアロゾルをふくむ酸性沈着物であるとされています。酸性雨の原因物質はおもに硫黄酸化物と窒素酸化物で、その発生源は火山などの自然発生源と、火力発電所や工場、自動車、船などの人為発生源があります。

中国では、近年の高速経済成長をなしとげるかたわら、化石燃料消費の増加にともなう硫黄酸化物、窒素酸化物の排出量の増大による深刻な大気汚染に直面しています。

とくに中国のエネルギー消費量の70%以上を石炭が占めることや、大部分の固定発生源に脱硫・脱硝装置がつけられていないことなどから、石炭燃焼による硫黄酸化物(SO2)の排出量はすでに数年前から世界一になっています。

中国における酸性雨の原因の大部分は、地域において排出される硫黄酸化物によるものであり、その特徴として降水中の硫酸イオン濃度が硝酸イオン濃度より数倍高くなっていることが挙げられます。

いま、中国の国土面積の約30%が酸性雨の被害をうけていて、とくに南部地域に被害が集中しています。これは、北部ではもともと土壌のアルカリ性が強く酸性雨が降っても中和されるのですが、南部の土壌はアルカリ性が弱いためだということがわかってきています。

今後の対策は?
現在、中国のSO2排出量が世界一であることからもわかるように、大気汚染・酸性雨問題はこれからもいっそう深刻化しつつあります。そのため、環境保護政策の重要な部分として「SO2制御区」および「酸性雨制御区」を設定し、汚染物質排出抑制・削減対策に積極的にとりくんでいます。

これらの制御区地域では、SO2を発生する装置に対して厳しい規制がかけられており、さらに北京市などの大都市では地方都市より厳しい大気環境規制も制定されています。

また、第10回5か年計画や2008年のオリンピックに開催決定も、環境保全の意識をさらに高めるきっかけになりました。

これまで中国の環境産業は、中央政府の産業政策によって中小企業を中心として発展してきた背景があります。そのため技術および企業規模の面でこれからもまだ発展の余地が大きく、酸性雨抑制政策に関連する脱硫装置や固定発生源の煙道排ガス連続モニタリング装置の分野もこの例外ではありません。

いまこそ日中企業間の協力時代を本格的に迎えるときだと私は考えています。日本の高い水準の環境技術をもって中国の環境保全をバックアップし、国際社会への貢献にもつなげられると思うのです。