蛍光燐光分光光度計 FluoroMax-4P

概要

蛍光分光光度計FluoroMax-4に燐光測定ユニットが一体化された「FluoroMax-4P」。

励起一重項状態からの蛍光の発光は通常励起後数ナノ秒以内に起こります。励起三重項への遷移は一重項への遷移に比べさらに抑制を受ける為、燐光の平均減衰時間はずっと長くなります。 時間領域はマイクロ秒から秒の範囲に及びます。

燐光の測定においては、ユーザー指定の遅延時間とサンプルリング時間に同期したパルス光源で励起されるリン光分光ユニットが、時間分解スペクトルデータを提供します。

遅延時間を適切に設定することにより、蛍光の妨害を受けることなく燐光スペクトルだけを得ることができます。時間の設定によっては測定対象の燐光が試料にとって関係のない物質からの強烈な蛍光に妨害されるので、遅延時間の設定は特に重要です。
また、時間分解測定ソフトは燐光減衰カーブを測定し、燐光寿命を求めることができます。

特長

蛍光測定モード(キセノンランプ設定)からリン光測定モード(キセノンフラッシュランプ設定)にソフトウェア上で簡単に切換えができます。
これによりさらに測定の幅が広がります。

FluoroMax-4とFluoroMax-4Pの機能比較

FluoroMax-4

FluoroMax-4P

励起光源(連続キセノンランプ)

励起側分光器

リファレンス検出器付きサンプル室

蛍光側分光器

検出器(PMT) 光子計数法

励起光源の自動切換えミラー

-

燐光用励起光源(パルスキセノンランプ)

-

燐光測定制御モジュール

-

測定原理

アプリケーション例

ペプチド(peptide)+ 燐光プローブ Tbの混合液の発光スペクトル

ペプチド(peptide)+ リン光プローブ Tbの混合液の発光スペクトル

励起波長285nm
遅延時間 0μsの場合(赤実線)
遅延時間 50μsの場合(青点線)
スリット幅 励起側/発光側ともに2nm(Bandpass)
363nm付近のペプチドの蛍光が消えて、486nmおよび540nmのTbの燐光だけが観察されます。

燐光の減衰カーブ

リン光の減衰カーブ

(a)ペプチド(peptide)+ リン光プローブ Tb混合液のみ
   (燐光寿命τ = 3.8ms)
(b)蛍光プローブ Fluoresceinを添加したPeptide+Tb 混合液(燐光寿命τ = 3.0ms)
積算時間0.45nm スリット幅 励起側/発光側ともに5nm(Bandpass)
励起波長280nm 発光波長 540nmで検出
Fluoresceinを混合液に加えることで、より早いリン光減衰が起こることから、ドナー Peptide+Tb からアクセプター Fluorescein へのエネルギー転移がおこっていることを確認できます。
リン光測定をおこなうことで、物質の物理的および化学的な特性を調べることができます。

3-Dプロット

3-Dプロット
Delay After Flashによる燐光減衰カーブを使って、3-Dグラフを作成できます。異なる時間遅延による連続的スキャンを示しています。

燐光寿命の違いを利用した混合物成分の分離

リン光寿命の違いを利用した混合物成分の分離1リン光寿命の違いを利用した混合物成分の分離2

寿命の違いに基づき異なるリン光成分を分離したいときにはDelay After Flashのパラメータを変えることで対応できます。グラフはテルビウム(Tb)とユーロピウム(Eu)の混合物を示しています。

アプリケーション

時間分解(Time-Gating)測定によるランタニドの発光スペクトルの分離

概論

分光学者らにとって、ランタニド(Ln)イオン特有のルミネセンス(luminescence)を検出することは長年の挑戦であった。 ルミネセンス測定において極めて低い吸収係数と発光量子効率を克服するために以下のような手段が用いられてきた。

  1. X−H基(X=O, N,・・・)由来の振動クエンチング効果を弱めるため、保護リガンドを利用
  2. 同様にX−H基による振動クエンチング効果を弱めるため、重水素で置換された溶剤を利用
  3. 吸収係数の高い集光型発色団(発色団に吸収されたエネルギーは後にランタニド(Ln)へ転移され発光に供される)を利用

これらの系からのルミネセンスは、クエンチングの程度にもよるが 約10-6〜10-3秒の典型的長い燐光寿命をもつシャープでかつ分解能の高いバンドから構成される。 燐光測定ユニットを備えたFluoroMax-4Pを用いれば、ランタニドを時間分解にて簡便に測定することができる。

本アプリケーションノートでは、ベンゾフェノン集光型発色団(L、下の図1参照)およびユーロピウム(Eu)イオンあるいはテルビウム(Tb)イオンとの結合錯体からなる2つのランタニド錯体の発光を、 FluoroMax-4Pを用いて時間分解(タイムゲートをかけて)分光測定した結果について記載する。

図1.ベンゾフェノン集光型発色団
図1.ベンゾフェノン集光型発色団

実験および結果

励起光源としてキセノンフラッシュランプ(パルス幅 〜約3μ秒)を使用した。 ランプがフラッシュした後の遅延時間(Delay Time)および検出開口幅(Detection Window Size)を一定にした条件でサンプルからの燐光発光スペクトルの測定をおこなった。発光が減衰する間、時間幅の設定を変えてスペクトルを測定することができる。 燐光発光寿命は、検出開口幅(Detection Window Size)をある条件に設定して遅延時間を長くとることで一定の励起波長および発光波長での発光減衰カーブをもとめ、その傾きから算出した(図2)。

リン光の時間分解測定の概要を示した図
図2.燐光の時間分解測定の概要を示した図

Tb-L錯体およびEu-L錯体の各スペクトルを図3および図4に示した。

Tb-L錯体
図3

Eu-L錯体
図4

Tb-LとEu-Lの混合体からの発光スペクトルは、遅延時間0.01msで、サンプリング開口幅10msで測定したとき、Tb-LおよびEu-Lの両方のスペクトルを重ねわせた形状となって示される(図5参照)。
スペクトルにタイムゲートかけて測定すれば、寿命の長さの違いから(Eu-Lの発光寿命は0.60ms程度、一方Tb-Lの発光寿命は1.1ms程度)、2つの化学種からの重なり合ったスペクトルを分離することができる。


図5

タイムゲートのパラメーターを慎重に設定することにより、2つの錯体の混合物から得られるスペクトルを、図6に示すように、初期に得られるスペクトル形状  (Tb-Lの混入を最小限にし、Eu-Lの混入を最大限とする。)と、後期に得られるスペクトル形状 (Eu-Lの影響を無視できる程度まで抑えほぼ純粋なTb-Lに近い)に分離することができる。


図6

時間分解のマトリックススキャンはスペクトルの時間依存性を示す。遅延時間を連続的に増やしながらスキャンを行うと、複数の発光スペクトルが得られる。これらの結果をX軸に発光強度、Y軸に波長、Z軸に遅延時間をとり3次元で表示した(図7参照)。


図7

結論

フラッシュランプを搭載した蛍光リン光分光光度計FluoroMax-4Pを用いれば、化学種の混合物からの発光スペクトルを時間分解(Time-gating)により分離して測定することができる。

蛍光分光光度計 FluoroMaxを用いた研究へのご提案

生体系サンプルを用いた蛍光測定

概要

生組織を用いた化学、生物学、物理学の研究では正確で迅速なデータ取りが何よりも求められていす。
通常の蛍光分光光度計では 繰り返しスキャンの平均スペクトルを求める方式が提案されます。しかしながら、複数回も強光下でスキャンを繰り返すと脆弱な生体サンプルは簡単にダメージをうけてしまいます。

高い再現性を有し 超高感度な蛍光分光光度計をもちいることで、生体サンプルからの高精度なデータの測定が実現できます。SPEXブランドの蛍光分光光度計を用いれば、DNAやタンパク質からイムノアッセイまで、またキネティック分析から製薬の分野まで、低濃度なサンプルでもより高感度な測定が約束されます。

蛍光分光光度計FluoroMaxを用いた最近のアメリカでの生化学アプリケーションの一例

  1. タンパク質、ペプチド および他生体分子の固有蛍光の測定
  2. バイオ活性表面の研究
  3. ウィルスアセンブリの研究
  4. 温度ダイナミクス タンパク質内部の構造変化の研究
  5. トリプトファン発光、偏光、時間分解の測定
  6. 酵素キネティックス (発光スキャン および時間依存スキャン)
  7. スクリーニングバイオアッセイ、イムノアッセイ、尿中の物質代謝
  8. 遺伝子病の変異体領域の構造解析
  9. 細胞内pH測定のためのリアルタイム時間ベースおよびマルチグループスキャン
  10. DNA 濃縮(Condensation)、ヌクレオチド合成、トリプレックスDNA、DNAのタンパク質への結合
  11. 血流測定
  12. 細胞内カルシウム測定 筋肉中のCa ATPアーゼ結合
  13. 蛍光偏光と酵素反応
  14. タンパク質‐リガンドの相互作用の偏光測定
  15. トランス細胞膜のポテンシャル、グリコリピッドの転移、In vivoにおける生体膜研究、バイレイヤーの摂動 さらにErythorocyte ghosts
  16. 遺伝子組み換え植物中のGFP(Green Fluorescent proteins)

蛍光分光光度計 FluoroMaxを用いた研究の成果

FluoroMaxを用いた研究の成果は、以下の著名な雑誌に発表されています。

  • Analytical Biochemistry
  • Biochemistry
  • Biochemica et Biophysica Acta
  • Journal of Biological Chemistry
  • Journal of Molecular Biology
  • Protein Science
  • Bioconjugate Biochemistry

参考文献については、蛍光分光光度計 参考文献一覧もあわせてご覧ください。

お問い合わせ先
株式会社 堀場製作所
東京セールスオフィス  TEL:03-6206-4717
大阪セールスオフィス  TEL:06-6390-8016


製造会社: HORIBA

仕様

燐光光度計FluoroMax-4P(燐光ユニット付加型モデル)は、以下の仕様で構成されます。

精度

32ビット パルスカウンティング

励起光源

UVキセノンフラッシュランプ

フラッシュレイト

0.05-33Hz

フラッシュ時間

3μs全幅半最大で低強度テール > 30μs

フラッシュ後ディレイ

50μs〜10s±1μs(1μsステップサイズで)

データポイント毎の
フラッシュ

1-999

サンプルウィンドウ

10μs〜10s±1μs(1μs ステップサイズで)

光学系

全反射型
微小サンプルでも全波長でフォーカシング可能でかつ正確なイメージングが可能

分散

4.25 nm/mm

分光器

標準で励起側にシングルモノクロメータ、発光側にシングルモノクロメータを配置
F値 3.5、刻線数 1200grv/mm キネマッティック ルールドグレーティングを配したツェルニーターナデザイン
分解能:0.3nm
最大スキャン速度:200nm/s
波長精度:±0.5nm
ステップサイズ:0.0625-100nm
範囲:0-950nm
グレーティング: 励起側 330nm
ブレーズ(220-600nm 光学範囲)
蛍光側 500nm
ブレーズ(290-850nm光学範囲)

サンプル室

はめ込み型の各種サンプル台アセンブリーに対応
(温度調整セル付きサンプル台、ガスパーチ用サンプルアクセサリー他に対応)

検出器

*200-980nm対応 励起リファレンス補正用フォトダイオード
*180-850nm対応 発光側検出器 光子計数モードで高感度なPMT(R928P)
高圧950V 発光強度 2 X 106 cps<1000cps(ダークノイズレベル)

感度

再蒸留、脱イオン水 (ICPグレード)水のラマンスキャン S/N2500:1 at 397nm、バンドパス 5nm、積算時間1s
450nmでのバックグラウンドノイズのFirst Standard Deviation300000cps

励起側シャッター

コンピュータ制御による開閉

積算時間

0.001-160s

スリット幅

コンピュータ制御による自動連続開閉可能。
バンドパス範囲 0〜30nm

装置寸法

幅82.6cm X 奥行48.3cm X 高さ26.7cm
重量34kg

サンプル室寸法

幅14.0cm X 奥行17.8cm X 高さ17.8cm
サンプル室は取り外し可能。

環境温度

15-30℃

最大湿度

75%

電気系

5A,100V(日本標準仕様), 50Hz

製品紹介ビデオ

FluoroMax-4?2:55?
FluoroMax-4?2:55?

お問い合わせ

価格は仕様により異なりますので、別途お見積もりいたします。「見積・資料・お問い合わせ」よりお申し込みください。

カスタマーサポートセンターでは、お電話でも製品の技術的なご質問や仕様のご相談を承ります。

株式会社 堀場製作所
カスタマーサポートセンター

フリーダイヤル 0120-37-6045
受付時間:
9:00~12:00/13:00~17:00
月曜日~金曜日(祝日をのぞく)

関連製品

蛍光分光光度計 FluoroMax-4

FluoroMax-4は、従来にない高感度と高速スキャンを両立した、実用性の高い蛍光分光光度計。世界のジョバンイボンの分光技術と、フォトンカウティング法により、検出器のノイズも除去。世界最高レベルのS...