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科学分析向け高性能回折格子

HORIBA Jobin Yvon SAS(現HORIBAフランス)において設計・製造されている高性能回折格子は、様々な科学研究の用途において重要な構成要素です。回折格子(グレーティング)は科学研究分野において、自然光、レーザ光またはシンクロトロン放射光の光源の分析、測定、調光に用いられます。ここでは、3つの主要な科学用途について、3つの異なる回折格子を種類別に説明します。すなわち、レーザパルス圧縮用回折格子、XUVシンクロトロン回折格子および、スペースフライト用回折格子です。

はじめに

HORIBA Jobin Yvon SAS(以下:HJY)の歴史は1819年に遡り、オーギュスタン・フレネル(Augustin FRESNEL)やフランソワ・アラゴ(François ARAGO)といった著名な物理学者達の共同研究から始まっています。当社はその黎明期から光学分野において卓越した高性能な製品を追求し、常に最先端の回折格子のトップイノベータであり続けています。1968年、HJYはホログラフィック回折格子を初めて実用化し、新たな科学実験および研究開発への扉を開きました。大型プロジェクトは、長い期間をかけ計画、準備、そして実行されます。重要な構成要素である回折格子の完成までには3〜4年かかる場合もあります。

レーザ工学分野では、HJYは1983年に行われたチャープパルス増幅法[1] CPA:Chirped Pulse Amplification)の実証実験に、初の大型金コート回折格子を提供しました。HJYのパルス圧縮用回折格子は、世界中のレーザ施設で研究を行う科学者の間で広く使われており、フェムト秒級の超短パルス(1フェムト秒=10-15秒)および非常に高いレーザ強度(ペタワット級=1015ワット:PW)、加えて最大1020 W/cm2に達する強度のレーザ生成を実現しています。このような超高レーザ強度は基礎研究の領域、例えば、高強度場の物理や、超短パルスの高エネルギー電子およびイオンの生成などで利用されています。HJYのパルス圧縮用回折格子を用いた超高強度レーザの主な用途の一つに、粒子の加速が挙げられます。レーザ・プラズマ相互作用を用いた超小型の粒子加速器の開発が研究者たちにより行われています。それらの小型加速器は、従来の加速器では、数百メートルの加速距離が必要でしたが、数センチの距離で非常に高いエネルギー(1 GeV=10億電子ボルト)を得ることを目標として研究が行われています。

シンクロトロン施設や極端紫外光(XUV)ビームラインでは、放射光の計測に超高性能の回折格子が必要となります。HJYのイオンエッチング法によるラメラー型ホログラフィック回折格子(Holographic ion-etched lamellargratings)は、迷光レベルが非常に低く、シンクロトロンやVUVから軟X線までの用途に最適です。格子が基材に完全に刻み込まれているため高い熱負荷に耐えられることから、これらの回折格子は、最新型のシンクロトロン放射光に十分に適合します。HJYがソレイユシンクロトロン(The Synchrotron SOLEIL)と共同で開発した画期的な技術の一つが、ここで紹介する溝深さ変化(VGD:Variable Groove Depth)回折格子です。

宇宙飛行ミッション

宇宙飛行ミッションにあっては、NASAやESAといった宇宙開発機構で、最も困難な実験用装置にたびたびHJY製品が選ばれています。

例えば、サイズ400×400mm ・溝本数6000 gr/mmの収差補正型回折格子をリーマン・ヒューズミッション(Lyman FUSE mission)に初めて提供しました。ハッブル望遠鏡には撮像分光器STIS(Space Telescope Imaging Spectrograph)が装備されていますが、その回折格子はHJY製です。ハッブル宇宙望遠鏡による新世代の科学探査を可能にする宇宙起源分光器(COS :Cosmic Origin Spectrograph)向けホログラフィック回折格子に関し、2000年にNASAから貴重な賞を授与されています。

NASA Jets推進研究所が2006年に開催した授賞式において、軌道上炭素観測衛星(OCO:the OrbitingCarbon Observatory)用の「卓越した」回折格子3種を納入したHJYの製作チームがその功績を讃えられました。OCO衛星のミッションは、人間活動が気候および地球温暖化に及ぼす影響を評価するための、大気中の高精度でのCO2含有量測定にあります。2009年から2011年にかけて、NASAの「木星赤外線オーロラマッピング装置(JIRAM:Jovian InfraRed Auroral Mapper)」、およびESAの「可視赤外線ハイパースペクトル撮像装置(VIHI:Visible Infrared Hyperspectral Imager)」という2つの大型プロジェクトから、HJYのグレーティングチームにとって大きな課題が与えられました。これらの大型プロジェクトに向けた回折格子は、これまで製作してきたものの中で最も難しく厳しい超高性能の回折格子の製造です。

レーザパルス圧縮用回折格子の用途

シンクロトロン用途向けXUV回折格子

スペースフライト用回折格子

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