粒子による光の散乱現象を測定原理とするレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960を,2013年に販売を開始した。この測定方式は,多くの粉粒体を一度に,短時間,非接触,高精度,高再現性で測定できるものである。また,濃厚スラリー,水可溶性粒子,凝集しやすい粒子,微量試料など様々な状態の試料に対応した測定用アクセサリーが用意されている。本装置の原理や構成,及び,アクセサリーの特徴についての解説を行う。また,装置性能については,実際の測定事例を交えて紹介する。更に,新製品として,小型でありながら,実用域で十分な測定範囲と精度を持つレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-350がラインナップしたので合わせて紹介する。

はじめに

Figure 1 Partica LA-960
Figure 1 Partica LA-960

各種の工業プロセスで取り扱う粉体粒子の大きさは,製品の機能性を特徴づける重要な要素である。レーザー回折/散乱式の粒子径分布測定装置は,セラミックスや顔料,電池材料,触媒,化粧品,食品,製薬など,幅広い分野で研究開発や品質管理の目的で使われている。粒子関連市場の動向に目を向けると,近年のナノテクノロジーの発展により,粒子微細化・複合化の技術は目覚しく進歩し,より微細な粒子の粒子径分布をより正確に測定する要求が高まっている。

Partica LA-960(Figure 1)は,光源に赤色レーザーダイオードと青色発光ダイオードを搭載することで,微小粒子の散乱光強度分布を正確に測ることが可能となる。特に1 μm以下の微細な粒子を高い再現性と高い測定精度での計測がユーザーに受け入れられている。また,セルの周りに配置された各検出器で検出した散乱光強度分布を計測する。この散乱光強度分布と,ミー散乱理論によって得られた理論的な散乱光強度分布の差が,最も小さくなるように粒子径分布を算出する。この演算方法は,非線形問題といわれ,解がいくつも存在するため,理論計算に加えて,弊社の長年の経験による演算パラメーターの最適化が重要となる[1]。また,多種多様な粉粒体を,特に,凝集力が強い粒子を1次粒子にまで分散させるためには,強力な超音波分散力が必要で,プローブタイプの超音波発振器を搭載している。

Figure 2  Partica  mini LA-350
Figure 2 Partica mini LA-350

本循環ユニットの遠心ポンプは,循環速度を15段階で強度を変えることができ,循環能力としては,例えば,粒子径3mm,比重6.0g/cm3の ジルコニアセラミックス球が循環できるだけの能力を持っている。また,エマルジョンなど泡立ちのある試料の場合は,循環強度を落とすことも可能である。こ のように粗大粒子や比重の大きな粒子から壊れやすい粒子まで,均一に分散させることが可能になる。さらに,比重が軽く,液面に浮遊しやすい粒子などは,液 面をかき混ぜる攪拌モーターで攪拌することができる構造である。しかし,分散やサンプリングが困難な試料に関しては,アクセサリーやオプションが用意され ており,目的に応じた測定が可能となっている。これらアクセサリーの特徴や対象アプリケーションと測定結果を合わせて紹介する。

近日,Partica LA-960の性能を踏襲しながら,装置の設置面積を1/3を実現したPartica mini LA-350(Figure 2)をラインアップとして加えた。本装置は,測定範囲を実用領域に絞り込むことで,光学系をコンパクトに設計して,小型化を実現したものである。小型なが らも循環系の性能や演算処理系の性能は,LA-960並みの性能を持ち,実用上高い性能を持った製品となっている。

測定原理

レーザー回折/散乱法[2]は,粒子径に応じて変化する散乱光強度の角度パターンを利用し,粒子径を求める測定法である。一定波長の入射光が,単一球状粒子に照射されると,散乱光強度の角度パターンは入射波長に対する粒子径の相対的な大きさによって変化する。粒子が10 μm程度以上の大きさでは,回折現象が支配的となり,散乱光は,入射光の透過方向である前方方向に集中し,回折光強度の角度パターンは粒子径のみの関数となる。

粒子径が10μm程度以下の粒子径になると,散乱光強度の角度パターンは粒子相対屈折率により敏感に変化するミー散乱となる。散乱光は前方だけでなく,側方から後方まで広い角度範囲で検出される。粒子径がさらに小さくなり,波長の1/10程度以下になると,粒子径が変化しても散乱光強度の角度パターンの変化は僅かになる。この散乱挙動はレイリー散乱として理解される。

散乱光強度の角度パターンからの粒子径の識別は困難となり,原理上の測定下限となる。回折やレイリー散乱は散乱現象を取り扱うものであり,ミー散乱理論を用いて散乱現象を取り扱うことで広範囲の粒子径をより高精度に解析することができ,LA-960では,このミー散乱理論を計算に使用している。粒子の周囲に多数配置した光検出器で実際に発生した散乱光強度の角度パターンを測定し,ミー散乱理論から求められる理論的な散乱光強度の角度パターンと比較計算することで,粒子径や粒子径分布を解析するものである。

装置概要(Partica LA-960)

Partica LA-960の特徴について紹介する。

光学系

Figure 3 LA-960 optical system
Figure 3 LA-960 optical system

光学系の構成図をFigure 3に示す。赤色(波長650 nm)半導体レーザーからの光がフローセル内を循環している試料粒子に入射すると,回折光は,前方のリングデテクターに,散乱光は,セルの周りに配置された光検出器で検出する。
また,微小粒子径の測定を可能にするために,レーザーより波長の短い青色(波長405 nm)発光ダイオード(LED)が用いられ,広域測定が一度にできる工夫がされている。

Figure 4に,直径50 nm粒子と直径70 nm粒子の散乱光強度の角度パターンを示した。レーザーの波長が650 nmの場合と405 nmの場合を比較すると,明らかに,405 nmの場合の散乱光強度の角度パターンで,両粒子径間で差が現れている。このように,短波長の光源を使用することで,小粒子径計測を可能にしていることがわかる。

Figure 4 Changes in scattering patterns from microscopic particle diameters
Figure 4 Changes in scattering patterns from microscopic particle diameters

循環系

Figure 5 LA-960 circulation system
Figure 5 LA-960 circulation system

循環系の構成図をFigure 5に示す。システム分析前処理部からセル部に試料を偏析なく送り込み,停滞や付着を起こさない循環ポンプ,粒子を完全に排出させる排水弁,試料に応じた最適な分散処理を行う超音波プローブ,液量を最適化する液面センサーを搭載している。分散媒容量は最少180ml,最大280 mlの範囲で調整が可能である。さらに,試料を溶媒に分散させ,測定し,洗浄するまでの全ての処理を60秒で完結させる高速処理を実現している。

ソフトウェア

Figure 6は,測定画面であり,

  1. 左側に赤色レーザーと青色発光ダイオードでの試料の濃度を確認するための透過率バーの表示
  2. グラフ左側に各検出器の散乱光強度
  3. グラフ右側に簡易的に算出された粒子径分布

がリアルタイムで表示される。このリアルタイム表示を確認すれば,測定を最適な分散状態で開始され,粒子凝集や気泡混入の有無などが本画面上で確認することが可能になる。もし,凝集,気泡混入が確認されれば,超音波分散処理や空気抜き処理のシーケンスを実行して分散状態を最適化することになる。

Figure 7は,測定結果画面である。粒子径分布表示は,グラフ形態,積算分布表示など,オペレーター任意の表示が可能である。測定条件と測定結果の情報は上部に表示される。拡張機能として,測定結果を様々な方法で解析するためのツール,例えば,散乱光解析,検出器出力確認,分布ピーク分離ツール,などが準備されている。これらの機能を有効活用することで多様な解析が可能である。

Figure 6 Measurement window
Figure 6 Measurement window
Figure 7 Measurement result window
Figure 7 Measurement result window

測定精度

ナノ粒子の散乱光は,360°全方向に広がり,強度も弱く検出が難しい領域である。平均径が20 nmという微小な粒子から5000 μmまでのレンジを正確に検出するため,NISTトレーサブル標準粒子を使って校正・出荷検査を行い,8種類のサイズについて±0.6%の精度保証をしている。また,分布幅のある標準試料を用いて,ISO13320に準じた規格管理を行い,信頼の高精度と再現性を実現している。

各種アクセサリー

さまざまな測定ニーズに対応するため各種アクセサリー(Figure 8),左から乾式測定ユニット,ミニフロー,バッチセルユニット,ペーストセルユニット,オートサンプラーなどがある。

Figure 8 Accessories
Figure 8 Accessories

乾式測定ユニット

顔料,食品,医療品,砂など,乾燥した粉末試料の粒子径分布を評価するために使用する。溶媒に分散させる必要がなく,粉末状態の大きさと分布幅を瞬時に測定が可能である。
圧縮空気によって分散された試料は,ダイレクトにセルに入り込み,空気の流れに従って吸引器へと送られるため,試料が再凝集したり,分離したりするロスが抑えられる。
また,安定した測定を行うため,

  1. 試料の供給量を自動的に制御して,透過率範囲を制限してデータを取り込む機能
  2. 試料がセルに届き,散乱光信号が得られた瞬間から測定を開始するトリガー測定機能

などが搭載されている。また,試料の量や粘性に合わせて交換ができる各種シューターが用意されている。

ミニフロー

有機溶媒対応で,試料の分散媒量が最少35 mlでフロー式測定が可能で,分析に用いる試料量,分散媒量が節約できる。循環系に超音波プローブを内蔵し,試料を循環させながら分散処理を行うことが可 能である。最適なアプリケーション例としては,

  1. 顔料や塗料材料,インクなど有機溶媒に分散された製品
  2. 燃料,潤滑油などオイル系溶媒に分散している試料
  3. 医 薬品や電池材料など特殊な調整溶媒に分散する試料       などが挙げられる。

バッチセルユニット

ミニフローよりも,さらに超微量試料測定や試料を全量回収する場合,分散媒を最小限に節約が可能になり,最少容量は5 mlから測定可能である。最適なアプリケーション例としては,

  1. 貴金属や医薬品などの測定後に全量回収が必要な希少試料
  2. 揮発性の高い溶媒を用いる試料
  3. 温度調整が必 要な食品や生体系材料      などである。

ペーストセルユニット

高濃度試料を希釈せずにサンプリングし,高粘度溶媒に分散された試料をそのままの状態でセル板に挟み込んで測定するもので,磁性を持つ粉末も高粘度オイル に分散させて,再凝集を防いで測定するためのものである。本アクセサリーには,高濃度であり高粘度の試料をセル板間に均一に伸ばすためのセルや,高濃度で あるが低粘度の試料をセル板間の隙間に注入するタイプのセルが用意されている。インク顔料や樹脂中の添加粒子,スラリ状マテリアルなど幅広い分野の計測 ニーズに受け入れられている。

オートサンプラー

取り外し可能なサンプルカップを24個搭載した回転テーブル式の自動試料投入システムである。試料カップ内を洗浄し,全量を分散バスへ投入する仕組 みを装着している。最適なアプリケーション例としては,

  1. セラミックスや電子材料の生産ライン管理
  2. コンデンサ材料の生産品質管理
  3. 触媒生産工場における各拠点 の生産品質管理      などである。
Figure 9 30, 40, 50 and 70 nm polystyrene latexes?NIST Standard?
Figure 9 30, 40, 50 and 70 nm polystyrene latexes?NIST Standard?

 測定結果例