ラマンイメージングアプリケーション例

Figure 5 Hyper cube raman spectral data set
Figure 5 Hyper cube raman spectral data set

ラマンイメージングの例として,ラマンバンドピークの強度から測定領域に含まれる化学成分の分布を示すイメージの作成方法を述べる。試料面内に複数の化学成分が存在したとき,それぞれ異なる互いに重ならないピークを指定することによりその強度を使って各成分の分布をイメージにする。しかし,薬品結晶のようにピークが非常に多く,各成分に対して互いに独立なピークを見つけ出すことが困難な場合もある。また,後述するマッピング測定の高速化に伴い1ピクセル当たりのデータ採取時間がmsecオーダーになると,ノイズが大きくなりイメージが劣化する。このため,最近では,多変量解析によるラマンスペクトラルイメージングの技法がよく用いられるようになってきた。データ処理には,試料走査方向に対応するX軸,Y軸に加え,スペクトル横軸の次元をZ軸にとった3次元のハイパーキューブ・データを取り扱う(Figure 5)。

これらのデータセットから,互いに独立なスペクトル成分を多変量解析の手法によりモデルスペクトルとして抽出し,測定したポイントごとに各モデルスペクトルの寄与度を計算し,その寄与度の大きさを使ってラマンイメージングを作成する。目視でピークを選択する従来の方法と比較し,よりわずかな差を識別して各成分のイメージを作成することができる。スペクトルのS/N比は,イメージの質(コントラスト)に直接影響を与える。なぜなら,スペクトルの差異によってイメージが作成されるからである。

Figure 6に1ピクセル当たりの測定時間を変えて測定したアセトアミノフェン結晶のイメージの変化を示す。測定時間をかけてより高いS/N比のスペクトルを測定したほうが,より明瞭なイメージを得ることができる。

Figure 6 Raman image of acetoaminophen in various sampling time. Time of data sampling for each pixel is shown in figure
Figure 6 Raman image of acetoaminophen in various sampling time. Time of data sampling for each pixel is shown in figure
Figure 7 Effect of spectral resolution on Raman imaging Spectra?a?and?b?correspond to Raman image?c?and?d?, respectively.
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一方,スペクトル分解能も重要で,いくら高いS/N比で測定してもスペクトル分解能が低すぎて本来のスペクトル波形の情報が失われてしまうとその成分のイメージを作成することができなくなる。一般にラマン分光のスペクトルは高いスペクトル分解能を必要とすることが多い。Figure 7に示すスペクトルでは,中央1600〜1630 cm-1のピークは,高スペクトル分解能の場合(a)では明らかに3つのピークが存在するが,低スペクトル分解能(b)ではショルダーのピークの情報が失われてしまっている。同条件で測定したラマンマッピング測定の結果からは,高スペクトル分解能の場合は4つの成分の分布をイメージ化することができるのに対して,低スペクトル分解能では3成分までしかイメージ化することができなかった。高スペクトル分解能条件下でのラマンイメージ(c)は,低スペクトル分解能の場合(d)と比較してより詳細な構造がイメージ化されている様子がわかる。ラマン分光の場合には,散乱光の強度は測定対象物質が変わると1桁以上変化する。それゆえ,マッピング測定時間は,結局は試料によって決まることになる。仮に通常のスペクトル測定に1 秒の測定時間を要する試料を,測定時間100秒をかけて100点のマピングをしていたとする。新しく高速マッピングシステムを導入し,10000点の高精細マッピングで測定するときの目安は,全測定時間が100秒になるように1ポイント当たりのデータ採取時間を10 msecにするとよい。

共焦点ラマン分光測定の場合は,深さ方向の分解能を生かし特定の深さのラマンイメージを測定することができる。それゆえ,試料前処理で薄膜化しなくても,バルク試料をそのまま測定することで表面の成分分布を観察することができる。成分が3次元的に分布しているブレンドポリマーの場合でも,上下の成分が重ならず高いコントラストの表面イメージを作成できるのはこのためである。Figure 8に深さ方向の焦点位置を変えて測定した例としてフィルム中のポリスチレンビーズの3Dラマンイメージを示す。以
上,ピークの強度によるスペクトラル・イメージングについて説明したが,他にも,半値幅,ピークシフト量など,スペクトルに含まれる情報を使って,様々な情報に対する空間的な分布をイメージとして作成することができる。

Figure 9に,ラマンバンド強度,ピークシフト,半値幅,そして,同時に観測されたフォトルミネッセンス(PL)によるダイヤモンドのラマンイメージングの例を示す。

Figure 8 3D confocal Raman imaging 3D image?c?is reconstructed with 2D Raman images?a? for the region shown in optical image?b?
Figure 8 3D confocal Raman imaging 3D image?c?is reconstructed with 2D Raman images?a? for the region shown in optical image?b?

Figure 9 Raman images of diamond?Data Courtesy of M. Mermoux,
Figure 9 Raman images of diamond?Data Courtesy of M. Mermoux,

 HORIBAのラマンイメージング