3. 分光エリプソメーター


3.1 分光エリプソメーターの構成

分光エリプソメーターは幅広い波長範囲を測定するため、光源にはキセノンランプやハロゲンランプなどの白色光源を使用します。そこから出た光が偏光子を通ってサンプルに照射し、サンプルから返ってきた光は検光子を通ってモノクロメータやCCD分光器といった分光器で分光され、光電子増倍管(Photomultiplier tube: PMT)またはフォトダイオード(Photodiode)、CCDといった検出器で検出します。これによりΨ(λ)とΔ(λ)が測定されます。

図14:分光エリプソメーターの構成(写真はUVISEL Plus)

3.2 分光エリプソメーターの方式

分光エリプソメーターにはいくつかの方式があり、大きく分けて素子を機械的に回転させて偏光状態を測定する方式(回転検光子型、回転補償子型)と、電気的に変調をかけて偏光状態を測定する方式(位相変調型、液晶変調型)の2つのタイプがあります。

(a) 回転検光子型分光エリプソメーター

検光子を機械的に回転させて偏光状態を測定する方法です。装置の構成が簡単という特徴があります。一方でcosΔしか検出できずΔ=0°付近の精度が悪いため、ガラス基板上の薄い透明膜の測定が難しくなります。

(b) 回転補償子型分光エリプソメーター

サンプルと検光子(または偏光子)の間に補償子を導入し、それを回転させて偏光状態を測定する方法です。ΨΔの全領域(0̊≦Ψ≦180̊, 0̊≦Δ≦360̊)を一度で測定することができます。一方で、装置構成が複雑になるという短所があります。

(c) 位相変調型分光エリプソメーター(HORIBAの UVISEL2およびUVISEL Plusで採用)

光弾性変調器を使って、偏光状態を測定する方法です。cosΔとsinΔの両方を測定できること、さらに機械的な動作が無くデータの再現性がよいという特徴があります。次の項目で詳細を説明いたします。

(d) 液晶変調型分光エリプソメーター(HORIBAのAuto SEおよびSmart SEで採用)

入射側と受光側に液晶素子を導入し、それにより偏光状態を測定する方法です。ΨΔの全領域(0̊≦Ψ≦180̊, 0̊≦Δ≦360̊)、さらにサンプルの偏光状態を表すミューラー行列の全てのパラメータを、一度で測定することができます。


3.3 位相変調方式

HORIBAの分光エリプソメーターUVISELシリーズは、位相変調方式を採用しています。概要を図15に示します。位相変調方式は石英にピエゾ素子を貼り付けた光弾性変調器(PEM)を使用しており、このピエゾ素子に交流電圧をかけて50KHzで振動させることで歪みが起こり、ピエゾ素子に周期的に複屈折が生じます。これに光が透過すると、複屈折によりp, s二つの成分で位相差が生じ、楕円偏光となります。

 

 

図15:位相変調方式

PEMから検出された信号は以下の式で表せます。

 

 

I(t) = I[I0 + Issinδ(t) + Iccosδ(t)]             (24)

 

ここで装置構成によりIs, IcはΨΔと以下の関係を持ちます。

 

 

I0 = 1                             (25)

Is = sin2Ψ × sinΔ         (26)

Ic = sin2Ψ × cosΔ        (27)

 

位相変調方式はcosΔに加えてsinΔも検出しています。cosΔとsinΔのそれぞれのΔが0度付近の変化をみると、cosΔの場合、cos0°=1.0000, cos1°=0.9998, cos2°=0.9993と変化が小さいに対し、sinΔの場合、sin0°=0.0000, sin1°=0.0175, sin2°=0.0349と変化が大きくなり、感度が非常によくなります。これより特に透明基板の上の透明膜の測定において、膜厚が数nmと非常に薄くても測定することが可能になります。

 

 

4. 分光エリプソメトリーでわかること