要旨

ジョバンイボン社(JY)は,回折格子(グレーティング)の開発・生産で世界をリードする利点を活かして,シンクロトロン放射光研究施設向けに,最も革新的な真空紫外用(VUV)モノクロメータを開発した。このモノクロメータは,究極のグレーティング技術と超精密な真空工学を組み合わせたもので,既にいくつかのシンクロトロンセンターに設置され,優れた性能を発揮している。また,現在開発が進められている新しい小型VUV光源と周辺機器の開発には,小型のVUVモノクロメータが不可欠である。本稿では,JYの各種VUV用グレーティング,モノクロメータ,分光器に合わせ,極紫外線リソグラフィやX線光電子分光などの用途を目指して開発を進めている小型のモノクロメータについても紹介する。

1. はじめに

1970年代半ば,ジョバンイボン社(JY)は収差補正型トロイダル・ホログラフィック・グレーティングを開発した。これにより,真空紫外線領域(VUV)における分光性能は目覚ましく進歩し,真空紫外用(VUV)モノクロメータに新たな市場が開けた[1]
80年代には,トロイダル・グレーティング・モノクロメータ(TGM)と関連デバイスが世界的に大成功を収めた。当時シンクロトロン放射光施設のVUVビームラインのほとんどに,このモノクロメータが搭載された。

現在も最新のビームラインで同様のものが開発されており,2001年から2002年にかけてイギリスDaresburyのシンクロトロン放射光施設に設置されている(図1)。このモノクロメータはJYが保有する真空機械システムの能力を示す好例の一つで,ゴニオメータは角度走査分解能を0.4 ″(arcsec)に保持したまま,最大3つのグレーティング(300 × 80 mm2)を交換できるように約100kgの重量になっている。

図1 イギリスDaresburyに設置されたトロイダル・グレーティング・モノクロメータ
図1 イギリスDaresburyに設置されたトロイダル・グレーティング・モノクロメータ

 

TGMと関連デバイスの開発に続けて,JYではシンクロトロンの研究者たちと共同研究でモノクロメータの開発・製造を続けた。特に,ここ10年間はシンクロトロン光源の大出力に対応するために,莫大な研究開発が必要となった。これが,フランスの放射光施設(LURE)の科学者たちと協力して,新しいシミュレーションソフト及びオプトメカニカルな解決法を開発しようとした理由である。

シンクロトロン光は,明るい連続スペクトルを持っており,1~100 nmの真空紫外線を必要とするような実験に使われる。しかし,シンクロトロンは大規模で高価なため,これが普及を妨げる一因でもあった。今日では,キャピラリ放電やレーザ誘起プラズマなどの新しい小型光源が開発され,シンクロトロン放射光よりはるかに簡略な装置を使って,VUV領域の実験が卓上で可能になってきた。JYのVUVグループでは,この成長市場に向けて小型モノクロメータ及び分光器をラインナップしている。それらの具体的な応用例を本稿の後半で紹介する。