JYでは,モノクロメータの分解能とエネルギー密度を高め,髙調波を最小にするために,シンクロトロンセンターと共同で新しいデバイスやモノクロメータの研究開発に力を注いでいる。第3世代のシンクロトロン光源は輝度が高いため,冷却光学素子,高分解能モノクロメータ,安定な機構など専用の機器が必要になってきた。
90年代中頃には,フランスの放射光施設LUREの光学グループと共同で,第3世代のシンクロトロン用の新しいビームライン及びコンポーネントの研究開発プロジェクトをスタートさせた。本プロジェクトでは,まずグレーティングとビームラインの最適化とシュミレーションを行う,次のような3種類の専用ソフトを開発した。これにより,プロジェクトが決定次第,全面的に研究を開始できるようになった。

(1)回折効率の計算

モノクロメータの心臓部であるグレーティングの回折効率と高調波の遮断の最適化がまず必要となる。これらはJY製のソフトで計算できる。このソフトは電磁気学を土台にしたもので,市販のソフトでは対応できないような特殊な真空紫外用の構造でも,溝深さ(c/d)のようなグレーティングパラメータを定義できる最適化アルゴリズムを持っている。

(2)ホログラフィ・パラメータの計算

VUVモノクロメータでは,波長に応じて溝の間隔を変えた グレーティング(Variable Line Spacing Grating:VLS)を用いて収差を補正するものがあり,このグレーティングの溝の間隔は多項関数で与えられる。
JYは,2つの球面波面の干渉により得られる不均一な溝密度のグレーティングを用いて収差を補正するTGMにおいて,似た手法を1975年に提案している。TGMの場合と同様,VLS用グレーティングの密度は,2つの波面の干渉により得ることができる。これにより,ゴーストがなく迷光の少ないホログラフィック・グレーティングが得られた。VLSを形成するためのホログラフィ・パターニング条件の設定や最適化は,JYが開発したソフト[2]で実行可能である。このソフトは,平面状,球面状,あるいは非球面状のレーザ波面により作り出される干渉条件を算出する。

(3)ビーム光の光線追跡と最適化

斜入射の光学系用としてJYが特別に開発したソフトを用いると,アンジュレータ,ウィグラ,偏向磁石などの光源周辺から実験チャンバまで,VUV光ビーム全体に渡る光線追跡が可能である。光学表面の傾斜誤差や表面粗さを考慮して,計測機器やビームラインの特性をチェックすることができ,また,メリット関数の最小化による最適化も可能である。