PI対応マスフローモジュール

2019年6月20日

高橋 明人(執筆)/ カテゴリ:テクノロジー


【はじめに SEC-Z700 Series】

半導体製造プロセスの進化に伴い,ガス供給系パーツには高度なプロセスコントロール,再現性,多機能,高性能と同時に,更なるコストダウンなどが求められている。ガスの流量制御をおこなうデバイスとしては,一般的にマスフローコントローラ(MFC)が用いられている。高機能,多機能化への対応として,MFCにCPUを搭載したデジタルMFCの採用が増加している。堀場エステックでは1990年に世界初のデジタルMFC:SEC-F1 Seriesの製品化に成功した。デジタル化により流量制御精度の向上,特性が異なるガスの流量を1台のMFCで制御できるマルチガス機能,全制御範囲における高速応答など機能の向上が容易になった。これまでの半導体製造装置のガスラインにおいては,圧力変動によりMFCのクロストーク現象が発生しやすいため,ラインレギュレータ,圧力センサ,フィルタが取り付けられている。今回新たに開発したSEC-Z700Xシリーズはこれまで実績のあるサーマルマスフローコントローラをプラットホームとし,課題とされていた圧力変動による影響を受けにくく,常に安定した流量制御を実現した機種である。マスフローモジュール本体の上面には流量出力だけでなく,温度,圧力が表示可能なマルチディスプレイを採用している。アプリケーションソフトとしては,流量制御状態を監視自動保存して,より高度な不具合予知や原因解析が行えるソフトや,ガス種,フルスケール流量値が容易に変更できるソフトなどをラインアップしている。

 

【全流量域に対する高速応答化:連続最適化PID】

一般的なMFCは,フルスケール流量付近では1秒以下の高速応答を実現できているが,低流量域では数秒の応答速度となり,設定される流量によってライン毎に応答のばらつきが生じることがある。SEC-Z700X Seriesは設定流量の全域において,高速応答性能でありライン毎の応答のばらつきを解消している。MFCは流量制御回路にPIDによるクローズドループの制御になっている。一般的なMFCはPID係数が一つもしくは設定流量にゾーンを設けそのゾーン毎にPID係数を持たせていた。この方法では特定の流量設定値での高速応答化は行えるが,全設定流量に対しての高速応答(1秒以下)の実現は難しい。SEC-Z700X Seriesに採用した連続最適化PID制御は,制御したい流量値とガス物性値に合わせてPIDを連続変化させることにより応答性能の大幅な向上を実現している。ガス種,フルスケールを変更した場合でも高速応答性能を維持している。この性能はマルチレンジ,マルチガス対応にはなくてはならない重要なファクタである。

 

【圧力影響,制御性の向上:Variable Control Mode】

半導体の製造に用いられる各種ガス等を装置に供給する場合は,それらの各供給流路にMFCを設け,これによってガス流量を調節するようにしている。各MFCに圧力レギュレータを直列に接続し,各MFCの流路内圧力に極端な変動が生じないようにして,流量制御の安定性を向上させている。ところが近年では,ボンベ等の流体供給源にのみレギュレータを設け,そこから分岐させた各供給流路には,それぞれMFCを設けるものの,レギュレータは個別には設けないシステム構成も増加してきている。従来のMFCでは一次側の圧力にある一定以上の変動が生じると,それに過敏に反応して規定以上の流量変動が生じてしまう。今回,新たに開発したVariable Control Mode機能はPID制御定数を切り替えることにより流量設定値の変化に対する応答速度を犠牲にすることなく,圧力変動等の外乱が生じても流量変動を抑制できるため,レギュレータが設置されていないようなシステムにも採用できるMFCを提供することが可能となった。Figure 1に1次側圧力変動に対するMFCの挙動を示す。


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