[報道発表] 掲載内容は発表日時点の情報です。

テオフィリンの血中濃度モニタリング装置「LT−110」を開発

2000年9月11日


当社は、喘息治療薬として最も広く使用されているテオフィリンの血中濃度モニタリング装置「自動テオフィリン測定装置LT−110」を開発しました。本装置は三菱化学株式会社(本社 東京都千代田区、社長・正野 寛治)と共同開発し、同社から提供される専用測定試薬を組み合わせて、9月13日に発売します。喘息治療の際、テオフィリンの血中濃度を測定することは、患者ごとに適した投与設計ができ、有効性を最大限に引き出すとともに、副作用の予防にもつながります。患者に合わせて、薬の種類や使い方を選ぶテーラーメード医療に貢献する製品です。
 徐放性テオフィリン薬の「テオドール」をはじめ、抗アレルギー薬の「アレギサール」など喘息治療薬のリーディングカンパニーである三菱東京製薬株式会社(本社 東京都中央区、社長・冨澤 龍一)および「テオドール」の販売元である日研化学株式会社(本社 東京都中央区、社長・坂本 孟朗)と情報を共有すること並びにマーケットリサーチにITを導入することが大きな特徴です。
 また、「テオドール」、「テオドリップ」などテオフィリン薬は喘息以外にも、慢性閉塞性肺疾患(COPD:慢性気管支炎、肺気腫)という、高齢者に多い疾患にも広く使用されております。一般に高齢者は通常の成人と薬物の代謝に差があり、薬剤投与では注意する必要があります。本血中濃度モニタリング装置「自動テオフィリン測定装置 LT−110」は高齢者においても最適な投与設計に貢献します。

本新製品は、9月13日〜15日、パシフィコ横浜で開催の「日本臨床検査自動化学会」にメイン製品として出品します。

−本製品の概要−
本製品は、喘息治療薬であるテオフィリンの血中濃度を測定することにより、患者ごとのきめ細かな投与設計に役立ちます。さらに、血中濃度を測定することは有効性を最大限に引き出すとともに、副作用の予防にも効果的です。本製品は、測定に用いる診断薬のアプリケーションを、三菱化学(株)と共同で開発し、同社から供給される専用測定試薬を組み合わせて販売します。

また、本製品は、小型で操作性が簡便なことに加え、全血測定を可能とし検体前処理が必要ないため、採血後の迅速な測定が可能という特長を有し、診察室、検査部の大型専用機バックアップ、緊急検査室、救命救急部、薬剤部等、大規模病院から喘息専門医院まで広い範囲の使用が期待できます。


−販売形態−
本製品の販売形態の特徴は、国内市場においてテオフィリン薬のトップシェア商品「テオドール」の製造元:三菱東京製薬株式会社および販売元:日研化学株式会社と、測定装置を製造販売する当社が協力し、ITを使って情報を共有することです。
具体的には、日研化学(株)MR(医薬情報担当者)は医療従事者に「テオドール」、「テオドリップ」の適正使用推進の一環としてテオフィリン血中濃度測定に関わる情報を医療関係者に提供し、その際収集された情報を当社とITを通して共有します。当社のMRまたは代理店は、同社から得られた情報をもとに、検査装置の詳しい説明を行い販売につなげることで、医薬品の適正使用推進と検査装置販売の相乗効果が期待できます。現在、当社ではネット上で情報共有システムを構築中であり、今秋から本格的に稼動の予定です。医療現場の情報を医薬品メーカーと共有化し、医療のニーズに合わせた情報を迅速に提供するシステムです。

当社の今後の医用製品の販売展開として、医療と検査の関係を重視し、治療に効果的な検査項目を搭載した製品を投入するべく、ITを活用したシステムを通して医薬品メーカーと連携を高めていき、これから増加するであろうテーラメード医療に貢献していく考えです。

<主な特長>

  1. 4μLと微量で測定可能。
    耳たぶからの微量の採血でも検査可能。喘息患者の約2割を占める小児に対しても安心して検査できます。また、全血測定対象のため、血清分離など前処理不要で扱いやすい装置です。
  2. 設置場所を選ばない、コンパクトサイズ。289(W)×410(D)×415(H)mm
    診療所や病棟など設置が簡単。喘息発作時の緊急検査にも対応。


<標準価格> 本体288万円

<販売目標台数>初年度 200台、次年度300台
(次年度より、ITによる販売効果を見込む)
<主な仕様>
測定項目: テオフィリン
測定検体: 全血、血清、血漿
測定時間: 9分以内
測定範囲: 0〜30 μg/mL
測定原理: ラテックス凝集阻止法
寸法: 289(W)×410(D)×415(H)mm
質量: 18kg

参考資料

<御参考>

  • ラテックス凝集阻止法
    検体(抗原)とモノクローナル抗体と反応させると、検体中の抗原は免疫複合体を形成します。同時に、この免疫複合体と抗原感作ラテックスを反応させると、検体中の抗原と抗原感作ラテックスが競合的にモノクローナル抗体と結合するため、抗原濃度に比例してラテックス凝集反応が阻害されます。この凝集反応過程の濁度変化を計測し、抗原濃度を求めます。
  • テオフィリン
    喘息の治療において、古くから用いられている医薬品。気管支拡張作用および抗炎症作用に優れており喘息発作の予防や発作時の緊急投与、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)に用いられる。その血中濃度と効果は相関しており、ある一定の血中濃度を維持することにより喘息発作を抑えることができる。しかし、血中濃度が下がってくると、発作が起きやすくなる。テオフィリンは、この有効血中濃度の範囲が広くないため、投与にあたっては血中濃度測定が好ましい。血中濃度が高くなりすぎた場合、副作用(頭痛、動悸、胃部不快感など)の出現もありえる。特に喘息発作の予防法(RTC療法)では、1日中一定の有効血中濃度に保つことが最も重要になるため、血中濃度測定の適応となる。
  • テーラーメード医療
    患者一人ひとりの体質に合わせて、薬の種類や使い方を選ぶ医療。
    薬剤による治療については、個々人によって効果がみられなかったり、副作用が出たりすることが問題になっている。厚生省では、患者の体質や症状を事前に検査して最適の治療を決めることができる指針を策定することで、きめ細やかな医療を目指している。
  • 薬物血中濃度モニタリング
    薬物には、治療に有効な濃度と副作用の発現しやすい濃度の幅が近接しているものがある。検査装置で薬物の血中濃度を測定することで、患者ごとに適した投与量・投与間隔・投与経路の設定と変更が可能になり、臨床効果と安全性両面から効果的な治療が行なえる。
  • RTC(Round The Clock)療法
    テオフィリンを使った喘息発作の予防法。毎日、徐放性テオフィリン薬を内服し、1日中一定の有効血中濃度に保つことで、喘息の発作を予防する。
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
    慢性気管支炎、肺気腫といった慢性的に呼吸困難を引き起こす高齢者疾患。最大の原因は喫煙である。

    <企業紹介>

    • 三菱化学株式会社
      〒100−0005 東京都千代田区丸の内2−5−2 三菱ビル TEL03−3283−6254
      1994年10月、三菱化成㈱と三菱油化㈱が合併して誕生した、我が国最大の総合化学企業。グループ企業を含めた事業範囲は、医薬品、診断薬から、石油化学、石炭化学、農業関連、情報・電子、食品関連、樹脂加工品等まで、多岐にわたる。
      設立:1950年  資本金:1,450億円  売上高:8,415億円  従業員数:8,775名
    • 日研化学株式会社
      〒104−8448 東京都中央区築地5−4−14 TEL03−3544−8701
      医家向け専門の医薬品メーカー。喘息治療薬が主力で、国内市場においてテオフィリン製剤のトップシェア商品「テオドール」を持つ。ノンカロリー甘味料などの化成品も手掛ける。
      設立:1947年  資本金:67億円  売上高:594億円  従業員数:1,238名
    • 三菱東京製薬株式会社
      〒103−8405 東京都中央区日本橋本町2−2−6 TEL03−3241−7905
      1999年10月、三菱化学㈱と東京田辺製薬㈱が合併し、両社の医薬部門が統合されて誕生。「テオドール」「アレギサール」等呼吸器系の他、循環器系、消化器系、外用剤等各種医療用医薬品、「サロメチール」等一般用医薬品その他で幅広い分野にわたる医薬品等を扱っている。研究開発にも注力し、開発中の新薬も豊富。
      設立:1999年 資本金:150億円  売上高:424億円  従業員数:2,300名
      (売上高は平成11年10月設立のため、下半期分である。)