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世界初 MEMS技術で血液分析用の平面状センサ開発

2001年6月 8日


当社は豊橋技術科学大学と共同で世界で初めて血液中の赤血球、白血球の数を測定できる平面状の次世代センサを共同開発しました。従来の血球計測装置の測定部(立体状)と比べ、体積で約100分の1以下と圧倒的に小型なうえ、測定に必要な血液量も100分の1の1μl以下となりました。超小型化により、医療現場での測定の利便性と、検査を受ける患者の負担軽減に寄与するものと期待しています。

<開発したセンサについて>
今回、豊橋技術科学大学 石田研究室と共同開発したセンサは、当社のマイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム(MEMS)技術を活用し、従来の3次元上(立体状)の測定部分を平面状のセンサで測定することができます。血球計測は健康診断や病気の診断、治療に欠かすことのできない血液学的検査に用いられる最も基本的な検査項目です。この血球計測装置は、約2〜3cm四方の直方体測定部(当社従来品)で電気抵抗法を用いて計測していましたが、今回のセンサは一連の測定を約1cm角の平面シリコンチップ上で実現しました。マイクロマシン技術を用いた結果、センサ部のサイズは従来比で100分の1以下と大幅な小型化に成功しました。測定に必要な試薬・血液量も1μl以下とこちらも100分の1になりました。

<豊橋技術科学大学との関係>
当社と、豊橋技術科学大学 石田研究室の共同開発は1999年から始まりました。石田研究室はマイクロマシン技術の先端研究に取り組んでおり、この基本技術のノウハウと、当社の製造・製品化技術を組み合わせることで、次世代センサの開発を目指すというお互いの方向性が一致しました。

<医用への応用>
21世紀に入り医療分野のニーズはより高度化、複雑化しており、診療の効率化が求められています。医用の計測器業界でも、血液検査の際に何日も患者を待たすことなく、診療の場ですぐに計ることのできる装置や、自己血糖測定装置のように、患者本人が携帯して自分で計ることのできる小型化・ハンディ化へのニーズが高まっています。また、測定に必要な試薬を含めた省資源や省エネの動きも強くなっています。
現在の血球計数装置は卓上サイズで、このようなハンディ型の製品はなく、そのためにも心臓部のセンサの超小型化が待ち望まれていました。

<当社医用分野の展開>
当社の医用分野では、このような業界の流れを捉え、「ポイント・オブ・ケア」(診療現場での測定)をテーマに血球計数装置を主力とする血液分析装置(血球、生化学、免疫等)の品揃え拡充をはかっており、小型の血球計数装置では、グループで世界シェアの約10%を持っています。「診療の現場で患者を待たすことなく迅速に計りたい」というニーズを満たすのが特徴ですが、心臓部のセンサを超小型化して装置自体も超小型することでこの発想をさらに進めていく方針です。

<今後の予定>
今後は共同開発に成功したセンサを活用して、従来の血液分析装置(血球、生化学、免疫等)の超小型化・ハンディ化を目指します。現在の卓上サイズが携帯可能な大きさになることで、診療現場から患者の所まで持ち運んで計測できるなど、場所を選ばず測定できます。また、測定に必要な試薬・血液量も少ないため、病状の経過観察などが短いサイクルで容易に行えます。医療現場の利便性や、検査を受ける患者の負担軽減に寄与するものと期待しています。

参考資料

<ご参考>

  • 豊橋技術科学大学 石田研究室
    高性能な集積回路や、知的な機能を持つセンサ(インテリジェントセンサ)等の実現を目指して、センサデバイス、集積回路等の研究を行われている。実績例として、スペースシャトル エンデバー号で日本人宇宙飛行士 毛利 衛氏により行われた鯉による宇宙酔いの研究への参画がある。この時使用された鯉の脳波の信号伝送は、本研究室により提案された概念を元にしている。
    教授:石田 誠(工学部 電気・電子工学課程)
    連絡先:〒441−8580 愛知県豊橋市天伯町雲雀ヶ丘1-1
    TEL/FAX 0532-44-674

  • 血球計数装置と測定原理

    • 血球計数装置−血液検査の中で最も基本的な項目である、血液中の赤血球、白血球等の血球分量を計測する装置。
    • 測定原理−電気抵抗法
      血球が電気の流れている小孔(アパーチャー)を通過する際の電気抵抗変化から数を計る。従来までは、約2〜3cm四方の直方体測定部(当社従来品)で計測していた。
    • 今回のセンサは超小型化、平面化を世界で初めて実現したもので、装置の超小型化につながる。

  • マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム(MEMS)
    半導体技術を超小型装置の開発に展開した技術。光通信やバイオなど先端産業での素子分野での開発が活発に行われている。