高濃度での粒度分布測定で粒子分散の真の姿をとらえる。-高濃度での粒度分布測定-

溶媒に分散された粉体材料の性能を設計通りに発現させるには、分散状態の制御が重要になります。一次粒子まで分散した良い分散状態にあるのか、または凝集物が存在している不十分な分散状態なのかを把握する代表的な方法が粒子径分布(粒度分布)を測定することです。粒子径分布(粒度分布)を測定する手法の中でも、光散乱を用いるレーザ回折/散乱式の粒子径分布測定装置は、短時間で簡便に粉体全体の平均の様子を把握することができる手法です。

しかしながら、通常、レーザ回折/散乱式の粒子径分布測定装置で測定する場合には、試料を十分に希釈する必要があります。特に原液が高濃度の材料の場合、高濃度での分散状態を把握したいにも関わらず、測定時には大きく希釈を行う必要があり、希釈による分散状態の変化が懸念されます。

希釈による分散状態の変化

例えば、希釈して測定した結果が、良い分散性を示すような状態だとします。

しかし実際には、原液状態では凝集物が存在していて、希釈したことにより凝集物が分散しただけかもしれません。

希釈による分散状態の変化は、原液の状態には存在していた凝集物がなくなる場合もあれば、逆に原液の状態には存在していなかった凝集物が生成することもあります。このように希釈しての粒子径を測定すると、実際の試料状態が原液での粒子径分布(粒度分布)から変化してしまう可能性があります。原液、または原液にできるだけ近い状態で測定をすることで、原液での粒子の分散状態を把握、または推測することができ、より良い分散状態の実現への一歩となります。

高濃度セルとは?

高濃度セルは、今まで試料濃度で調節していた透過率を、光路長を調整することで、様々な濃度での測定を可能にしたものです。

HORIBAレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置 Partica LA-960 は、セル中の広い範囲の粒子からの信号を取得するように光学系が設計されており、固定された試料の測定であっても平均的な粒子径分布(粒度分布)を得やすい特徴があります。高濃度セルユニットを用いて1μm(ポリスチレンラテックス, 1μm, 1wt%)の標準粒子を測定した例を図1に示します。

図1. 1μm(ポリスチレンラテックス, 1μm, 1wt%)の標準粒子の測定結果
※本測定で使用したサンプルは、NIST(米国立標準技術研究所)においてトレーサビリティを有しているポリスチレンラテックス(Polystyrene Latex、以下PSL)です。

高濃度での測定は多重散乱などの影響もあるため、必ずしも希釈した場合と同様の結果が得られるわけではありませんが、これまで測定できなかった状態で、粒子径分布(粒度分布)に繋がる情報が得られます。希釈状態での結果に加え、高濃度の状態や、濃度を変えて測定した結果から、原液での粒子の分散状態を把握、または測定することができます。

着色インクの粒度分布 -原液測定と希釈測定の比較-

高濃度測定の実測例を紹介します。試料は着色インクです。完全に分散しているものがOK品(図2の上段)、凝集物があるものがNG品(図2の下段)です。図2の左列には電子顕微鏡の写真を掲載していますが、通常はこの情報はない状態で測定を開始します。

希釈しての測定結果(図2の中列)では、OK品、NG品共に、ほぼ同じ結果となりました。これは、NG品に含まれていた凝集物が、希釈により一次粒子に分散されたものと思われます。したがって、NG品と判断されなければならないものが、希釈して測定することによってOK品と判断されてしまうことがわかります。

一方、高濃度状態(この場合は希釈なしの原液状態)での測定結果(図2の右列)では、NG品の凝集物が測定されています。また、OK品は高濃度で測定をしても、希釈した場合の粒子径と同等の粒子径で測定結果が得られました。

バッチセル 希釈 約2000倍

高濃度セル 原液(セル間隙:10μm)

サンプルA(OK品)

サンプルB(NG品)

図2. 着色インクの粒子径分布

高濃度測定の次のアクション -成分分析による凝集物の由来確認-

ほとんどの場合、実際の材料では複数の材料が混合されています。粒子径分布(粒度分布)測定では、例えば「粗大物」があるということはわかります。また、高濃度の測定や濃度を変えての測定を通して、その粗大物が、一つの大きな粒子なのか、凝集物なのかまでわかるかもしれません。しかし、その凝集物が何の凝集物であるかを調べるには、成分分析を行う必要があります。

ラマン分光では分子鎖を、SEM-EDXでは元素を分析することができます。成分分析によって、凝集物がどのような成分かを把握することができれば、混合した材料のうち、何が凝集したのかを特定することができ、次のアクションの参考になります。例えば、粗大粒子が「添加した分散剤の凝集物」ということがわかれば、「多すぎる分散剤が凝集している」と考えられ、「分散剤の添加量を減らす」という対策を取ることができます。

図3.分散剤が過剰量入り、凝集物が生まれてしまった酸化鉄スラリーの観察画像。
ラマン分光画像では、明確に分散剤のダマが見えています。

まとめ

溶媒に分散された粒子の原液での分散状態を知ることは困難です。また、顕微鏡法では、乾燥が必要であったり、全体のごく一部しか観測できていないなどの問題があります。原液または高濃度での粒子径分布(粒度分布)測定は、溶媒に分散された粒子の原液での分散状態を知る上で、簡便かつ有効な手段です。原液の状態を把握、類推することで、次のアクションを無駄なく決定することができるため、製品開発のスピードアップに役立ちます。

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高濃度での粒度分布測定で粒子分散の真の姿をとらえる。-高濃度での粒度分布測定-