株式会社堀場製作所
コーポレートオフィサー(執行役員)
株式会社堀場アドバンスドテクノ
代表取締役社長
博士(工学)
2024年版の国連世界水開発報告書によれば,世界人口の約半分が年に1度は深刻な水不足の影響を受けており,この状況は気候変動や人口増加,都市化によってさらに深刻化すると予測されています。水資源の枯渇や水質汚染は,飲料水供給や農業,産業活動,さらには生態系全体に深刻な影響を与えています。これらの課題に対処するためには,水環境を科学的に理解し,持続可能な循環型社会を構築するための具体的な行動が求められます。
半導体産業はその象徴的な一例です。半導体製造工程では,多量の超純水が必要であり,1つの半導体工場で使用される水量は都市全体の消費量に匹敵することもあります。これらの工場では,浄化と再利用を徹底し,水資源を有効活用する取り組みが進められています。一方,近年急成長しているデータセンターもまた,水の利用が増加している分野です。高性能なサーバーを冷却するために,従来の空冷に加え,効率的な水冷システムが導入される例が増えてきました。これによりエネルギー効率は向上しますが,同時に地域ごとの水利用量への影響も考慮する必要があります。
こうした状況を踏まえ,循環型社会の実現に向けた取り組みでは,水の効率的利用や再利用,汚染防止が重要視されています。例えば,欧州連合(EU)の「循環経済アクションプラン」や,北米,アジアで進む地下水保全・水質管理技術の導入では,正確なデータに基づく水管理が鍵を握っています。これらの取り組みを支える分析・計測技術は,水環境の状態を理解し,適切な管理と意思決定を可能にしています。
電気化学的センシング技術は,水質モニタリングにおいて重要な役割を果たしています。新しい電極材料の研究が進み,微量成分や汚染物質をより高精度に検出することが可能になりました。この進化は,河川や湖沼の水質監視,浄水処理プロセスの効率化,さらには廃水再利用の最適化に寄与しています。一方,分光分析技術は,水中の化学成分や汚染物質の濃度を精密に解析し,リアルタイムで水質の変化を監視するための強力なツールです。これらの技術が電気化学的センシング技術やデータ解析技術と組み合わさることで,水環境の変化を予測し,持続可能な管理手法を提案することも可能にします。
HORIBAグループのミッションである「ほんまもんと多様性を礎にソリューションで未来をつくる」は,本物を超え感動を生む技術力と,多様性を活かしたチームの力によって社会に貢献するという使命を表しています。このミッションを実現するために,HORIBAグループの水・液体計測のヘッドクォーターである堀場アドバンスドテクノでは,「未来のために水と対話しよう」をバリューとして掲げています。これは,水環境に寄り添い,分析・計測を通じてその声に耳を傾けることで,持続可能な未来を築く決意を表明するものです。分析・計測技術によりソリューションを生み出し,循環型社会や地球環境に貢献しながら未来を形づくっていくことが私たちの使命です。
本号が,読者の皆さまとともに水環境の未来を考え,具体的な行動につながるきっかけとなることを願っています。分析・計測の力を活用し,「おもしろおかしくをあらゆる生命へ」。
