島津製作所と堀場製作所、計測機器「LCラマン」開発・販売で提携

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高速液体クロマトグラフとラマン分光装置を融合させた計測機器の実現へ

株式会社島津製作所(代表取締役社長:上田 輝久 以下、島津製作所)と株式会社堀場製作所(代表取締役社長:足立 正之 以下、堀場製作所)は、島津製作所の高速液体クロマトグラフ(HPLC、以下LCと表記)および堀場製作所のラマン分光装置を融合させた計測機器「LCラマン」の開発・販売の協業を開始する基本契約を本日締結しました。
二社の強力な技術を結合させることにより、医療・ヘルスケアを含むライフサイエンスやマテリアル、環境・新エネルギーなど様々な分野の発展に貢献していきます。

島津製作所のLCおよび堀場製作所のラマン分光装置は、それぞれ日本国内でトップシェア※を獲得しています。両社が培ってきた技術を融合する「LCラマン」は、LCが効率的に混合試料中の成分を分離し、続いてラマン分光装置がLCによって分離された化合物の定性・定量計測を行います。従来のラマン分光装置は、数100 ppmほどの成分の定性・定量計測にとどまっていましたが、LCで成分分離を行い、プレート上にスポッティングされた試料を濃縮乾固することで、1 ppm以下の微量成分の検出を目指します。また、同装置の統合ソフトウェアも共同開発することで、試料の導入から分析までシームレスな運用を実現します。
なお、早稲田大学大学院先進理工学研究科の竹山春子教授も交え、三者共同でのアプリケーション開発を予定しています。
※両社調べ


LC技術とラマン技術の融合で実現する新規有用物質の探索

LCは生物由来の代謝物など、複雑な試料中の目的化合物の分離・定量・抽出に広く用いられてきました。しかし、LCで最も多く用いられる吸光度検出器は、糖類などUV吸収のない化合物の検出が困難であり、またUVスペクトルは定性能力の点で他の検出手法に及びません。
一方、ラマン分光装置は、非破壊で分子構造を確認でき、分子固有のラマンスペクトル情報で精度の高い化合物定性が行えます。ただし、複数の成分が混合した試料ではスペクトル重複が起きるため、前処理として成分分離を必要とします。
島津製作所と堀場製作所は、ライフサイエンス、マテリアル、環境・新エネルギーなど、様々な分野の研究開発における新規有用物質の探索手段として、互いの技術の強みを融合した「LCラマン」の社会実装をめざします。


早稲田大学大学院先進理工学研究科 竹山春子教授コメント

現在注目されている健康・医療・製薬などのライフサイエンス領域において、生体分子の迅速かつ正確な分析は欠かせません。この分野では既にLC法が強力な手法として広く利用されている一方で、ラマン分光法も多様な細胞内物質の分析に応用が始まっています。本件は、この二つの手法の強みを結合するアイデアであり、分子解析精度の向上や、新規物質の発見にも大きな期待が持てます。近年、産官学連携やオープンイノベーションに注目が集まる中、大手分析機器企業である島津と堀場が更なる科学技術発展に向け、それぞれの主力技術で協業する意義や価値は大きいと思います。特に急がれている新薬の開発や、ヘルスケア技術の進化に寄与すべく、本協業による成果の早急な実現を期待しています。


島津製作所が担う役割

「LCラマン」を実用化するためのLC、LC周辺機器、ソフトウェアについて、開発および販売を担います。1972年に初めてLCを手掛けて以来、社是「科学技術で社会に貢献する」のもと、LC装置やソフトウェアの高性能化・高機能化だけでなく、最先端科学を取り入れた技術研究や、ライフサイエンス・食品・化学・環境・臨床など幅広い分野でアプリケーションを展開してまいりました。島津製作所のLC技術・関連製品には、国内外のお客様から厚い信頼を頂いています。このたび島津製作所のLC技術をラマン分光装置と融合し、市場の新たな要求に応えるこれまでにない計測装置の開発に挑戦いたします。


堀場製作所が担う役割

「LCラマン」として実用化するためのラマン分光装置、ソフトウェアの開発および販売を担います。堀場製作所が長きにわたり培ってきた、ラマン分光装置における深い知見や、データ解析技術の強みに加え、高品質な製品を安定供給する分析・計測機器メーカーとしての特長を活かし、早期の開発実現に取り組みます。さらに、直感的な操作で結果を知ることができる全自動タイプにすることで、分光などの専門知識がなくても容易に操作できる計測装置の開発をめざします。

なお本活動は、本年4月の組織改革で新設した「バイオ・ライフサイエンスプロジェクト」が中心となって推進します。


用語解説
高速液体クロマトグラフ:高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography)を行う装置・システム。分離を担う「カラム」にサンプルを導入し、連続的に溶液を流しながらカラムの中で各成分を分離して、その後に続く検出器で検出して各成分の定性や量の計測を行う。

吸光度検出器:光を吸収する性質を有する化合物に適した検出器。対象成分のUV吸光度測定や、UVスペクトル採取に使用する。

ラマン分光装置:試料から散乱されるラマン散乱光を検出することで、試料の分子構造同定や物性を評価する装置。

左から、島津製作所 代表取締役社長 上田 輝久、堀場製作所 代表取締役社長 足立 正之
左から、島津製作所 代表取締役社長 上田 輝久、堀場製作所 代表取締役社長 足立 正之