令和6年度近畿地方発明表彰「文部科学大臣賞」を受賞 (イオン測定電極に関する発明)

|   ニュースリリース

 

HORIBAグループで水・液体計測事業を担う株式会社堀場アドバンスドテクノ(以下、当社)のイオン測定電極に関する発明「有機汚れ抑制機能付き電極装置 (特許第7014652号)」が、公益社団法人発明協会の主催する令和6年度近畿地方発明表彰において「文部科学大臣賞」を受賞しました。この発明により、汚濁した液体試料中にイオン測定電極を長期間浸漬させた状況でも安定した測定を続けることが可能となり、水質測定現場でのメンテナンス工数低減に貢献します。

 

受賞内容

本発明は、生活排水や工業廃水などのpHやイオンといった電気化学的性質を連続モニタリングする水質測定装置の電極において、表面に有機物由来の汚れが付着することを抑制する防汚機構に関するものです。
電極を生活排水や工業廃水などに長期間浸漬させると、有機汚れが表面に付着し、pHやイオンなどに対する応答性が下がり、測定精度の低下を招きます。この課題に対し、過去、電極が試料と接する面に有機汚れを分解する光触媒機能をもった二酸化チタンの薄膜をコーティングし、そこへ紫外線を照射することにより、二酸化チタンを活性化させて汚れを分解する技術が考えられていました。しかし、排水・廃水が懸濁液※1であることから、光触媒に必要な紫外線が十分に照射できないことや、一度汚れると紫外線が光触媒に届かないため、実用化には至りませんでした。さらに、紫外線光源の設置に手間がかかることや、排水・廃水が流動的なため紫外線光源の位置が安定しないなど、メンテナンス面の課題もありました。

そこで当社は、電極の内部に紫外線光源を設置しました。紫外線を照射する範囲は、pHやイオンなどが応答するガラス応答膜の外表面や、測定サンプルと比較電極※1が連通する液絡部分※3です。これにより、紫外線照射で有機汚れを分解することができ、かつ流動性のある排水・廃水中でも光源の位置が安定して防汚機構を機能させることができました。(以下の図を参照) その一方で、紫外線はpHやイオンに応答する金属製の内部電極を劣化させるため、本発明では内部電極を被覆材で覆い、紫外線を遮断又は吸収する仕組みを用いることで内部電極の劣化を抑制します。このようにすることで、排水・廃水中での長期間の浸漬を可能とし、メンテナンス期間を従来よりも伸ばすことに成功しました。
本発明で電極の長寿命化を実現し、メンテナンス部品や設置現場における設備コストの低減、さらに現場作業者のメンテナンス工数や作業負荷の低減に貢献できるようになりました。
 

※1 液体中に顕微鏡で見える程度の粒子が分散しているもの
※2 ガラス電極に発生した電位差を測定するため、ガラス電極と組み合わせて用いられるもの。測定サンプルのpHと無関係に一定の電位を示す
※3 内部液と測定サンプルが接する部分

         図:電極の構造と作用機序の説明(電極ガラス部分・液絡部)

 

近畿地方発明表彰について

公益社団法人発明協会が主催する地方発明表彰は、各地方における発明の奨励および育成、科学技術の向上と地域産業の振興を目的として大正10年に始まりました。以来、優れた発明、考案又は意匠を生み出した技術者・研究開発者の功績を称え顕彰することにより、今日の科学技術の発展に寄与しています。
 


受賞概要

◆文部科学大臣賞
受賞者:株式会社堀場アドバンスドテクノ 西尾 友志、江原 克信
実績功労賞:株式会社堀場アドバンスドテクノ 代表取締役社長 西方 健太郎
受賞技術名:有機汚れ抑制機能付き電極装置
登録番号:特許第7014652号


令和6年度近畿地方発明表彰 その他受賞一覧

◆発明奨励賞
受賞者:株式会社堀場製作所 松濱 誠、粟根 悠介、伊関 博臣、桝田 真太郎
受賞者:株式会社堀場アドバンスドテクノ 有本 公彦
受賞技術名:周囲温度影響を抑制した半導体レーザ装置
登録番号:特許第7090572号

◆発明奨励賞
受賞者:株式会社堀場製作所 秋山 久、上野 楠夫
受賞技術名:散乱部による照明を使った放射線検出装置
登録番号:特許第6952055号

◆発明奨励賞
受賞者:株式会社堀場エステック 岡野 浩之
受賞技術名:熱式流量センサ
登録番号:特許第6234743号

 


左から、文部科学大臣賞 実施功労賞受賞:河野 忠司(西方 健太郎の代理)、文部科学大臣賞受賞:西尾 友志


左から、発明奨励賞受賞:松濱 誠、伊関 博臣、秋山 久、岡野 浩之
 

 

 

受賞した技術を用いた「無補充式セルフクリーニングpH電極」