ホリバ・フランス社のグレーティング、ノーベル博物館に展示

|   ニュースリリース

この度、当社のグループ会社であるホリバ・フランス社のグレーティング(回折格子)が、ストックホルムにあるノーベル博物館に展示されることとなりました。2018年ノーベル物理学賞を受賞したジェラール・ムル教授(以下、ムル教授)は、長年にわたって当社のグレーティングを使用し、レーザーの性能向上に関する研究において多大なる功績を上げました。ムル教授は、今回の受賞を記念し、ノーベル博物館に展示する記念品を実際に研究に使用していたホリバ・フランス社のグレーティングを選出しました。
当社は同博物館への展示を大変名誉なことと受け止め、今後も科学の発展と進歩のため、世界の研究者に貢献してまいります。

 

ジェラール・ムル教授の研究内容と、当社製品について

1980年代、レーザー照射においてきわめて短い時間で超高出力する研究が広まりました。このコンセプトを実用化したのが、今回ノーベル賞受賞の対象となったCPA(Chirped Pulse Amplification: チャープパルス増幅(*1))技術です。1985年にムル教授によって発表されたこの技術は、出力の短いパルス(*2)のレーザーを回折格子で引き伸ばし、光増幅器で増幅後、再度、回折格子でパルス幅を圧縮するというものです。当時の回折格子は、強い放射束に耐える能力がなく、強い光束を照射すると増幅器が壊れるという課題がありました。当社グループのジョバンイボン社(現:ホリバ・フランス社)は、これら回折格子の光束に対する耐久性の向上に取り組みました。こうして1990年代には、ホリバ・フランス社の回折格子(グレーティング)が貢献し、レーザーの強度を1000倍に上げることが可能となりました。
(*1) チャープパルス増幅技術:低出力のレーザーから高強度の超短パルスレーザーを得る手法
(*2) パルス:ごく短時間に生じる一定の幅を持った電気信号の波
 

ホリバ・フランス社のグレーティングが貢献したレーザー技術の応用例

眼科治療への応用
パルスレーザーは、周辺組織への影響がなくピンポイントに照射することができます。この特性を利用し、目と角膜を対象とするフェムト秒レーザー(*3)を用いた屈折矯正手術の技術が普及しました。眼科手術におけるリスクが最小限に抑えられ、これまでに何百万人もの人々の視力が矯正されています。
(*3) 1フェムト秒=1000兆分の1秒
医療分野への応用
高強度レーザーは、組織を透過させるため陽子を数百MeV(*4)まで加速させる陽子線治療に使用されています。また腫瘍治療のための放射性核種などにも使用されています。
(*4) 1 V の電圧で加速されるときに得るエネルギーを 1 eVと表記し、1 電子ボルト(エレクトロンボルト、electron volt)と呼ぶ。1MeVは1eVの1,000,000倍。
放射線廃棄物処理技術への応用
長寿命の原子に高強度レーザーを照射することで、原子の寿命を大幅に短縮し、安定核に変換することで放射性廃棄物の長期保管という問題解決につながります。
 

ノーベル博物館について

ノーベル博物館は、スウェーデンの首都ストックホルムの旧市街であるガムラスタンに所在し、ノーベル賞の歴史や歴代受賞者、創設者アルフレッド・ノーベルに関する資料を館内で見ることができる博物館です。ノーベル賞100周年を記念し、スウェーデン・アカデミーが入居している旧証券取引所の一部を改装して2001年春に開館しました。
毎年、ノーベル賞受賞者がゆかりのある品を寄贈し、また2001年頃からは受賞者が椅子の裏側にサインをすることが知られています。
 

ホリバ・フランス社の歴史

1819年の創業以来約200年の歴史を誇るホリバ・ジョバンイボン社(現ホリバ・フランス社)は、ラマン分光分析装置や蛍光X線分析装置などの光学分析装置を最先端科学技術分野に供給し、各国の研究開発機関や大学などの専門分野において高い市場シェアを獲得しています。特に、回折格子や分光器は、NASAをはじめとする世界の最先端研究機関で採用されていることからも、その信頼性が裏付けられています。

Prof. Gérard Mourou and one of his initial diffraction gratings
Prof. Gérard Mourou and one of his initial diffraction gratings
HORIBA Diffraction grating exhibited at the Nobel Museum
HORIBA Diffraction grating exhibited at the Nobel Museum