測っちゃいました Vol.24 温泉

少しずつ春めいてきたとはいえ、朝晩はまだ冷えますね。こんな時期に温泉にゆっくりつかることができたら、まさに天国ですよね。温泉浴が普通のお湯のお風呂と比べて体に良いとされているのは、温泉水に様々な成分が溶け込んでいるからです。ほとんどの温泉施設には、温泉分析書が掲示されています。この温泉分析書には、温泉の湧出地、泉温、湧出量、成分、泉質、禁忌症と適応症、利用する時の注意点などが記載されています。これは温泉法によって、温泉を公共の浴用・飲用として提供する施設に対して掲示が義務付けられているからです。

 泉温とは、温泉が地上に湧出した時の温度、もしくは温泉源から採取したときの温度を指します。実際に入浴する時には、入浴に適した温度に調整されていることがほとんどです。温度によって低温泉(25℃以上34℃未満)、温泉(34℃以上42℃未満)、高温泉(42℃以上)に分類され、泉温が25℃以上あれば温泉と認められます。また、25℃未満でも含有成分が規定を満たしていれば、温泉(冷鉱泉)として認められる場合があります。

 温泉法は環境省の所管であり、温泉を定義するとともに、その開発等に伴う自然環境の保護も目的としています。泉温や湧出量などは、温泉が湧き出ている地質学的環境を把握するためには重要な要素であり、継続して温泉を利用しても問題ないかどうかを判断する目安にもなります。

 一方で、温泉の利用者にとっては、泉温や湧出量よりも、成分やそこから導き出される泉質、禁忌症と適応症、利用時の注意点の方が気になるのではないでしょうか。温泉水の成分の測定方法は、『鉱泉分析法指針(環境省)』に定められており、測定は各都道府県に登録されている『登録分析機関』が行うことになっています。また、温泉水の成分は、温泉源から採取したサンプルを試験室に持ち帰って測定されます。

 なお、湧出直後に測定した場合と、試験室に持ち帰って測定する場合とでpH値が異なることがあります。空気に触れることで酸化が進み、硫化物が硫酸に変化してpH値が低くなったり、炭酸ガスを放出してpH値が高くなったり、逆に炭酸ガスを吸収してpH値が低くなったりするためです。地質学的環境を把握するには、湧出直後の測定値が望ましいですが、入浴する温泉水の性状としては試験室に持ち帰って測定した値の方が実態に近い場合があります。そのため、両方の測定値を掲載している温泉も多いです。湧出直後のpH値によって、酸性(pH3未満)、弱酸性(pH3以上pH6未満)、中性(pH6以上pH7.5未満)、弱アルカリ性(pH7.5以上pH8.5未満)、アルカリ性(pH8.5以上)の5段階の液性に分類されます。

 かつて、地熱発電のアセスメント調査に同行した時、宿泊した温泉宿の方に依頼されて、湯船の温泉水のpHを測定したことがあります。持参していたHORIBAのコンパクトpHメーターで測定してみると、酸性温泉では掲示されていた数値よりも高く、アルカリ性温泉では掲示値より低い値を示しました。採取したのは湯船の温泉水なので、温泉水に含まれる酸性物質やアルカリ性物質が中和されてしまったのだろうと考えられます。そのため、掲示されていた測定値よりも中性側に変化いるのも納得できます。しかし、実際に入浴する温泉水そのものの測定値ですから、その時の温泉浴の効能を知るためには、最も正しいサンプリングだったと言えそうです。

 

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