「令和7年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞」を受賞

|   ニュースリリース

 

株式会社堀場製作所の代表取締役社長 足立正之、シニアコーポレートオフィサー(常務執行役員) CTO 中村博司が、文部科学省実施の令和7年度「科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞 開発部門」を受賞しました。
科学技術分野の文部科学大臣表彰は、「科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術水準の向上に寄与すること」を目的として文部科学省が表彰するものです。

 

受賞内容

「共存水分補正機能を備えた赤外線ガス分析装置の開発」
従来の赤外線排ガス分析装置(以下、排ガス分析装置)は、自動車等の排ガス濃度を測定する際、排ガスに含まれる水分が測定対象成分に対して影響を与えてしまうため、濃度を正確に測定することが困難でした。そのため、除湿機構を設けて排ガス中の水分を除湿し排ガス濃度を測定していましたが、除湿機構を設けると装置が大型化し、除湿により減少した水分分圧※1の割合だけ補正が必要となり誤差の要因となっていました。
本開発では、排ガス中の水分を除湿せずに、排ガスに含まれる測定対象成分濃度と水分濃度を測定し、水分濃度に基づき測定対象成分濃度に対して、吸収スペクトルの重なりによる水分干渉影響※2と、吸収スペクトルの形状変化による水分共存影響※3とを同時に補正しました。これにより、除湿機構を排除することが可能となり、応答速度の高速化とともに、水分分圧補正が不要となり測定精度が向上しました。また、装置の小型・省電力化により、自動車の限られたスペースに搭載可能な排ガス分析装置の開発が実現しました。本装置による実路走行時の排ガス試験結果は、ラボ内での排ガス試験結果と異なることを発見する契機となり、実路走行時の排ガス測定の重要性を世界に広めることに貢献しました。その後、世界では実路排ガス規制の導入が加速しており、環境問題・エネルギー問題の解決に寄与しています。

主要特許:特許第3771849号「赤外線ガス分析方法および装置」
主要論文:「Development of a Wet-Based NDIR and its Application to On-Board Emission Measurement System」、SAE 2002-01-0612、2002年発表

※1 水分分圧:排ガスに含まれる水分の圧力
※2 水分干渉影響:干渉ガス(水分)の吸収スペクトルが測定対象ガスの吸収スペクトルと重なるために水分量が測定値に与える影響
※3 水分共存影響:共存ガス(水分)と測定対象ガスとの相互作用により、測定対象ガスの吸収スペクトルが変化(ブロードニング)するために測定値に与える影響


                                      水分干渉影響と水分共存影響についての図

 

受賞概要

◆科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞 開発部門※4

受賞者:株式会社堀場製作所 代表取締役社長 足立正之、シニアコーポレートオフィサー(常務執行役員)CTO 中村博司
受賞技術名:共存水分補正機能を備えた赤外線ガス分析装置の開発

※4 開発部門:本賞「開発部門」の表彰は、我が国の社会経済、国民生活の発展向上等に寄与し、実際に利活用されている画期的な研究開発若しくは発明を行った者が対象


左から、シニアコーポレートオフィサー(常務執行役員)CTO 中村博司、代表取締役社長 足立正之

 

 

受賞した開発技術を用いた車載型排ガス計測システム「OBS-ONE」①
受賞した開発技術を用いた車載型排ガス計測システム「OBS-ONE」②
受賞した開発技術を用いたエンジン排ガス測定装置「MEXA-ONE」