測っちゃいました Vol.25 黄砂

 暖かさとともに黄砂が飛んでくる季節になりました。日本に飛んできて降り積もる砂塵の多くは直径2.5~10 ㎛程度で、PM2.5よりやや大きめです。PM2.5に含まれるような、2.5 ㎛よりも微細な粒子は、沈降しにくく、浮遊した状態で空気中に滞在するため、健康や環境への様々な影響が懸念されています。

 黄砂とは、ユーラシア大陸中央部の砂漠地帯で発生した微細な砂塵が、偏西風に乗って日本を含む東アジアに飛来する現象です。ユーラシア大陸中央部には、いくつかの砂漠地帯がありますが、中でも、中国北西部ウイグル自治区に位置するタクラマカン砂漠、モンゴル南部から中国北部に広がるゴビ砂漠、黄河中流域の黄土高原の3ヶ所が有名です。

 タクラマカン砂漠は、中国ウイグル自治区のタリム盆地に位置し、南北を山脈、西はパミール高原、東はゴビ砂漠に囲まれています。その大部分が砂丘で覆われており、降水量が非常に少なく極端に乾燥しているため、植物がほとんど育たず、砂だらけの『死の海』とも呼ばれています。面積は約34万平方キロメートルで、世界屈指の大きな砂漠です。かつては、アジアに飛来する砂塵のほとんどがタクラマカン砂漠から発生していると考えられていました。しかし、最近の研究では、周囲が標高の高い盆地であることや上空の風がそれほど強くないことなどを考慮すると、東に位置するゴビ砂漠の寄与の方が大きいといったシュミレーション結果も報告されています。

 ゴビ砂漠は中国とモンゴルの間に位置し、西はタクラマカン砂漠に接しています。タクラマカン砂漠よりもなだらかな地形で、標高が高く、南北の気流が上空で交わるため、風が強いのが特徴です。タクラマカン砂漠と比較すると、砂丘以外にも岩場などが多く、降水量もやや多いため、冬場は雪に覆われたり、地表が凍結したりすることがあります。春の凍結融解の影響で地表物質が細粒化し、巻き上げられた粒子が黄砂となって日本に飛来することもあると考えられています。

 黄土高原は、タクラマカン砂漠やゴビ砂漠の南東にある黄河流域に位置しています。黄土は、粒子表面の炭酸塩や、鉄・マンガンの酸化物の働きで、淡黄色や灰黄色となります。降水量は夏季に集中しており、豪雨による表層流出で生じる濁流が、黄河の名前の由来と言われています。タクラマカン砂漠やゴビ砂漠から風で運ばれたシルトやそれより細かい粒子(風成塵)が堆積して生成されたと考えられており、春先になると低気圧や前線の影響による強風で土砂が舞い上がり、黄砂の原因となっています。

 黄砂は、日本に限らず東アジアの広い地域で起こる現象ですが、海を越えて飛来する日本では、大陸よりも粒子が細かいのが特徴です。砂粒というよりは、シルトや粘土のイメージです。土壌の粒子サイズを測定する方法としては、一般にふるい分け法等が用いられます。しかし、日本の黄砂の粒子径を測定するには、レーザー回折/散乱式や遠心沈降式などより小さな粒径まで測定可能な手法が求められます。沈着して積もった黄砂は採取しやすく、粒子径の測定や成分分析も比較的容易です。一方で、空気中に浮遊している黄砂についても健康や環境への影響が懸念されています。そこで、空気中の微小粒子の質量濃度や元素組成を連続的に測定し、粒子の組成や発生源・発生過程の解明に役立てる分析装置の開発も進められています。黄砂は東アジアの一部地域では土壌を肥やすなどのメリットも期待されていますが、海を越えて日本に飛来する細粒の黄砂は、必ずしも歓迎されていないのが現状のようです。

 

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