6月に入り、全国的に梅雨に差し掛かってきました。雨は、大気中の二酸化炭素(CO2)やその他汚染物質(NOX、SOXなど)が溶け込むことで酸性になります。都会の雨を採取してpHメーターで測定してみるとpHの低い値が検出されます。pHの値が7未満だと酸性ですが、5.6よりも小さい場合に「酸性雨」と呼ばれます。大気中のCO2だけが雨に溶けた場合のpHの値が5.6※1であるとされ、それよりも低い値を示す酸性雨には大気汚染物質が溶け込んでいると考えられます。近年、工業地帯など大気汚染が懸念される地域では、pH4を下回る酸性雨も観測されています。
梅雨のようにしとしと降り続く雨に、汚染物質が徐々に溶け込むことで大気中の汚染物質の濃度は低くなり、後から降る雨ほどpHの値は高くなります。しかし、降り始めの雨水と後から降った雨水が混合してしまうと、正確なpHの変化を測定できないため、頻繁に採取容器を交換する必要があります。そこで、自動的に容器を交換できる装置がHORIBA製の酸性雨分取器 レインゴーランドです。この装置はHORIBA製品で唯一電気を使わず、降雨採取量の変化と重力を利用して稼働します。現代の最新技術を使えば、センサーで最適時を感知して電気的に容器を交換する仕様にもできますが、小中学生を含めた幅広い層に利用していただくために、あえてシンプルに設計されています。
酸性雨は、酸性の水溶液としてコンクリートを溶かすなどの直接的な影響を及ぼすだけでなく、土壌の酸性化に伴うアルミニウムイオンの溶出など、間接的な影響も懸念されています。特にpHの値が4から3に下がると影響が大きくなり、短期間でもpH3の雨が降ると植物への被害が現れることが報告されています。一度溶出した有毒イオンは後から降った雨では洗浄することができないため、降り始めの雨のpH測定が非常に重要です。
※1 大気中のCO2を飽和溶解度になるまで純水に溶かした時のpHの値
<参考文献>
Readout No.5 July 1992 p.85~p.89
酸性雨分取器「レインゴーランド」誕生記
出会い―試行錯誤―失敗―笑い、そして願い 永井 博
<関連リンク>
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