『2021堀場雅夫賞』受賞者決定 / 授賞式は10月19日

|   Press Release

「分析・計測技術」 研究者を奨励、支援

当社は、このほど、国内外の大学または公的研究機関の研究開発者を対象とした「分析・計測技術」に関する研究奨励賞『堀場雅夫賞』の2021年度受賞者を決定しました。
2003年の本賞創設から17回目となる今回の選考テーマは「ライフサイエンス分野の分光分析・計測技術」で、海外含め51件(国内48件/海外3件)の応募がありました。これらの応募に対し、募集分野において権威ある研究者を中心に7名で構成する審査委員会が、将来性や独創性、ユニークな計測機器への発展性に重点を置いて評価し、以下の3名を堀場雅夫賞受賞者、1名を特別賞受賞者に決定しました。受賞記念セミナーならびに授賞式は、学究界および行政関係から出席者をお招きし、10月19日(火)堀場テクノサービス 本社ビル※1にて執り行います。
※1 堀場雅夫賞募集時は、授賞式の開催場所を京都大学 芝蘭会館予定と案内していましたが変更となりました
 

受賞者と受賞研究内容

【堀場雅夫賞】

  • 飯田 琢也(イイダ タクヤ) 氏
    大阪府立大学大学院 理学系研究科 物理科学専攻    教授
    (兼務)研究推進機構 LAC-SYS研究所(RILACS)    所長
    「マイクロフロー光誘導加速による革新的バイオ計測技術の開発」
  • 太田 禎生(オオタ サダオ) 氏
    東京大学 先端科学技術研究センター    准教授
    「AI駆動型の高速細胞形態ソーター群とその応用開発」
  • 佐藤 和秀(サトウ カズヒデ) 氏
    東海国立大学機構 名古屋大学 高等研究院・医学系研究科病態内科呼吸器内科    S-YLC特任助教
    「近赤外光応答性細胞死誘導プローブの作用機構解明と治療効果計測基盤の構築」
      

【特別賞】

  • 金 尚弘 (キム サンホン) 氏
    東京農工大学 工学部化学物理工学科    准教授
    「分光データを利用した医薬品生産プロセスのリアルタイムモニタリングと制御」
     

堀場雅夫賞について

堀場雅夫賞は堀場製作所創立50周年を記念し、2003年に創設されました。本賞は、画期的な分析・計測技術の創生が期待される研究開発に従事する国内外の若手研究者や技術者を支援し、科学技術における計測技術の地位をより一層高めることに貢献しようというものです。分析・計測技術の中でも当社グループが育んできた原理や要素技術を中心に毎年対象分野を定め、ユニークかつその成果や今後の発展性を世界にアピールすべき研究・開発にスポットを当てています。
  

【2021堀場雅夫賞 審査委員会 委員一覧】 (敬称略、順不同)

審査委員長竹内 洋文 
岐阜薬科大学 先進製薬プロセス工学研究室 特任教授
海外審査員Jürgen Popp 
Professor, Scientific Director, Leibniz Institute of Photonic Technology (Leibniz IPHT)
審査委員伊吹 リン太 
立命館大学 総合科学技術研究機構 客員教授
審査委員津本 浩平 
東京大学 大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻 教授
審査委員前川 真人 
浜松医科大学 臨床検査医学講座 教授
審査委員内ヶ島 美岐子 
株式会社堀場製作所 営業本部 バイオ・ライフサイエンス プロジェクト 副プロジェクトマネジャー
審査委員野口 慎太郎 
株式会社堀場製作所 営業本部 バイオ・ライフサイエンス プロジェクト BLS Solution Salesチーム チームリーダー
アワードディレクター堀場 厚 
株式会社堀場製作所 代表取締役会長兼グループCEO
実行委員長足立 正之 
株式会社堀場製作所 代表取締役社長

                        

授賞式について

本年度の授賞式は、新型コロナウイルスの感染予防対策を徹底した上で開催します。
日程:2021年10月19日(火)
場所:京都市南区吉祥院宮の東町2番地 堀場テクノサービス本社ビル
 

【2021 堀場雅夫賞授賞式プログラム(予定)】

第一部:受賞記念セミナー(14:00~)
・受賞者 講演:受賞者3名、特別賞受賞者1名
・特別講演:落谷 孝広氏 (東京医科大学 医学総合研究所 教授)
第二部:授賞式 (15:30~)
・受賞研究紹介
・本賞/副賞授与
・堀場 厚  アワードディレクター 挨拶  (当社代表取締役会長 兼 グループCEO)
  

2021堀場雅夫賞の募集分野と背景

近年、従来の医薬品や治療では対応できない疾患への対応が社会的に強く求められており、患者の体質や病気の特徴にあった治療を行う個別化医療などの新しい医療が実現されつつあります。それに伴って生まれた医療と創薬の融合領域においては、従来の低分子医薬品に加え、核酸や抗体を用いた高分子医薬品、細胞や細胞外小胞体を利用した創薬研究が活発になっています。このような研究対象の多様化に伴って分析に関するニーズも多様化しており、従来広く用いられてきた分離分析に加えて、分光学的手法への期待が高まっています。さらに、開発した医薬品を広く社会へ届けるために、各医薬品モダリティ(治療手段)に応じた生産プロセスの構築が求められており、そこでも分光学的手法を用いた計測技術への関心が高まっています。

研究開発、生産のいずれにおいても重要な分析・計測は、細胞など生きた測定対象を非破壊に近い状態で分析できる分光学的手法の利点を生かすためのサンプリングや前処理についても様々な工夫が求められます。
また、得られる数多くのスペクトルデータや画像の処理、蓄積、生産プロセス管理への活用などにはデータサイエンスを応用した知見も重要であり、それらは研究開発の効率化や製造プロセスでの生産性向上に資するものでなくてはなりません。感染が拡大している新型コロナウイルスに対する安全で効果の高いワクチンや治療薬の早期実現のためにも、分野の壁を越えた研究開発アプローチが求められています。
2021堀場雅夫賞では、このような背景のもとライフサイエンス分野の中でも特に、先端の創薬および製薬に寄与する分光分析・計測技術を募集の対象とし、開発や生産プロセスの効率化につながり、産業応用が可能な技術開発につながる研究にスポットを当てました。
  

受賞者ご紹介

【堀場雅夫賞】

飯田 琢也氏
大阪府立大学 大学院理学系研究科 物理科学専攻    教授
(兼務)研究推進機構 LAC-SYS研究所(RILACS)    所長    
「マイクロフロー光誘導加速による革新的バイオ計測技術の開発」

医療や創薬・公衆衛生などの分野では、タンパク質や糖、疾患の原因となる物質や細菌など、生体由来試料の測定が不可欠である。しかし、従来の測定で用いられていた手法は煩雑な操作が必要なことが多く、高度な技術や高価な測定装置、長い実験時間が必要になるといった課題があった。
飯田氏は、液体中の光応答性材料(基板、粒子)に光を照射すると周囲にあるタンパク質などの生体物質が集光部に向かう現象を利用し流路内の狭小空間で測定対象を濃縮・反応加速して測定するマイクロフロー型の光誘導加速システム(LAC-SYS)を開発した。これにより、従来法と比べて数十~数百倍高感度な測定が可能になり、極微量(fg※2オーダー)のタンパク質をわずか数分間で定量評価することに成功した。
本技術は医療や食品など様々な分野での幅広い応用が期待される。医薬品開発におけるスクリーニングや個別化医療における患者ごとの病態把握などが迅速・簡便にできるようになると考えられる。
※2 fg:1gの1,000兆分の1
   

太田 禎生氏
東京大学 先端科学技術研究センター    准教授
「AI駆動型の高速細胞形態ソーター群とその応用開発」

大量の細胞を、高精度かつリアルタイムに画像情報解析しながら分離できるセルソーター※3が長く望まれてきた。しかし顕微鏡を用いた細胞分離は低速であり、既存フローサイトメトリー技術※4で得られる情報は光強度総量に限定されているため実現は難しかった。
太田氏が開発したゴーストサイトメトリー法は、「人を介さない画像解析には画像は必ずしも必要ない」という逆転の発想に基づいている。マイクロ流路中の細胞の動きを利用して細胞画像情報(信号)を得た上で、画像の再構成は行わずに直接AIで高速判別することで、高速・高精度な細胞の分離を実現した。
この研究成果は、希少細胞を用いた医療診断、細胞解析に基づく創薬スクリーニングなど、バイオ・細胞医療分野への幅広い応用が期待されている。
※3 セルソーター:種々の細胞をそれぞれの特徴に基づき選択的に分取する装置。
※4 フローサイトメトリー技術:流体中を流れる細胞に光を当て、光散乱強度や蛍光強度を用いて分析する技術。

 
佐藤 和秀氏
東海国立大学機構 名古屋大学 高等研究院・医学系研究科病態内科呼吸器内科
S-YLC特任助教
「近赤外光応答性細胞死誘導プローブの作用機構解明と治療効果計測基盤の構築」

現在のがん治療に用いられている放射線療法や化学療法は正常な細胞にも大きな損傷を与え、副作用などによる患者の負担は非常に大きい。
佐藤氏は近赤外光線免疫療法(NIR-PIT)と呼ばれる新しいがん治療法を研究している。本手法はがん細胞に結合する抗体に光(近赤外線)を照射すると反応する物質(プローブ)を付加したものを用いる。抗体を用いてがん細胞にプローブを運び、そこへ光を照射するとプローブが反応してがん細胞を破壊するという患者の負担が少ない手法である。NIR-PITの作用機構は長らく不明であったが、佐藤氏によってNIR-PITでがん細胞が破壊されるメカニズムが解明された。その成果から、今回用いたプローブの近赤外蛍光分光測定により細胞の破壊を計測・定量・予測できることが分かった。
これらの成果はがんの診断・治療の両面に大きく貢献するものである。これらの成果を基に、本治療は世界に先駆けて日本で限定承認を受け、先進医療・保険診療として社会実装されている。
  

【特別賞】

金 尚弘氏
東京農工大学 工学部化学物理工学科    准教授 
「分光データを利用した医薬品生産プロセスのリアルタイムモニタリングと制御」

近年、医薬品生産の高効率化のための新技術開発が求められている。その一環として、バッチ生産※5から連続生産へ転換するための技術開発が進められているが、連続生産の実現には生産プロセス内の医薬品の情報をリアルタイムにモニタリングする技術が必要不可欠である。しかし、医薬品の品質をリアルタイムに直接測定することは困難であることが多い。また、従来の近赤外スペクトルから医薬品の品質を予測する手法には、予測精度が経時的に低下するなどの欠点があり、生産プロセスでの活用には課題があった。
金氏は、近赤外スペクトルから医薬品の品質を安定的かつ高精度に予測する手法の開発を目的に、データサイエンスの技術を活用した新たなデータ解析手法を開発した。
本手法を用いたリアルタイムな品質管理・制御を行うことで、コスト削減にとどまらず、環境負荷や事故リスクの低減も可能となり、医薬品生産プロセスの効率化を実現することが期待される。
※5 各工程が独立し、一つの工程終了後に生産物をサンプリングして品質を確認し、次の工程に移行する生産方法。