『2006 堀場雅夫賞』受賞者決定/授賞式は10月17日

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(株)堀場製作所は、「分析計測技術」に関する国内外の大学または公的研究機関の研究開発者対象の奨励賞として一昨年創設した『堀場雅夫賞』の2006年受賞者をこのほど決定しました。

この賞の3回目となる今回の選考テーマは、“X線分析”です。本年4月から5月にかけて公募し、海外含め40件の応募がありました。“X線分析”分野で権威の先生など8名で構成する審査委員会が、将来性や応募研究の独創性やユニークな計測機器への発展性に重点を置いて評価し、以下の3名に決定しました。

また、審査委員会において、下記特別賞受賞者につきましは、その研究業績から、本賞の授賞対象とはなりませんが、ご本人にとっては全くの新規分野への挑戦であり、また医療分野への大きな貢献が期待できるため、堀場雅夫賞特別賞を設定し授与することとしました。

授賞式ならびに受賞者と学究界からの参加者とのセッションなどを、当社創業記念日でもある10月17日(火)京都大学 芝蘭会館で行います。


〈受賞者と受賞研究内容〉

(2006 堀場雅夫賞受賞者)

●財団法人 高輝度光科学研究センター
 寺田 靖子(てらだ やすこ)氏
『高エネルギー放射光を用いたマイクロビーム蛍光X線分析法の革新とその応用』

●日本女子大学
 林 久史(はやし ひさし)氏
『共鳴X線非弾性散乱を利用した新しいX線分光法の開発』

●University of Antwerp Dr. JANSSENS, Koen
 (アントワープ大学 コーン・ヤンセンス)氏
『X-ray based speciation of major and trace constituents in heterogeneous materials of environmental and cultural heritage origin』

(特別賞受賞者)

●東京理科大学
 安藤 正海(あんどう まさみ)氏
『乳がんの早期診断をめざすシステム開発』


〈堀場雅夫賞について〉

本賞は計測技術発展のため、一昨年5月に当社創業者の名前を冠して創設した、社外対象の研究奨励賞です。毎回、対象テーマを計測の要素技術から選定し、単なる助成金にとどまらず受賞研究の実用化を支援するのが特徴です。HORIBAグループ発展の原動力となった基盤技術、第1回の「pH計測」、第 2回の「赤外線計測」に続き、弊社の元素分析における主幹技術である「X線計測」を本年のテーマとし、X線計測に焦点を当てることで、学術的・産業的にも価値の高い同技術の可能性を追求していきます。本年4月1日から5月31日まで公募し、計40件(国内30件/海外10件)の応募がありました。

2006年の本賞受賞者3名は、その応募の中から、画期的でユニークな分析・計測技術の創生が期待される研究開発に従事し、将来の分析計測技術発展の担い手になるという観点で、実績と将来性を審査委員会で審議し選考されたものです。

なお、次回2007年の本賞対象テーマは、「医用関連技術」の予定です。


[2006 堀場雅夫賞 審査委員会 委員一覧](敬称略、順不同)

名誉審査委員長:
    堀場 雅夫(堀場製作所 最高顧問)
審査委員長:
    堀場 厚(堀場製作所 代表取締役社長)
副審査委員長:
    東京大学 名誉教授 合志 陽一
審査委員:
    京都大学大学院 工学研究科 教授 河合 潤
    大阪電気通信大学大学院 工学研究科 教授 谷口 一雄
    東京理科大学 理学部 応用化学科 教授 中井 泉
    独立行政法人 物質・材料研究機構フェロー 中澤 弘基
    Los Alamos National Laboratory, USA Dr. George J. Havrilla
    堀場製作所 科学システム統括部長 大堀 謙一
    同社 同統括部 XGTプロジェクト部長 駒谷 慎太郎




〈授賞式について〉

本賞の授賞式は、創業者堀場雅夫の母校で、創業当時「産学連携」の礎となった京都大学の施設内(芝蘭会館)で行います。受賞者による講演やポスターセッションを通じて、研究内容を広く社会にアピールする予定です。
日程:2006年10月17日(火)
場所:京都大学芝蘭会館(京都市左京区吉田牛の宮11-1/TEL 075-771-0958)

【2006 堀場雅夫賞授賞式プログラム(予定)】
第一部:受賞記念セミナー(15:00〜)
・受賞者講演:受賞者の3名、特別受賞者1名
・堀場雅夫講演:当社最高顧問 堀場雅夫 医学博士(堀場雅夫賞 名誉審査委員長)
・ポスターセッション(受賞者の研究内容についてのポスタープレゼンテーション)
第二部:授賞式(17:30〜)
・受賞研究紹介
・賞状・副賞授与
第三部:受賞記念パーティー(18:15〜)


参考資料

〈受賞者ご紹介〉

● 財団法人高輝度光科学研究センター 主幹研究員 寺田靖子氏(35歳)
「高エネルギー放射光を用いたマイクロビーム蛍光X線分析法の革新とその応用」
大型放射光施設(SPring-8)で得られる高エネルギーX線領域での集光光学素子の開発を行ない、1マイクロメートルの微小ビームの形成に成功した。その応用により、カドミウムを蓄積する植物において各組織内の元素分布が明らかになるなど、蛍光X線による微量重金属元素の分析が可能であることを実証した。また、高エネルギー放射光蛍光X線分析の手法を開発することで、希土類元素などの微量重元素の非破壊高感度分析を可能とし、和歌山ヒ素カレー事件の亜ヒ酸鑑定など、鑑識・環境・文化財などの各分野において具体的成果をあげた。

● 日本女子大学 理学部物質生物科学科 助教授 林 久史氏(42歳)
「共鳴X線非弾性散乱を利用した新しいX線分光法の開発」
共鳴X線非弾性散乱の高精度測定を通じて、内殻寿命幅による分解能制限なしに、X線吸収微細構造(XAFS)スペクトルを求める方法を開発した先駆的研究。最近では、世界最高感度の微弱発光分光システムを独自に作り上げ、それを放射光施設SPring-8に持ち込み、「寿命幅制限のない価数選別 XAFS」や「寿命幅制限のないスピン選別XAFS」測定など、従来のXAFS分光法では不可能だったことを次々と実現させている。本測定・解析法は、高温超電導材料や磁性材料、機能性材料全般について、様々な状態変化を追う極めて強力なツールに発展する可能性がある。

● University of Antwerp Dr. JANSSENS, Koen(42歳)
「X-ray based speciation of major and trace constituents in heterogeneous materials of environmental and cultural heritage origin」
「種々の環境試料や文化遺産試料における主成分並びに微量成分のX線による化学種の同定」
X線管及び放射光を光源としたマイクロビームX線分析の手法と装置開発を行い、種々の環境試料や文化遺産の主成分並びに微量成分の化学種の同定に応用した。例えば、ローマ時代から中世の微小ガラス試料中の極微量元素の定量や、さらにX線断層撮影像と組み合わせることで、放射性粒子状試料の化学結合状態の特定をも可能とした。

最近では、互いに相補的な手法である微小蛍光X線分析と共焦点微小ラマン分光法を組合わせたコンパクトラマン-蛍光X線分析装置を開発し、犯罪捜査の物的証拠や土壌、文化遺産などで、塗料や顔料の現場分析に極めて有用であることを実証した。

【特別賞受賞者】
● 東京理科大学 教授 安藤正海氏(64歳)
「乳ガンの早期診断をめざすシステム開発」
放射光を用いて生体軟組織のX線屈折コントラスト像を得るX線暗視野法を応用し、乳がんなどの早期診断システムの開発を行っている。X線暗視野法は、シリコン単結晶の非対称反射と患部の後方に置かれたシリコンの角度分析板により、患部で屈折を起こしたX線のみを取り出すもので、がん組織と正常組織の僅かな屈折率の違いを高いコントラストで描画できる。また、屈折像からCT像を得るアルゴリズムを開発し、非浸潤性乳管がんの3次元像の病理診断スライス像との非常に良い一致が見られた。