『2007 堀場雅夫賞』受賞者決定

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当社は、「分析計測技術」に関する国内外の大学または公的研究機関の研究開発者対象の奨励賞として2003年に創設した『堀場雅夫賞』の2007年受賞者をこのほど決定しました。

この賞の4回目となる今回の選考テーマは、“医療”に関する細胞生体粒子計測です。本年4月から5月にかけて公募し、海外含め29件の応募がありました。“細胞生体粒子計測”分野で権威の先生など7名で構成する審査委員会が、将来性や応募研究の独創性やユニークな計測機器への発展性に重点を置いて評価し、以下の3名に決定しました。

授賞記念セミナーならびに授賞式は受賞者と学究界からの参加者をご招待し、当社創業記念日でもある10月17日(水)京都大学 芝蘭会館で行います。

〈受賞者と受賞研究内容〉

  • 京都工芸繊維大学大学院
    粟辻 安浩(あわつじ やすひろ)氏
    『並列ディジタルホログラフィック顕微鏡法による細胞の3次元動画像計測法およびその装置の開発』
     
  • 海洋研究開発機構 極限環境生物圏研究センター
    阿部 文快(あべ ふみよし)氏
    『圧力で探る生体膜と膜タンパク質のダイナミクス研究』
     
  • Kansas State University
    CULBERTSON, Christopher 氏
    (米国カンザス州立大学 カルバートソン,クリストファー)
    『Rapid Analysis of Individual T-Lymphocyte Cells on Microfluidic Devices』

 

〈堀場雅夫賞について〉
本賞は計測技術発展のため、2003年5月に当社創業者の名前を冠して創設した、社外対象の研究奨励賞です。毎回、対象テーマを計測の要素技術から選定し、単なる助成金にとどまらず受賞研究の実用化を支援するのが特徴です。HORIBAグループ発展の原動力となった基盤技術、第1回の「pH計測」、第2回の「赤外線計測」、第3回の「X線計測」に続き、弊社の医用計測における主幹技術である「細胞生体粒子計測」を本年のテーマとし、細胞生体粒子計測に焦点を当てることで、学術的・産業的にも価値の高い同技術の可能性を追求しました。本年4月1日から5月31日まで公募し、計29件(国内20件/海外9件)の応募がありました。

2007年の本賞受賞者3名は、その応募の中から、画期的でユニークな分析・計測技術の創生が期待される研究開発に従事し、将来の分析計測技術発展の担い手になるという観点で、実績と将来性を審査委員会で審議し選考されたものです。

[2007 堀場雅夫賞 審査委員会 委員一覧](敬称略、順不同)

名誉審査委員長:
   堀場 雅夫(堀場製作所 最高顧問)
審査委員長:
   堀場 厚(堀場製作所 代表取締役社長)
副審査委員長:
   京都大学大学院 医学研究科
   臨床病態解析学講座 教授 一山 智
審査委員:
   京都大学大学院 工学研究科
   マイクロエンジニアリング専攻 教授 小寺 秀俊
   東京大学大学院 医学系研究科
   臨床病態検査医学 教授 矢冨 裕
   国立遺伝子研究所 総合研究大学院大学
   生命科学研究科 教授 嶋本 伸雄
   株式会社 堀場製作所 医用システム統括部
   医用システム開発部 部長 奥 成博
   同社 科学システム統括部 分析技術開発部
   副部長 伊串 達夫
   Dr. Philippe Nerin, Head of IVD Instruments,
   Research Department HORIBA ABX
特別審査委員:
   Dr. Brian Herman, Vice President for Reseach,
   Professor, Cellular and Structural Biology University
   of Texas Health Science Center


〈授賞式について〉
本賞の授賞式は、創業者堀場雅夫の母校で、創業当時「産学連携」の礎となった京都大学の施設内(芝蘭会館)で行います。受賞者による講演やポスターセッションを通じて、研究内容を広く社会にアピールする予定です。

日程:
   2007年10月17日(水)
場所:
   京都大学芝蘭会館
  (京都市左京区吉田牛の宮11-1/TEL 075-771-0958)

参考資料

〈受賞者ご紹介〉

  • 京都工芸繊維大学大学院
    准教授 粟辻 安浩氏(39歳)
    「並列ディジタルホログラフィック顕微鏡法による細胞の3次元動画像計測法およびその装置の開発」

    細胞や生体粒子の瞬時3次元画像計測を実現するために、並列位相シフトディジタルホログラフィを発明し,その原理を実証した。この技術は、面内に異なる位相を持つ光波を用いて、一瞬に形成される干渉縞画像を撮影して、任意の奥行き位置での焦点の合った画像を画像処理で再生するものである。この技術により、高速で動く被写体の3次元動画像計測を実現できるようになった。また、本技術に複数の波長のレーザ光を用いることにより、瞬時3次元カラー画像計測の有効性も確認した。この技術に基づくシステムは医薬・診断方法や食品検査など産業応用への大きな貢献が期待される。
     
  • 海洋研究開発機構 極限環境生物圏研究センター
    グループリーダー 阿部 文快氏(40歳)
    「圧力で探る生体膜と膜タンパク質のダイナミクス研究」

    数百気圧もの高圧力は細胞にどのような影響を及ぼすのかについて、酵母菌をモデルに「圧力生理学」という新たな着想から研究を行った。その結果、生命維持において重要なトリプトファン輸送の特殊性を、圧力研究の観点から世界で初めて体系化した。また、生化学と物理計測の融合を図り、細胞膜上に存在するアミノ酸輸送体の動態を体積変化として定量することに初めて成功した。さらに生体膜構造については蛍光異方性プローブを用いた蛍光寿命測定を実施し、ナノ秒レンジのダイナミックな動きをとらえた。今後、顕微鏡下で蛍光寿命測定を実現する新システムを実現することで、医学・基礎生物学への貢献が大いに期待される。
     
  • Kansas State University
    CULBERTSON, Christopher氏(41歳)
    「Rapid Analysis of Individual T-Lymphocyte Cells on Microfluidic Devices」
    「微細流路デバイスにおけるT-リンパ細胞の迅速分析」

    微小流路デバイスを利用することにより、T-リンパ球の培養、1細胞の操作、細胞溶解、内容物の分離分析のすべてが行えるデバイスを実現した。このデバイスは複数の微細流路を機能的にデザインしたチップであり、微細化の効果により従来の技術に対して分離の高効率化、強電場の利用が可能である。本研究のアプリケーションとして細胞中の酵素活性のモニターと酵素活性化の研究を目指している。また、将来的には生体細胞と病気との関連に分析することにより、癌などの病気の初期段階を検査できる可能性がある。