微生物の活動状態を画像化・数値化する測定装置の開発を開始

|   ニュースリリース

(株)堀場製作所(本社・京都市,社長・堀場 厚)は、RITE(地球環境産業技術研究機構)の技術開発促進事業に参加し、光走査型pH画像測定技術を使って、微生物の活動状態を画像表示し、活動の度合いを数値化できる、微生物活性度測定装置の開発に、このほど着手しました。
この技術は、微生物による環境浄化技術(バイオレメディエイション)において、現在数日から10日以上要している最適な微生物の選定や浄化の条件設定を、数時間から半日で可能とするものです。

本技術の開発は、RITEの地球環境保全につながる技術の開発を支援する、「技術開発促進事業」の本年度の技術開発テーマのひとつに選定されたものです。RITEとの共同開発として、当社にRITE分室を置き、11名のスタッフ,3年間で約2億8千万円の事業費で本月より本格的にスタートしました。なお、当社としては、1991年度の自動車排ガス測定技術に次いで、本研究が2つ目の共同開発テーマです。

バイオ技術を応用した、排水中石油系成分の低減について
微生物の力により、工場からの石油系を含んだ排水や石油漏出によって生じる環境負荷を低減する技術(バイオレメディエイション)が研究されています。この浄化技術は、廃油などの汚染物質を栄養分として食べる微生物を使って排水を浄化しようとするもので、個々の汚染に応じた最適の微生物を選び出す(スクリーニング)と、その微生物が効率良く分解を行う条件(温度や窒素量など)を確立しコントロールすることがポイントとなります。現状では、膨大な時間を要して微生物を選別し、実際に浄化工程を完了しないと、その微生物が有効であったか、または、反応槽の環境条件が適切であったかといった結果がわからず、数日から10日以上の時間を要しています。

今回開発する、微生物活性度測定装置について
微生物が廃油などの汚染物質を分解(摂取・排出)する過程で、微生物(数10ミクロン以下)の回りの非常に狭い範囲で、pH(水素イオン濃度)値が変化します。pH値を二次元で測定し分布変化を画像化する技術(光走査型pH画像測定技術)を開発し、その上で、得られた画像を基に、微生物の活動状況を数値で表します。微生物が汚染物質の浄化を行っているかどうかをリアルタイムに知り、さらに、微生物が分解活動をどのくらいのスピードで行っているか判明するまでに、従来数日から10日以上要していた時間を、数時間から半日程度に大幅短縮がはかれます。石油系排水処理の効率化,処理能力向上に寄与します。


参考資料

  • RITE(=地球環境産業技術研究機構,本部:京都府木津町,理事長:小林 庄一郎)地球環境の保全に役立つ産業技術の開発を目指し、各種の調査・研究を行っている。1990年7月設立。
    TEL.0774-75-2302(担当課:研究業務課)
  • 地球環境保全関係産業技術開発促進事業
    民間における地球環境産業技術の開発・普及を促進するため、民間企業とRITEが共同で実用化に向けた技術開発を進める制度。研究事業費の半分をRITEが負担し、残り半分は企業側が自己負担。
  • 光走査型pH画像測定
    半導体基板の一方に、水素イオンにだけ反応する物質をのせ、反対面に光を照射すると、接触する水素イオン量(pH)に応じた光電流が検出できる。光照射を縦横に走査することにより、接触する水素イオン量を、二次元の画像として表せる。
  • スクリーニング
    微生物を各種プロセスに適用させる場合、どの微生物が最適かを探し出す必要がある。この過程をスクリーニングと言う。
  • 活動状態
    微生物が、活動(栄養分を摂取,老廃物を排出)することにより、汚染浄化などのプロセスを行っている状態。また、微生物を存在させる環境の温度,水素イオン濃度,栄養分量などが、微生物の活動状態を左右する。活動状態が最高となる条件を、最適活動条件と言う。




(お問い合わせ先)
(株)堀場製作所
〒601京都市南区吉祥院宮の東町2
TEL.075-313-8121
本リリースに関するお問い合わせ→広報室(内線2011/075−315−6776直通)
本研究に関するお問い合わせ先→開発センター(内線3820)

HORIBAグループ企業情報