超微小粒子専用の粒径分布測定装置

|   ニュースリリース

当社は、超微小粒子専用の粒径分布測定装置「LB−500」を開発しました。
電子顕微鏡などを使った目視計測をされているお客様には、短時間に自動的に粒径分布測定を提供します。また業界で初めて、「高濃度測定対応」および「温度調節機能」を標準装備。粒径測定機をお使いのお客様には、希釈や換算など煩わしい作業が必要なく、簡単操作で測定できます。研究開発分野でニーズが高まっている、超微小領域の粒径、中でも電子・半導体分野で要求される"ナノ素材"の測定に適応する装置です。
 

  • 標準価格:780万円
  • 販売開始:9月1日
  • 初年度販売目標台数:50台



〈 開 発 の 背 景 〉
カラー液晶パネルに使用される顔料や、半導体ウエハやハードディスクの研磨材など、100nm(=0.1μm)以下の"ナノ素材”は、ますます微小化の方向にあり、分析ニーズは3年前に比べ1.5倍に増えています。加えてこれらの材料は、温度や添加剤濃度の影響を受けて粒径分布に変化がおこりやすいため、特定の温度でかつ原液のまま測定したいというニーズがあります。
一方、粒径分布測定装置市場では、レーザ光を試料に当て出てくる散乱光を検出するレーザ回折/散乱式が主流ですが、0.01μm以下の超微小粒子になると、その原理上計測することができません。そのため、電子顕微鏡といった目視観察による解析や、本来分子量や分子形態を解析するための装置を応用した粒径測定が用いられていますが、一般的に大型で高価です。また、粒径測定専用に設計された装置も販売されていますが、温度をはじめとする条件設定が必要なため、取扱いが難しく技術を要します。さらに高濃度の場合測定できないといった問題もあります。
このようなことから、先端材料の研究開発分野では、取扱いが簡単で測定時間も短い超微細粒子対応の計測装置が求められつつあります。そこで、当社は粒子の運動速度を基に粒径分布を測定する動的光散乱式を原理に採用した、超微小専用の装置を開発しました。

〈 開 発 の 狙 い 〉
開発にあたっては、1.微小粒径測定に要求されるナノ領域をカバー2.簡便な操作で自動定量測定と、目視や代用装置で問題になっていた取り扱いの複雑さや、精度の改善をポイントにしました。そのうえで、お客様が専用機に求められる条件で一番多い、「希釈せず原液そのままで測定」というニーズを注視。高濃度測定に対応します。加えて、試料環境の温度を可変できる"温度制御機能"も標準装備。補正や試料調整などの前処理なしに信頼性の高いデータを提供します。さらに、本体の設置面積はA3サイズの省スペースなので、種々の装置がある研究室内でも場所をとりません。

当社としては、本計測装置業界で主流のレーザ回折/散乱式の既存製品(0.02μm〜2mm)に加えて今回、3nm〜6μmの超微小粒径測定専用機が加わることにより、「ナノからミリまで100万倍」の超ワイドレンジに対応と、粉体測定ニーズを100%カバーします。


〈 主 な 特 長 〉

  1. 超微小粒子用で、先端材料の研究開発ニーズに対応
    測定範囲:3nm〜6μmと超微小領域専用機。操作はウィンドウズで簡単。
  2. 高濃度測定可能。希釈せずに試料を直接測定
    周波数解析法を用いた独自の演算手法と、新設計の光学系を採用し、高濃度試料でも希釈せずにダイレクト測定が可能。
  3. 温度制御機能(20〜70℃)により、高信頼性のデータを提供
    任意の温度に可変する温度制御機能を標準装備。温度による粒径演算補正が不要。


〈 主 な 仕 様 〉
測定原理:動的光散乱式(解析方法は、周波数解析法)
測定範囲:3nm〜6μm
測定時間:約2分
試料設定温度範囲:20〜70℃
外形寸法:300(W)×420(D)×320(H)mm(本体)
質量:約18kg(本体)
なお、本製品は、本体とパソコン、プリンターの3つから構成


〈 測 定 分 野 例 〉
電気・電子−半導体ウエハやハードディスクの研磨材、カラー液晶用材料の研究開発。塗料・顔料−精密印刷用インク等の研究開発。
薬品・化粧品−薬品、化粧品のファンデーションや乳液などの研究開発。


〈開発者からの一言〉

  • 最も苦労した点
    解析方法の、周波数解析法の演算です。数μm以下の微小粒径の測定には、測定原理として動的光散乱式が適しています。この解析方法には、光子相関法と周波数解析法の2種類がありますが、測定濃度範囲を広くできる周波数解析法を採用しました。しかし、粒径測定専用の演算手法をつくりだすまで、限りない試行錯誤の連続でした。開発期間3年の内、7割はこの試行錯誤に費やしました。
  • お客様にぜひ使っていただきたい理由
    一部の海外メーカーから、品質管理用として高濃度対応の装置が販売されていますが、温度制御ができないので研究開発には適しません。LB−500は、測定時間が短く、高濃度対応の粒子径分布測定装置としては、業界で初めて温度制御機能を搭載しました。従来の微小粒子測定装置では、対応できなかった市場ニーズに応え、きっとご満足いただけると思います。



参考資料

  • ナノ素材
    当社では、100nm以下の先端材料をナノ素材と定義している。具体的には、測定分野例にあげたものにくわえ、医薬品や化粧品の「マイクロエマルジョン」と呼ばれる材料の測定があげられる。これは、化粧品の透明感や高級感を演出したり、薬剤で皮膚の浸透を制御するために必要な先端技術のひとつ。
  • 高濃度測定対応
    先端材料の研究開発では、従来、微小粒子を測定するとき、試料の希釈が必要だった。本製品は「原液のままで測定できる(高濃度測定)」をコンセプトに、光学系・電気系・ソフトウェアを開発。これにより、試料を希釈する必要がなく、原液での測定に対応。実際の使用条件のまま、短時間に測定結果を得ることが可能になった。
  • 温度制御機能
    微小粒子になると粒子径の分布は、温度によって敏感に変化するものが多くなり、これらを扱う最先端の研究開発部門では、測定時の試料の温度が製品の品質を決めるうえで重要な要因となる。本製品は、高濃度対応の粒子径分布測定装置としては、業界で初めて温度制御機能を備えた。安定した高精度な測定によって、より優れた先端材料の研究開発に寄与する。
  • 半導体ウエハやハードディスクの研磨装置と研磨材
    技術の進化と共に、半導体ウエハやハードディスク等の加工技術は微細化している。これらの表面の粗さを小さくした研磨材の研究開発が進められている。
  • レーザ回折/散乱式粒径測定装置
    レーザ光を照射し、それによる光の散乱角度と強度の関係を複数の検出器で検出することで、粒径と分布の広がりをもとめる装置。現在、粒径分布測定装置の主流であり、μm単位の粒径の測定に適する。
  • 動的光散乱式
    粒子は、液体中では不規則に運動している(ブラウン運動)。その粒子に一定波長のレーザ光を照射、散乱させる。散乱した光の周波数は、粒子の不規則な運動によりわずかにゆらぐ。大きい粒子はゆっくり動き、小さい粒子は速く動くため、このゆらぎの大きさと、粒子の大きさの関係(動的光散乱理論)を用い、粒径を測定する。本方式は、数μm以下の微小粒子の測定に適する。光子相関法や周波数解析法もこの原理を採用している。
  • 周波数解析法
    照射した光を波としてとらえ、その変化量を測定する方法。当社では、光子相関法で使われる相関器を使わずに(測定に時間がかかり、対応する濃度の範囲が狭いため)、こちらの方法を採用。当社の長年のデータの蓄積とノウハウを活かし独自の演算手法を開発した。
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