サービス > 受託分析・試験サービス > 機能性材料/先端材料 > DLC 膜の評価
ダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜はダイヤモンドとグラファイトの中間に位置する材料です。さまざまな手法で作製でき、多様な構成や構造、物性を有するものが存在します。そのため、用途も幅広く、高硬度や耐摩耗性に加えて、低摩擦係数や耐食性、ガスバリア性などが着目され、工具 や光学部品の金型、各種摺動部品、医療関係材料などの分野への応用が広がっています。このようなさまざまな物性の中から、欲しいDLC膜、用途にあったDLC膜を選択することや、作製すること、 管理するためには、DLC の構造や物性の評価が非常に重要です。ここでは、用途の異なる3種類のDLC膜の分光エリプソメーターによる評価例を紹介します。
分光エリプソメトリーは、入射光と反射光の偏光状態の変化を波長ごとに計測し、得られた測定データをもとに光学モデルを作成、フィッティング計算をすることにより薄膜の膜厚および光学定数(屈折率n、消衰係数k)を非破壊、非接触で求める分析手法です。この手法を行う装置を分光エリプソメーターといいます。
入射角度は70度、波長範囲は250~830nmで測定を行いました。解析用光学モデルは、DLC膜上に表面ラフネス層を設定しています。
図2に用途の異なる3種類の DLC試料の写真と、その光学定数スペクトルを示します。 ここから、用途によって見た目の色だけでなく、光学定数スペクトルも大きく異なっていることがわかります。光学コーティングは、 可視域で消衰係数が完全にゼロとなっているため膜は絶縁性が高く、透明に見えます。
透過性が重要となる光学コーティングとしては適切な膜ができていることが、この光学定数スペクトルから確認できます。生体・医療用は、吸収のある膜の方が細胞の増殖が良いことが研究から知られています。このサンプルでは可視域で消衰係数が存在するため、膜は茶色に見えま す。自動車用電池は可視域における消衰係数が他の2つの用途に比べて高いため膜は黒く見えます。また低エネルギー側でも依然として吸収が見られることから、絶縁性が低くなっており、伝導 性、熱伝導性が良いものであると予想できます。このように用途によって適切な膜ができているかどうかを光学特性から確認することが可能です。
分光エリプソメーターを用いることで、DLC膜のさまざまな物性を非破壊・非接触で評価することが可能です。