新エネルギーにアンモニア?今後期待されるアンモニアの活用について

アンモニアといえば、「異臭がする」「肥料に使われている」というイメージがありますが、最近では新しいエネルギー源として注目が高まっています。
今回は、そんなアンモニアがどのように利用されているのかをご紹介いたします。


実は身近で使われているアンモニア

アンモニア(NH3)は、常温では無色で刺激臭のある気体であり、窒素(N)と水素(H)で構成されている化合物です。

肥料のイメージが強いアンモニアですが、アンモニアの用途としては、肥料用途のほかに工業用にも使われています。実は私たちの身の回りで使われているモノの基礎原料でもあります。

  • 肥料用
    世界全体でのアンモニアの用途割合を見ると約8割と、ほとんどが肥料として使用消費されています。世界人口が今後も増加し続ける中で、食料を確保することを考えると今後もアンモニアは重要な原料となるでしょう。
  • 工業用
    残りの2割は工業用として使用されています。例えば、家電や衣服などに使用されているナイロンの中間原料やアクリル繊維の主原料になっています。
     


新エネルギーでの活躍が期待されるアンモニア?

政府は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする脱炭素社会の実現を宣言しています。その解決策として注目されているのがアンモニアです。
アンモニアは燃やしてもCO2を排出しないのが特徴で、エネルギーを生み出すうえで活用できないか検討が進められています。今回は、特に研究開発が進められている4つの分野についてご紹介します。

1) カーボンフリーなエネルギー燃料
アンモニアは燃やしてもCO2を出さないカーボンフリーの物質です。その性質を使って、2つの方法が検討されています。

  • 混ぜて燃やす(混焼)
    石炭火力発電にアンモニアを混ぜて燃やすだけでCO2の排出を抑制できます。国内の石炭火力発電所すべてに対して20%混焼をすると年間約4,000万トンの削減ができると試算されています。
  • 直接燃やす(専焼)
    アンモニアだけを燃焼して発電をする技術も開発が始まっています。国内の石炭火力発電がすべてアンモニアのみの発電に置き換えられれば、CO2排出削減量は約2億トンにもなると見込まれています。
     
ケース20%混焼
(※1)
50%混焼
(※1)
専焼
(※1)
(参考)
1基20%混焼
CO2
排出削減量
(※2)
約4,000万トン約1億トン約2億トン約100万トン
アンモニア
需要量
約2,000万トン約5,000万トン約1億トン約50万トン

※1 国内の大手電力会社が保有する全石炭火力発電で、混焼/専焼を実施したケースで試算。
※2 日本の二酸化炭素排出量は約12億トン、うち電力部門は約4億トン

2) ガスタービン発電
ガスタービン発電での活用の研究が進められています。ガスタービン発電は、液化天然ガスなどの燃料を燃やし、その燃焼ガスでタービンを回すことで電気を発生させます。その際に使用する燃料とアンモニアを混焼させたり、アンモニアだけを専焼させたりし発電する方法が検討されています。

3) 水素キャリア
次世代エネルギーである水素を輸送する手段として検討されています。アンモニアは水素分子を含む物質であるため、アンモニアに変換して輸送し、利用する際に水素に戻すという方法が検討されています。水素はまだ輸送技術が十分に確立されていないですが、アンモニアはすでに安全に輸送する技術・サプライチェーンが確立されているため有効な方法とされています。

4) 燃料電池用の水素の置き換え
固体酸化物燃料電池と呼ばれる燃料電池に水素が利用されています。その水素をアンモニアに置き換える研究も進められています。


まとめ

アンモニアは肥料だけでなく、私たちの身の回りの製品に多く使われています。それだけでなく、脱炭素社会へ向けたカーボンフリーのエネルギー燃料としても活用に期待が高まっています。アンモニアの混焼・専焼によるCO2排出削減、次世代エネルギーとして使用される水素キャリア、水素との代替えにも活用できないか研究開発がなされています。これまでもアンモニアは私たちの生活に欠かせないものでしたが、増々その重要性が高まってきているようです。そうなると、アンモニアの使用を最適化させるためにアンモニア測定による管理なども今後必要になっていくかもしれません。

「アンモニアが“燃料”になる?!(前編)~身近だけど実は知らないアンモニアの利用先」
「アンモニアが“燃料”になる?!(後編)~カーボンフリーのアンモニア火力発電」
(資源エネルギー庁)をもとに作成


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