水質総量規制とは?

東京湾、伊勢湾、大阪湾・瀬戸内海の3海域と、当該海域へ流入している河川に排水している事業所では、日々の放流水中のCOD、窒素、りんの監視が義務付けられています。その理由は水質総量規制という法制度によるものであることは御存じかと思いますが「そもそも、それって何のための、どんな法制度?」と疑問を抱いている方は多いのではないでしょうか。そこで今回は水質総量規制について知りたい方向けに、大きく分けて法制度と測定項目の項目について、わかりやすく紹介いたします。

目次
・水質総量規制は人々の生活環境を守る「水質汚濁防止法」の一部!
・水質総量規制とは?
・測定項目~有機性汚濁物質量~
・測定項目~窒素・りん~

 

水質総量規制は人々の生活環境を守る「水質汚濁防止法」の一部! 

水質汚濁防止法では、人々の生活環境を守るため、工場・事業所から排出される水質汚濁物質について物質の種類ごとに排水基準が定められています。水質汚濁物質を排出する工場・下水処理場などの事業者は、これらの基準を守らなければなりません。違反すると、故意・過失問わず罰せられます。水質汚濁防止法による規制基準は、大別すると①一律排水基準②上乗せ排水基準③総量規制基準の3つがあります。このうち③総量規制基準が、今回のテーマである水質総量規制です。

 

 

水質総量規制とは?

水質総量規制は、閉鎖性海域(東京湾・伊勢湾・大阪湾・瀬戸内海)に流入する有機性汚濁物質の総量を監視する制度です。水質総量規制は、5~6年毎に改正されます。1979年の第一次水質総量規制では、COD(化学的酸素要求量)によって算出される有機性汚濁物質のみが規制対象となっていました。しかし2001年の第5次総量規制では、窒素・りんが、規制対象として新たに追加されました。

 

 

COD、窒素、りんの汚濁負荷量測定義務は下記表の通りです。これらの測定・負荷量の演算はJIS規格に基づく検定方法によって行われ、その結果を記録する必要があります。日平均水量が400㎥以上の事業所は、毎日手分析するのは費用・手間ともにかかるため、事実上、COD・全窒素・全りんの自動測定装置の設置が必要となります。

 

 

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測定項目~有機性汚濁物質量~

水質総量規制では、水の汚れの原因となる有機性汚濁物質量(CODによって算出される)や、赤潮・青潮を引き起こす窒素・りんが測定項目として指定されています。まず、有機性汚濁物質の指標となるCODについて説明します。COD(Chemical Oxygen Demand)は日本語では「化学的酸素要求量」と呼びます。その名の通り、CODは水中に含まれる有機物が酸化剤によって分解される際に必要な酸素の量のことです。試料水に酸化剤を加え有機物質・無機物質を分解するときに水1ℓ当り何mgの酸素を消費するのかを表すことで、その水の汚れ具合を算出します。

 

 

これに対し、BOD(Biochemical Oxygen Demand)、日本語で「生物化学的酸素要求量」があります。こちらは、水中の好気性の微生物によって消費される水1ℓ当り何mgの酸素を消費するのかを表すことで、その水の汚れ具合を算出します。環境基準は、河川についてはBOD値で定められ、湖沼や、総量規制の対象である閉鎖性水域についてはCOD値で定められています。

 

測定項目~窒素・りん~

続いて窒素・りんについて説明します。窒素・りんは水中の肥料分です。適切な量であれば、藻類や植物プランクトンをバランスよく育成し、それを捕食する魚介類にとっても適切な水域環境を保つことができます。しかし、窒素・りんが過剰な状態(富栄養化)の場合、植物プランクトンが異常発生し、海水が変色する赤潮・アオコという現象が起きます。

この時、水中の溶存酸素が減少するため、酸素を必要とする好気性微生物の代わりに酸素を必要としない嫌気性微生物が汚れを分解するようになり、硫化水素やアンモニアといった悪臭が発生します。また水中の溶存酸素が少ないことから、魚介類などの水生生物が死滅し、漁業にも深刻な被害を引き起こします。

赤潮アオコ

 

 

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