比較電極は、ガラス電極に発生した電位差を測定するためにガラス電極と組み合わせて用いられるもので、水溶液のpHと無関係に一定の電位を示します。
比較電極は、液絡部、内部液、補充口、比較電極支持管、比較電極内部液、内部電極および電極リード線などから構成されています。ほとんどの場合、内部電極には銀・塩化銀電極が、内部液には塩化カリウム溶液が用いられています。
内部液とサンプルとが接する部分を「液絡部」と言いますが、これには下の図に示しているように、直径数10マイクロメートルの穴があいているピンホール型、すり合わせ面を持つはかまをはいたスリーブ型、異種の物質を接合させたセラミック型あるいはファイバー型などがあります。ピンホール型には、内部液の流出が少ないという利点がありますが、ともすると液間電位を生じやすい傾向があります。スリーブ型は、洗浄が容易ですが、内部液の流出が多いという欠点があります。セラミック型やファイバー型は、内部液の流出は少ないのですが、サンプルの吸着を起こしやすい傾向があります。これらの長短所を補うべく2種を組み合わせたのがダブルジャンクション型です。
液間電位差は、液絡部に多かれ少なかれ発生します。
溶液の種類、温度または液絡部の構造によって異なります。
組成の違う溶液が互いに接触したとき、双方の陽イオン、陰イオンは活量が異なり両液の接触面で拡散します。ところで、双方のイオンはそれぞれ大きさなどが違うため、拡散の移動速度に差があります。
そこで、拡散の進行によって両液の接触面に電荷の分離が起こり、電位差が生じると考えられます。この電位差は移動速度の速いイオンを減速し、遅いものを加速するように働くため、最終的には両液の接触面で陽イオン、陰イオンの移動速度が等しくなった状態で釣り合います。この釣り合った状態での両液の接触面での電位差を、「液間電位差」と言います。
液間電位差が大きいと、比較電極の基準電位が変動することから、水素電極法、ガラス電極法ともに、測定値が著しく不正確となります。
ガラス電極に発生する起電力は、水溶液の温度によって変化します。
「温度補償」とは、この温度による起電力の変化を補償するものです。ここで誤解しないように注意しなければならないことは、温度によるpH値の変化と、温度補償はまったく無関係ということです。
そのため、pHを測定する場合、たとえ自動温度補償方式のpH計を用いても、pH値とともに必ずそのときのサンプルの温度を記録しておかないと、その測定結果がまったく意味のないものになってしまうことがあります。