産業・生活を支えるバイオテクノロジ

バイオテクノロジとは、「生物が有する高度な機能を人間の活動に役立てる技術」と定義され、我々人間の生活にさまざまな形で利用されています。
その姿は、直接私たちの目に見えるものから、意外なところで利用されるものまで様々あり、もはやバイオテクノロジなくして私たちの生活が成り立たない状態です。

たとえば身近な製品には、醸造食品(日本酒、ワイン、ビール、食酢、しょうゆ、味噌など)、発酵食品(チーズ、ヨーグルト、納豆)などの伝統食品があります。その他にもアミノ酸、ビタミン類、ホルモン類なども微生物を利用した生産物として私たちの生活で利用されています。
また、都市下水や有機性の産業廃水の処理には活性汚泥法が使用されますが、これも微生物の代謝反応によって有機物を二酸化炭素と水に分解し、排水を浄化するシステムです。

組換え遺伝子技術やゲノム解析技術は、細胞培養技術とともにバイオテクノロジーの新しい時代を切り開き、新しい医薬品や診断薬の開発、農薬の開発、害虫に強いトウモロコシなどの開発に大きく貢献してきました。
医薬品としては、大腸菌を利用したヒトインシュリン、インターフェロン、ヒト成長ホルモン、各種分析用、工業用酵素などが生産されています。
また、動物細胞を培養することで、ワクチン、抗体、血栓溶解剤などが商業生産されています。
近年、生分解性のプラスチック、バイオ燃料の生産に代表されるように、地球環境問題に対して、環境負荷の少ない工業プロセスとしてバイオプロセスが期待されています。

これらの技術の発展は、私たちの予想をはるかに超えるスピードで進展しており、最近では、2012年のノーベル生理学・医学賞を受賞された山中教授のご研究であるiPS細胞(人口多能性幹細胞)が、今後再生医療や創薬に大きく貢献すると期待されています。

製薬業界におけるバイオテクノロジ

特に製薬分野では、ゲノム解析技術や細胞培養技術を利用して、新規にバイオ医薬品がどんどん開発されています。米国市場では、これらのバイオテクノロジーを利用して開発されるバイオ医薬品の売り上げ比率が今後大きく拡大することが期待されています。
バイオ医薬品は、バイオプロセスを使用して製造されます。医薬製造におけるバイオプロセスは、大別するとバイオ医薬品の原体を製造するための上流プロセスと原体を製剤化するための下流プロセスから構成されています。
上流プロセスでは、基礎研究の段階ではシャーレや小容量のフラスコで培養されますが、製造段階では、大規模な培養タンクで培養されます。この大規模培養では、培養を高度な無菌環境で行うための滅菌装置、製造を効率的に行うための各種モニターや制御装置が培養槽周辺に設置されています。
下流プロセスでは、培養槽で生産された医薬品原体を分離、精製し、製剤化する工程が続きます。

バイオプロセスは工業生産プロセスで例えると、石油化学プラントに相当します。近代的な石油化学プラントでは、コンピュータが各プロセスの状態を常に監視し、それらの情報をもとに、常に目標値に制御するように設計されています。
バイオプロセスにおける制御技術は、石油精製プロセス等と比較して大規模培養の歴史が浅く、今後見込まれるプロセスの規模拡大に必要なプロセス制御は、現在も精力的に検討されています。近年、FDA(米国食品医薬品庁)では、これらのプロセスをPAT(医薬製造プロセス分析技術)によって品質の向上を図ろうとする規制が行われています。

医薬品開発の迅速化、無菌性の向上、設備投資の低減を目的に、これらの動物細胞の培養プロセスでは、最近ではステンレス製タンクに替わりプラスチックバックを用いた培養システムが提案されて、特に米国を中心に広がりつつあります。
日本でも同様のシステムが普及しつつあります。