
動物細胞培養
インライン菌体濃度モニタを使用した流加動物細胞培養での細胞増殖率の精密な予測
動物細胞培養では、細胞集団の実際の増殖率を正確に予測することが、運転の成功とバッチからの収量を決定する上で重要なパラメータとなります。増殖が弱く、充分安定していない早期運転段階で、増殖率を知ることはきわめて重要です。つまり、早期段階の増殖率は、特定の細胞培養運転に投入する時間やリソースを決定するあらゆる意思決定において大変重要な情報になります。不具合のある運転を早期に終了すれば、要員やリアクタの運転時間を節約でき、また運転の早期回復が可能となり、生産の全体的な経済性も改善します。
従来、増殖率の予測は、オフラインラボ式の細胞個数を計測する方法が使われています。しかし残念ながら、ラボの細胞個数測定法は、特に細胞濃度が低い場合は精度が低く、オフライン測定に特有の遅延があるため、従来のオフラインラボ方式を使用した、増殖率の早期段階での予測は、大変難しく信頼性の低いものなっています。
動物細胞培養では、最適なタイミングで充分な栄養素添加(グルコースなど)ができるかどうかが、細胞の増殖や生産物の収率を決定します。したがって、バイオリアクタの栄養素添加制御は、動物細胞を培養する環境を最適化することが大変重要です。栄養素の添加が不適切だと、収率が低くなることもあり、また、生産に失敗することすらあります。例えば、バイオリアクタにグルコースを過剰に添加すると、細胞の代謝活性が増大し、結果として乳酸過剰となり、その結果、最適な細胞濃度を得られなくなってしまいます。
一方、最適な設定点で消費されるグルコース量と生産される乳酸量との化学量論的比率を一定に保って供給されるとすると、細胞の増殖工程は非常に効率的になり、全ての栄養素が細胞自体に転換され、収量が最大になります。したがって、細胞濃度と同様に細胞増殖率を知ることは、最適な栄養供給方法を開発するために非常に重要です。
従来、バイオリアクタに供給する栄養素は、
- 前の増殖運転から得たデータ
- 酸素吸収速度予測
- オフライン細胞濃度測定
を含む入力パラメータのモデルに基づいていました。
動物細胞培養で重要なパラメータのひとつは、生きている細胞の濃度および生存率です。細胞濃度が低く栄養素が豊富な早期段階では、細胞のほとんどが生きており、生存率は高く、同時にほぼ一定です。しかし培養が最終段階に近づくにつれ、アポトーシスが起こり始め、細胞の大半が死に始めます。運転の完了に近い時期の生存率を知ることは、収穫タイミングの最適化と収率の最大化に重要なポイントです。
細胞生存率測定は、以前から様々なオフラインラボ細胞測定方法を使用して行われてきました。オフライン光学濃度測定と同様に、オフライン細胞測定方法には時間遅延がつきもので、細胞収穫タイミングの最適化が困難です。従ってここ数年は、リアルタイムのインライン細胞生存率測定センサの開発に力が注がれてきました。しかしその努力も大体は失敗に終わっており、現在市販されているインライン装置は、信頼性が低く、操作が困難であり、また極めて高価(測定点当り200万円以上するものも多い)であるというのが現状です。手ごろなリアルタイムのインライン細胞生存率測定センサの開発は、Finesse社を含む数社で継続して行われていますが、完全に実現するには少なくとも数年はかかると予測されています。
細胞生存率は、エンドポイントの検知と収穫タイミングの決定に関して、非常に重要なパラメータです。事実、培養の初期段階においては、栄養素添加の制御・増殖率・環境状態が全体の運転結果を決定します。この段階ではほとんどの細胞が生きているので、エンドユーザに提供される細胞濃度と生存細胞濃度の測定結果は同じものになります。
以上のように動物細胞プロセスでは、リアルタイムの測定の重要性、また制御のために従来のパラメータだけではなく、増殖率の予測なども重要なパラメータです。
