血球計数装置の測定原理

血球計数測定装置の測定原理を紹介します。堀場製作所の血球計数装置は、電気抵抗法と光学測定法をの二つの測定原理を組合わせて測定をする事で、正確かつ再現性の良いデータが得られます。

●電気抵抗法 (Impedance法)

電気抵抗法では、血球がアパーチャ(Aperture:細孔)を通過する際に発生する
パルス信号(電極間の抵抗変化)の数および高さを捉えることで、血球数と血球容積を測定します。

測定部は、アパーチャを隔てて両側に電極をもつ2つの容器が密着した構造をしており、
電極間およびアパーチャ中では一定の直流電流が流れています。(図1)

測定を行う場合は、血液を電解質溶液にて希釈した血球浮遊液を片側の容器に加えて、
もう一方の容器から血球浮遊液を吸引します。
このとき、脂質二重層を細胞膜にもつ不良導体(電気を通しにくい物体)である血球がアパーチャ中を通過すると、
電極間で抵抗変化が生じることで電圧のパルス信号が発生します。
このパルス信号の数をカウントすることで白血球や赤血球、血小板などの血球数を計測します。
また、パルス信号の高さは血球容積と比例しているため、パルス信号の高さからは血球容積の測定が可能です。(図2)

●粒度分布曲線

自動血球計数装置では電気抵抗法によって得られたパルス信号の情報から、横軸に血球容積、縦軸に相対度数の
分布曲線に変換したヒストグラムを粒度分布曲線として表示しています。(図3)
粒度分布曲線は、血球容積の異常(大小不同、破砕赤血球、巨大・大型血小板、血小板凝集)を発見するための
指標として利用できます。

文献:
1)巽 典之ほか:自動血球計数の基礎知識, 厚生社,1991
2)金井 正光ほか:臨床検査法提要 改訂第33版, 金原出版株式会社, 2010
3)日本検査血液学会:スタンダード検査血液学 第4版, 医歯薬出版株式会社, 2021

●DHSS(Double Hydrodynamic Sequential System)

DHSS(Double Hydrodynamic Sequential System) は、2層のシースフロー構造*1によって血球を正確に測定部の
中心を通過させるためのHORIBA独自の技術です。フローセル(図1-1, 1-2)と呼ばれる測定ユニットでは、DHSSを
使用して電気抵抗法および光学的測定法*2の2つの測定原理を組み合わせて測定を行います。

*1:シースフロー構造…サンプルライン(血球浮遊液)の流れを絞り、鞘(Sheath:シース)状に周囲を別の流れで包むことで、中心部のサンプルラインの流れを層流に保ち、サンプルが測定部に個々に通過するようにしたもの。
*2:光学的測定法…ランプ光源やレーザー光源を細く絞り込んだ光軸中に対して、直行するように血球を通過させた際の光を分析する測定法。

●フローセル内部のサンプルの流れ

  1. サンプル(血球浮遊液)は、サンプルライン()から送り出され、第1シース()によって血球を整列させた後、アパーチャ(➀)を通過します。
    この際、電気抵抗法によって通過する血球の数および容積情報を測定します。
  2. サンプルがアパーチャを通過した後、第2シース()によって再び血球を整列させ、血球は光軸(② or ③)を通過します。
    光学的測定法では通過する血球の細胞内部の複雑さ(②:光透過)または細胞内RNA含有量(③:蛍光強度)の情報を測定します。

●白血球分類 (LMNEマトリックス)

白血球分類の二次元グラフ(図2)は、DHSSから得られた以下の2種類の情報から作成されます。
●横軸:電気抵抗法 ➡ アパーチャを通過する血球の数および容積情報
●縦軸:光透過法 ➡ 光軸を通過する血球の細胞内部の複雑さ情報

※光源からの光は光軸を通過する血球の細胞内の構造による散乱あるいは細胞の内容物による吸収の影響を受けるため、検出器で受光する信号は血球細胞内部の複雑さ情報を反映します。

グラフ上では容積が大きい細胞は右方に、細胞内部が複雑な細胞は上方に描画されます。
白血球は、その形態の差異によりリンパ球(Lymphocyte)、単球(Monocyte)、好中球(Neutrophil)、好酸球(Eosinophil)の細胞分布に分けられます。
HORIBAでは、この白血球分類の二次元グラフを4種類の細胞の頭文字をとって「LMNEマトリックス」と呼んでいます。
LMNEマトリックスでは、各細胞分布ごとに閾値で区切られており、各細胞の増減および細胞形態の変化を、細胞分布の広がりや位置(図3, 4)によって確認することができます。

文献:
1)金井 正光ほか:臨床検査法提要 改訂第33版, 金原出版株式会社, 2010

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