「愛・地球博」の実験プロジェクトにCO2測定で参加

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当社は、「愛・地球博」(2005年日本国際博覧会:愛知万博)で実施される環境計測システム「万博アメダス」に二酸化炭素(CO2)測定を通して参加します。
温室効果ガス削減などを定めた京都議定書の発効にあたり、京都に本社を置く分析・計測機器メーカーとして、当初から万博協会に環境分析、特に地球温暖化の原因とされるCO2の測定協力を提案し、今回のプロジェクトが実現しました。
「万博アメダス」は、万博協会が実施する環境計測システムで、愛知万博会場内の気温・湿度・CO2等の環境情報を博覧会ホームページで公開し、会場内の自然環境や環境対策の効果を伝えるシステムです。約20箇所の計測ポイントのうち、5箇所の計測タワーに当社のCO2測定装置が搭載され、会場内のCO2濃度変化をリアルタイムに計測します。
「自然の叡智」をテーマにした万博にCO2測定を通して参加することで、自然との共生や持続的な発展ができる未来を探求していきます。

=また、名古屋商工会議所が「愛・地球博」に出展する「モノづくりランド シンフォニア」の展示企画「21世紀のウォードの箱プロジェクト」にもCO2測定を通して参加します。当社のCO2測定装置によるアラスカの植物の呼吸の計測を通して、光合成メカニズムや光合成電池の共同研究を行います。=

<万博参加の背景>
当社は分析・計測機器の総合メーカーとして、これまで多くの国際的な環境イベントに参加してきた実績があります。1992年にブラジルで開催された「第1回地球温暖化防止会議(COP1)」の際には、併設の国際環境技術博覧会に参加、日本の計測器メーカーでは唯一の出展企業となりました。また、1997年に京都で開催された「第3回地球温暖化防止会議(COP3)」の際には、世界の環境問題の研究者によるシンポジウムを独自に開催し、環境に取り組む姿勢が内外から注目を集めました。

「愛・地球博」は、京都議定書が発効される本年、環境を大きなテーマに開催される万博であり、京都に本社を置く分析・計測機器メーカーとして、環境分析技術を生かした実験プロジェクトに参加することは、科学技術を通して地球環境の保全に貢献する絶好の機会と考えます。
また、今回の万博会場である愛知県は、自動車をはじめセラミックス産業などの主要顧客が集中する重要地域であり、1971年に当社初のサービス拠点、1988年には営業拠点を開設。以来、中部圏を重要エリアと位置づけており、地域に根ざした活動をしています。当社の名古屋拠点が万博協会や名古屋商工会議所に声をかけたことがきっかけで、今回のプロジェクト参加が実現しました。

<各プロジェクトの紹介>
「万博アメダス」
主催者:(財)2005年日本国際博覧会協会(万博協会)環境グループ
協力:九州大学、工学院大学、国立環境研究所、(株)堀場製作所
実験期間:愛知万博の開催期間
/2005年3月25日(金)〜2005年9月25日(日)(185日間)
実験会場:愛・地球博 長久手会場内約20箇所予定
内容:
会場内の気温・湿度・風向風速・日射量・雨量・CO2濃度等を連続でモニタリング、計測結果を博覧会ホームページで公開します。自然環境に徹底的に配慮して作られた会場そのものがもつ環境特性、森林等の自然環境の機能や、緑化した壁や透水舗装等の環境対策の効果を実測し、わかりやすく伝えます。
今回の万博アメダスは、九州大学の高口洋人特任助教授らのチームにより初めて万博協会に提案されたものであり、その後同チームによる学術的・技術的指導に基づき具体化されたものです。また、CO2計測には国立環境研究所 地球環境研究センターの井上元総括研究管理官も参加し、当社と共同で会場内の環境分析を行います。

「21世紀のウォードの箱プロジェクト」
参加企業:岡谷鋼機(株)(本社・名古屋市)、大同メタル工業(株)(本社・名古屋市)、ホシザキ電機(株)(本社・愛知県豊明市)、日本通運(株)(本社・東京都港区)、(株)堀場製作所、以上5社(順不同)
展示期間:2005年3月25日(金)〜4月24日(日)(31日間)
実験会場:愛・地球博 長久手会場「モリゾー・キッコロメッセ」内
名古屋商工会議所出展プログラム
「モノづくりランド シンフォニア」内
「モノづくりランド シンフォニア」の概要:
主催/名古屋商工会議所、
期間/2005年3月25日(金)〜4月24日(日)(31日間)
キラリと光る技術を持った中部地域を中心とする中小企業70社が、協働出展するプログラム。「自然に学ぶモノづくり」をコンセプトに、先端技術・伝統技能を活かした「花」と「おもちゃ」で参加体験型の夢の世界を表現する。「21世紀のウォードの箱プロジェクト」は、当プログラムの「技術の花園ゾーン」内で行う。

内容:
北極圏の寒く弱い光の下でも、冷害もなくすくすく生きる花や植物の光合成メカニズムを解き明かすことで、光合成の起源から現在の状態、さらに光合成電池の開発など未来のエネルギーの可能性を探ります。北緯72度のアラスカ最北端で実際に研究を行い、植物(コケ、草本類)を採取した後、北極圏の気候を再現した特殊なハイテクコンテナで陸、海路約6千キロを、生かしたまま密閉状態で日本まで運びました。本邦初公開の北極圏の可憐な花や植物約20種を、研究成果やハイテクコンテナと一緒に、現地の環境を再現しつつわかりやすく展示して、未来のエネルギーや産業応用の可能性を提言します。
ウォードの箱とは、19世紀英国の医師・N.Bウォードがお茶やゴムの木を生きたまま運ぶために開発した木箱です。今回のプロジェクトでは未来の宇宙旅行にもつながるような「21世紀のウォードの箱」を最新の科学技術を駆使して再現しました。
高知県立牧野植物園の小山鐵夫園長を実行委員長、光合成の生物物理学を専門とする、名古屋大学の伊藤繁教授をプロジェクトリーダーとして、企業5社が資金や技術協力を行っています。ホシザキ電機がハイテクコンテナと冷蔵展示ケースを製作、大同メタル工業は電源の燃料電池、日本通運は生かしたままの特殊輸送、岡谷鋼機は全体のコーディネートを担当しました。当社は、現地野外での植物の光合成、輸送中のモニタリング、大きく異なる日本の環境への適応など、植物の呼吸と光合成をリアルタイムで確認するためにCO2測定を行います。

 

参考資料

<各先生のコメント>

  • 九州大学大学院人間環境学研究院
    高口 洋人(たかぐち ひろと)特任助教授
    (「万博アメダス」プロジェクトリーダー)
    「21世紀は一人ひとりが地球環境を意識して、自らを律しなければならない世紀です。その基本となるのが、自分たちの環境や生活の計測です。我々は、計測した結果を基に、限られた時間と資本を有効に使い、環境への負荷を減らさなければなりません。博覧会会場では、様々な環境対策技術が採用されています。その一つひとつの計測と検証を行い、広くインターネットを通じて公開することにより、環境への意識が高まればと考えています。また、このイベントが単なる博覧会会場の計測にとどまらず、広く自分たちの身の回りの計測へと広がっていくことを期待しています。」
  • 独立行政法人国立環境研究所 地球環境研究センター
    井上 元(いのうえ げん)総括研究管理官
    (「万博アメダス」で当社と共同でCO2を計測)
    「CO2は通常大気中には350〜400ppm存在していますが、植物の光合成の活動により夏・冬で大きく変化し、一日の間でも昼・夜の日照時間によってわずかに変化します。今回は、万博会場内でいったいどのように変化していくのかを調査します。」
  • 高知県立牧野植物園 小山 鐵夫(こやま てつお)園長
    (「21世紀のウォードの箱」実行委員会委員長)
    「このプロジェクトに期待する夢は、将来、宇宙コロニーなどの閉鎖された空間で、植物を育てる技術開発の基礎につながるところにあります。北極地方では、昼夜が半日毎の周期でなく、夏は白夜、冬は半年陽が昇らないという極端な環境であるため、そこに生息する植物たちは、私共の周囲の環境とは違った生理作用(特に光合成)を持ち合わせている筈です。こういう特殊な生育環境の下に植物を人工的に育て得るような植物の“活かし箱”としての「21世紀のウォードの箱」は、将来的に、密閉された宇宙空間で、食物連鎖の基礎的な植物を大量に育てることができるという夢を実現する事になるでしょう。」
  • 名古屋大学大学院 理学研究科 物質理学専攻(物理)
    伊藤 繁(いとう しげる)教授
    (「21世紀のウォードの箱」プロジェクトリーダー)
    「今回のプロジェクトでは北極圏現地での光合成の研究、植物の採取、生かしたままでの陸海路移送、生きた植物の展示を行います。光合成のもつ未来の可能性を探る研究、日本初公開となる植物の採取、極地から日本へ生きたまま植物を持ち帰るシステムの開発という、どれも新しい3つの試みのコラボレーションが行われました。さらに協賛企業の協力で、北極圏に近い環境を再現し、その中に「小さくてもとても元気な植物たち」を生きたまま展示します。見た目は小さな極地の植物ですが、どんな寒さにも、オゾン破壊で強まる紫外線にもまけずに生きています。小さくかわいい花やコケの中に、人類が宇宙空間など厳しい環境で活動するための知恵やエネルギーが秘められています。その無限の可能性を研究し、万博の場で分かりやすく展示紹介することで、未来への提言になればと考えます。」

    <ご参考:「愛・地球博」開催概要>
    正式名称:2005年日本国際博覧会
    (略称:愛知万博、愛称:愛・地球博)
    テーマ:「自然の叡智(Nature’s Wisdom)」
    開催期間 2005年3月25日〜2005年9月25日(185日間)
    会 場:名古屋東部丘陵(長久手町・豊田市、瀬戸市)
    目標入場者数:1500万人
    公式参加国等:121ヶ国、5国際機関
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