ぶんせきコラム

温度測定、もっと正確に


触れずにモノの温度がわかる、非接触・放射温度計。
衛生が重視される食品分野や、 動いている機械の保守管理などに、ひろく用いられています。今回は、非接触・放射 温度計を使ってより正確な温度測定を行うための、ちょっと高度な使い方です。

放射温度計に「放射率設定」という機能があるのをご存知ですか?

すべてのモノは、温度によっておのおの赤外線を放射していて、その強さから放射温度計は温度を測るしくみになっています。ところが、私たちの身のまわりにはいろい ろな材質のモノがあり、たとえ同じ温度でも、放射される赤外線の強さは必ずしも同じではありません。そこで放射温度計では、赤外線を出す割合「放射率」を、測りた いモノにピッタリあわせることで、正確な温度測定ができるようになっているのです。

それでは、どんなときに「放射率」を設定すればよいのでしょう?

水分を多く含む食品や塗装面の「放射率」は、おおよそ0.92〜0.98ぐらいと比較的似かよっています。そのため、非常にシビアな温度管理をしなければならない場合を のぞいて、「放射率」を初期設定値(※1)からとくに変えなくても、実際の温度に近い測定ができる場合があります。

しかし、塗装していない金属面など、「放射率」が初期設定値と大きく異なるモノの 場合、「放射率」を正しく設定しないと正確に温度が測定できません。「放射率」があっていないとき、たとえば設定が5%違っていたとすると、50℃のモノを測った とき1℃程度の誤差が生じます。

初めて測定するモノのとき、「放射率」を調べるには3つの方法があります。

1つめは文献で調べる方法。

2つめは、放射温度計の測定値が、接触式の温度計で測った温度と等しくなるよう、 「放射率」を設定する方法。

そして3つめは、あらかじめ「放射率」のわかっている「黒体スプレー」や「黒体 テープ」を塗布して最初にモノの温度を測っておき、そのあと塗布していない部分で温度が等しくなるように「放射率」を設定する方法です。

こうやって、いちど「放射率」を求めておけば、あとは同じ値を設定することで正確な温度測定ができます。

「放射率」についての詳しい情報は、HORIBA ONLINE「放射温度計プラザ」から「技術フォーラム」をご覧ください。
「技術フォーラム」では、代表的なモノの放射率、放射率の設定方法や、放射率が違っていたときの誤差について詳しく 説明しています[P6]。
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放射温度計プラザ


また、放射温度計の操作方法については付属の取扱説明書をご覧ください。

※1「放射率の初期設定値」: 平均的な数値として工場出荷時には、放射率は0.95または1.00に設定されています。機種によって異なることがありますので、付属の取扱説明書でご確認ください。