ぶんせきコラム

くるまの燃費って
どう測るの?


いまの時代、好むと好まざるにかかわらず、自動車はふだんの生活に強く結びついています。自動車が好きで、どんな車種を買おうか、カタログを集めて見くらべてみたことがあるという人も、多いのではないでしょうか。そんなとき、「燃費」はもちろん重要なチェック項目のひとつですよね。

そこで、このカタログにのっている「燃費」、どうやって測っているか知ってますか?

「燃費」とは正しくは「燃料消費率」のことで、たとえば燃料1リットルで自動車が何km走れるかという数字です。実際に自動車に乗っているときの燃費は、給油のときに走行距離メータの数字と給油量から計算することができます。

でも、こうやって求めた燃費は給油のたびに違います。これは前回給油したときから今まで、走ってきた道が登りだったり下りだったり、あるいは市街地だったり高速道路だったりと、走行条件がいろいろ変わるのが原因です。これではカタログにのせる数字としては 使えません。

燃費をカタログにのせて比べられるようにするには、まず走行条件を同じにする必要があります。といっても、専用のテストコースがあるわけではありません。じつは、床に大きなローラーを埋め込んだ、いわば自動車専用の「ルームランナー」があるのです。

自動車はローラーの上にタイヤをのせて、試験室内で決められたパターンを「走り」ます。

自動車のカタログに「10モード」「10・15モード」という文字を見たことがあると思いますが、これは路上走行を再現するための運転パターンにつけられた名前です。

たとえば「10モード」では、アイドリング・加速・定速・減速といった10種類の走行パターンを、それぞれ決められた時間で行います。また「10・15モード」は、「10モード」走行を行ったあと連続してさらに15種類の走行パターンが追加されていて、これは高速走行を考慮したパターンになっています。

この運転パターンのことは「テストモード」と呼ばれています。日 本では「10モード」「10・15モード」が法令で定めれらていますが、もちろん諸外国にも同じような目的のテストモードがあります。たとえば、アメリカでは「FTP75テストモード(LA-4)」、ヨーロッパでは「ECモード」とよばれるテストモードがあります。

さて、これらのテストモードを確実に運転するのに、欠かせないのが専門のドライバー。じつはこのドライバーの腕ひとつで、燃費も微妙に変わってしまうのだとか。

最近では人間に混じって、運転席でアクセルやブレーキを操作する「自動運転ロボット」というのも活躍しています。

燃費を測るには、もうひとつ大切なことがあります。走る距離の方はテストモードで決まるのですが、そのときどれだけ燃料が減ったかも測らなくてはなりません。でも、タンクの中の燃料を直接測るのはけっこうやっかいです。

そこでかわりに使われるのが、排気管から出た二酸化炭素(CO2)を測って燃料の消費を算出する方法。

燃料となるガソリンや軽油は、 ほとんど炭素(C)と水素(H)からできていて、エンジンで燃えると二酸化炭素と水(H2O)になります。つまり、エンジンから出てきた二酸化炭素の量がわかれば、どれだけの燃料を使ったかが計算できるというわけです。

カタログにのっている燃費は、じつはこのように排ガスを分析して求められています。このとき、排ガス中の一酸化炭素(CO)や窒素酸化物(NOx)などの大気汚染の原因となる物質の濃度も測定されます。

つまり、テストモードは燃費を把握するためであると同時に、世界各国の排ガス規制のためのものでもあるのです。

「環境に負担をかけない」という発想があたりまえになった今日、 自動車の燃費に関心がいくのは自然の流れです。テストモードを使った燃費や大気汚染物質の計測は大がかりなものですが、最近では自動車に積むことのできるような、小さくて性能のよい分析計も開発されるようになりました。

スピードメータの横に「燃費メータ」と「排ガスメータ」がついた自動車がふつうになるのも、そう遠い日ではないかもしれませんね。