ぶんせきコラム

もっとやさしい導電率の話


「導電率(どうでんりつ)」って知ってますか? 日常ではなかなか聞かない言葉ですよね。でも、私たちの生活に深くかかわっているんです。では、導伝率ってなんなのでしょうか?


導電率とは電気の流れやすさ(*1)の指標です。

その単位の基本は 「S/m(ジーメンス・パー・メートル)」で、大きさによって1000分の1の「mS/m(ミリジーメンス…)」や、100万 分の1の「μS/m(マイクロジーメンス…)」が使われれること もあります。Sは電気抵抗をあらわす「Ω(オーム)」と、逆数の関係(S=1/Ω)になっています。

さて、電気が通るものでまず頭に浮かぶものは「電線」。電線の原料となる金属の中には自由電子というものがあって、この電子が伝導体となりバケツリレーの要領で電気を運んでいます。

いっぽう液体の中を電気が流れる場合は、「イオン」が伝導体となります。

イオンは、ある物質を水などの液体に溶かしたときに、プラスの性質をもつものと、マイナスの性質をもつものとに分離したものです。ちなみに、このような性質をもつ物質を「電解質」と呼んでいます。イオンは、ギリシャ語の語源に「放浪者」という意味をもつとおり、電気を運ぶために液体中で動きまわります。

ひとつ例をあげてみましょう。「食塩水」では、食塩(NaCl)が水に溶けて電解し、ナトリウムイオン(Na+)と塩化物イオン(Cl-)とにわかれています。そして、それぞれのイオンは電気を運ぶ性質をもっています。このとき、溶液中に含まれるイオンの量が多ければ多いほど、電気は多く運ばれる、つまり導電率が大きくなるということになります。このことから、導電率を測って塩分の濃度を知 るということができるといえます。市販されている簡易型の塩分計などは、この原理をもちいています。

ところで、砂糖水ではどうでしょうか? 残念ながら、砂糖の場合は導電率で濃度を求めることができません。じつは、砂糖は水に溶けてもイオンにはならない、つまり電解質ではないのです。

電解質の種類は食塩以外にも多くあり、同じように導電率からその量を推定することができます。

この方法はイオンを特定して測定しているわけではないので、多種のイオンが混在すると元のイオン濃度を求めることが難しくなるという弱点があります。しかし、イオンを特定できるイオン選択電極法やイオンクロマトグラフィ法などに比べて、測定手順が簡単であることからしばしば採用される分析手法なのです。

また、不純物のきわめて少ない「純水」を作る工程や、河川の汚染を調べるといった用途でもよく使われます。これは、水に溶け込んでいる汚染物質の種類は特定できなくても、その量が多ければ導電率も高くなるという性質から、汚染度を総合的に測ることができる からです。

その他にも、酸性雨を測ったり、美味しい水を見つけるめやすにしたり、鑑賞魚の水質管理、農業や環境測定での土壌管理など、導電率はいろいろなところで測られています。みなさんのまわりでも、意外と身近なところで役立てられているかもしれませんね。

*1: 正確には「電流の流れやすさ」ですが、ここではわかりやすくするため「電気」という言葉をつかっています。